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学校日和2  作者: めろん
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第37回 飛行日和

「あっはっはっ! 待て待てェ♪」


 太陽がさんさんと輝く青い空の下、箒に乗ったポトフは、


「あははははは、捕まえてごら〜ん♪」


箒に乗って前方を飛行しているミントを追い掛けていた。

一見、海辺か花畑で妙にスローに追い掛けっこをしているベタなワンシーンを思わせるが、


バビューーーーーーン!!


と、この二人は実際、物凄い速さで追い掛けっこをしていた。


「あっは……は……ちょ、ホントに待って……」


「あははははは、まだまだ飛ばすぜー!!」


バビューーーーーーン!!


バテ気味になっているポトフを置いて、飛ばし屋と化したミントは、更に加速した。


「やー、ミント凄いねー」


「うむ―…わ!?」


その後ろで、彼らと同じく箒に乗って宙に浮いている二人は、ココアとプリン。

ココアが目の上に手をかざしながら言うと、プリンは箒から落下した。


「って、落下したー!?」


ガンガン小さくなっていくミントから目を離したココアは、慌てて地に落ちたプリンの元に移動した。


「だ、大丈夫ー!?」


「……う……うむ……」


ココアが声をかけると、よろよろと起き上がったプリンは、


「ぶう……箒め」


何事もなかったのかのようにスイーッと目の前にやって来て静止した彼の箒を睨みつけた。


「ったく、何やってんだよ枕?」


そこへ、呆れたような表情のポトフがやって来た。


「ヒ―…」


そして、ポトフがプリンの傷口に右手をかざしたところ、


「ヒール」


ぷわ


プリンは自分で自分の傷を回復させた。


「……」


「……ふっ」


恥ずかしい。

非常に恥ずかしい。

そして、あからさまに鼻で笑いやがったその涼しげな美顔が憎たらしい。

ので、


「喧嘩売ってんのか売ってるよな上等だァァァ!!」


ドカアアアアアアアン!!


ポトフは自問自答した後、プリンに強烈な回し蹴りを見舞わした。


「っ!? い、いきなり何をするっ?!」


いつもと違って自問自答だった為か、まともにそれを喰らってしまったプリン。


「何されたかも分かんねェのかバーカバーカ!!」


「くっ……上等だあ!!」


ドカアアアアアアアン!!


そうして、いつものように喧嘩を始めた二人を見ていたココアは、


「あれー? いつもと台詞が逆だねー?」


とか、呑気な独り言を口にした。













「やー、箒は最高だね!」


 ウサギさん寮への廊下を歩きながら、ミントは晴れ晴れとした笑顔でそう言った。


「……箒は嫌いだ」


「あはは……」


「あっはっは! いやァ、まさかホントに実技が箒だったとはなァ」


彼の隣を歩きながら、何かぼそっと呟いたプリンと、苦笑いするココアと、明るく笑うポトフ。

ちなみに、プリンとポトフは例のごとくボロボロになっている。


「勿論、コーラも最高だけど♪」


「あはは、ミントって凄いんだねー? あんなに飛ばせるなんてー」


それを気にも止めずにコーラのフタを開けようとしたミントにココアがそう言うと、


「そ……そっかな……?」


無意識にフタから手を離したミントは、ゆっくりと彼女に顔を向けた。

彼は、褒めに弱かった。


「そだよー! 凄かったよー?」


「おう! あれなら実技は文句なしでミントが一番だぜェ♪」


「うむ。あれだけ速くても箒から落下しないなんて、ミント凄い」


そんな彼に、にこっと笑いながら言う三人。


「え、えへへ―…」


そう言われて、若干顔を赤くしながら嬉しそうにミントが照れ笑いすると、


「ところで、帽子はどうしたのー?」


と、小首を傾げながらココアが尋ねた。


「―…へ?」


その言葉に、パキッと固まったミントは、恐る恐る自分の頭に左手を持っていった。


「ふにゃあああああ?!」


そして叫んだ。


「にゃい!! 帽子が!! 帽子がにゃああい!!」


パニック状態に陥って猫口調になっているミントを、


「そ、そんなに慌てなくても―…」


「にゃんこみたいでカァワイ〜♪」


「にゃんにゃん」


「―…ミント、帽子なら他にもいっぱい持ってるでしょー?」


いらない発言をしたポトフとプリンを無視して、ココアが落ち着かせようと試みたところ、


「何言ってるのさ!? あの帽子は、チロルから貰ったヤツなんだよ?!」


と、髪の毛の赤と緑の分かれ目を両腕で隠しながらミントが言った。


「「! ミント……!」」


ミントのその言葉を聞いたココアは、


「ぴわわ! ミント殺されちゃう!」


「……なんかちょっと寂しい」


「なんだかんだ言ってもチロルのこと―…」


またもや余計なことを口にした二人を無視して、


「ヒトから貰ったものは大切にしなきゃでしょ?!」


「―…うん。いいことだけど、それは聞かなかったことにしとくねー?」


感動しかけの時に、ミントに素で一般論を口にされたので、何やら少しがっかりした。


「ああもう! 何処に落としたんだろう!?」


ミントはローブのポケットにコーラをしまうと、


「ごめん、先戻ってて! オレ、帽子探してくる!」


と言って、再び外へと走っていった。


「……よし。なくした帽子がチロルから貰ったヤツだからミントはあんなに慌てていた、と」


ミントの後ろ姿を見送りながら、ココアは自分の記憶を自分で書き換え、


「なんだかんだ言っても、ミントってチロルのこと好きなんだねー♪」


ということにした。


「ぼ、僕も行く!」


「俺も!!」


「あはは……ホントに仲良しだ―…」


「勿論、ココアちゃんもっV」


「―…ねー、って、私もー?!」


こうして、四人は仲良く帽子を探し始めたそうな。


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