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学校日和2  作者: めろん
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第38回 理不尽日和

「弟子にしてくださいだぁ?」


 それは、王都市・シャイアにドラゴン、イヴとドラゴンマスター、フランがやって来た日。

国王、ルゥとの戦いが、茶髪お兄さん、ソラによって強制的に終わらせられた後に現れたミントママ、ジャンヌに、メルヘン信者、フランは平伏していた。


「嫌よ。めんどくせえ」


そんなフランのお願いを、今にも鼻の穴に人さし指を入れそうなほど適当に断るジャンヌ。


「ええ!? そ、そこをなんとかっ!」


ショックを受けたフランが再び額を地面につけると、


「じゃあ、いいわよ」


ジャンヌはコロッと百八十度意見を変えた。


「考え変わるの早っ?!」


「黒焦げアフロボンバーは黙ってろい」


ジャンヌは黒焦げアフロボンバーになっているミントパパ、シャーンの突っ込みをさらりと流すと、


「てなわけで、もう足を上げんさい」


と、土下座しているフランに言った。


「いや、そこは足じゃなくて頭だろ?!」


「! はい!」


「って、この子ホントに上げちゃったあ?!」


シャーンの突っ込みも虚しく、フランが言われた通り足を上げると、


『ギャオオオオオオ!!』


『ガオオオオオオオ!!』


『グオオオオオオオオオオ……ゴッホゴッホ』


南西から三体のドラゴンが飛んできた。


「「すっげーーー!!」」


それを見て、目をキラッキラに輝かせるソラとルゥ。


「! ロラン、シンシア、ディアモール!」


聞き覚えのあるその鳴き声に、フランが振り向くと、


バサバサ


ドスン!


三体のドラゴンは、イヴの隣に着地した。


タッ


飛んできたドラゴンのうちの一体、シンシアから、激しくウエーブがかかったピンク色の髪の少女が飛び降りて着地した。


「まろろ♪ ニーハオ、フラン! こんな所で何倒立してるまろ?」


水玉模様のトンガリ帽子を被り、顔は真っ白で、左目の周りに大きなオレンジ色の星がペイントしてあり、鼻の先に赤い球体をつけているという、道化師のような少女が挨拶すると、


「! マロ様!」


倒立しているフランは、驚いたように彼女の名前を口にした。


「メルヘンの女神様、ジャンヌ様に弟子入りのお願いをしていました」


その後、きちんと質問に答えるフラン。


「まろ! 面白そうまろ! まろも弟子入りするまろ!」


すると、少女、マロは、大きな真紅の瞳をキラッキラに輝かせてジャンヌにそう言った。


「ええ!?」


「いいわよ」


「ええ!?」


「やったまろー!」


驚いているフランを無視してさらりとオッケーを出すジャンヌと、ぴょんぴょん跳ねて喜ぶマロ。

こうして、シャイアの前で倒立している人物が二人になった。


((うわあ……))


それを見て、げんなりするソラとルゥとシャーン。


「あんたらアホの子? 何倒立してんの?」


「「ええ!?」」


馬鹿を見るような目で言ってきたジャンヌにショックを受けるフランとマロ。


((理不尽……))


彼らを気の毒に思う三人。


「じゃ、早速修業開始よ。まずは、そうね……」


倒立をやめてちゃんと立った二人に、ジャンヌは腕組をしながら、


「溶けなさい?」


と、言った。


「「は、はい??」」


((いきなりレベルたけええ?!))


彼女の言葉に、目が点になるフランとマロと、心の中で突っ込みを入れるソラとルゥとシャーンであった。











「まろ……まろ……」


「はあ……はあ……」


 シャイア城の近くにある赤い屋根の家の庭で、マロとフランは地面にへたばっていた。


「まろ……難しいまろ……溶解魔法……まろ」


「はあ……ええ……はあ、ですが、メルヘンは溶けるものだとジャンヌ様が……はあ」


息を切らしながらも、二人はぐぐぐっと立ち上がり、再び溶解魔法の練習を始めた。


「アイ」


「アム」


「「メルヘン!!」」


これが練習時の掛け声。

正味な話、近付きたくない。


「ゲヘヘ♪ メクソうみゃー」


近所でそんな噂がたっているにも関わらず、その家の縁側で、ジャンヌはメロンクリームソーダ、略してメクソを美味しそうにいただいていた。


「こんにゃちはー、郵便にゃー」


「お?」


 すると、郵便屋さんの声がしたので、ジャンヌはメロンクリームソーダを置いてそちらに移動した。


「にゃっほー♪」


「おー、おひさ。毛玉」


「にゃー! だから毛玉じゃなくてアミュレリス=ヴァレンタイン、愛称はアミュにゃー!」


「じゃあ、こそドロ」


「すっごい不名誉なニックネーム?! アミュって言ってるにゃー!!」


ジャンヌに変なニックネームで呼ばた頭に猫耳が生えている郵便屋さん、アミュは、彼女に思い切り突っ込みを入れた。


「で、なんの用よ?」


「だから郵便にゃーって言ったにゃー?!」


「にゃーにゃーうるへえ」


「これは昔からの口癖にゃー!! だから、喋らせたそっちが悪いにゃー!!」


「ああ? こっちが悪いってのか猫テメェコノヤロー?」


「当たり前にゃー!!」


「ごめりんこ」


「分かればいいにゃ」


アミュはそう言ってジャンヌに責任転換しながら、彼女に郵便物を渡した。


「あら、偉いわね。はい、カツオ」


それを受け取ると、お手伝いをした子どもにお菓子をあげるようにアミュにカツオを差し出すジャンヌ。


「……バカにされてるとは思うけど、ありがたくいただくにゃ」


カツオに負けたアミュは、別れの挨拶をした後、複雑な表情で去っていった。


「何かしら?」


 アミュがカツオをくわえて去っていった後、


「アイ」


「アム」


「「メルヘン!!」」


「うるへえ黙れ」


「「ええ!?」」


煩い二人を黙らせてから、ジャンヌは封筒を開けた。


「……授業参観?」


中に入っていたのは、国立魔法学校からの、授業参観のお知らせの手紙。


「……ゲヘヘ♪」


それを見て、ジャンヌはゲヘヘと笑った後、


「何サボってんの? ちゃんと掛け声出しなさいよ」


と言った。


「「ええ!?」」


理不尽な彼女に、再びショックを受けるフランとマロであった。

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