表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学校日和2  作者: めろん
36/235

第36回 外出日和

「ふう、終わったねえ」


「うむ。終わったな」


「おお、残るは来週の実技だなァ」


 ぽかぽか陽気のお昼前。

三日間に渡る筆記試験が終わり、ミントとプリンとポトフは教室を出た。


「実技試験かあ……。今回は何やるんだろうね?」


「うむ。この学校は突拍子も無いことを突然言い出すからな」


「森からの脱出とかな。でも、一個前のは普通に無属性魔法のテストだったよなァ?」


ポトフの発言を聞き、ミントはハッとした。


「回復魔法のテストだったらどうしよう……?」


「あっはっはっ! それは絶対にねェよ」


青い顔をして呟いたミントに、ポトフは明るく笑ってそう言った。


「え?」


「……回復魔法は向き不向きの激しい魔法だからな」


小首を傾げたミントに、枕を抱え直しながら応えるプリン。


「そ。だから、回復魔法に向かない人のところには、回復魔法が得意な人が引き寄せられるらしいぜェ?」


そう言って、後ろからミントに抱きつくポトフと、


「それが二人いると、小競り合いが絶えなくなるらしい」


彼を枕でホームランするプリン。


「ってェな、何すんだ、枕ァ?!」


「枕で変態を殴った」


「わォ! 簡潔! って、ふざけんな、テメェ!?」


「事実を言ったまでだ。と言うか、ふざけているのは貴様の方だと思うがな?」


「上等だァ!!」


という具合いに、いつものようにドカンバコンと喧嘩を始めたポトフとプリンを見て、


「あはは……まんまキミらのことだね?」


思わず苦笑いするミント。


「向き不向きの激しい魔法かあ……」


あんな派手に爆発するんだから、自分は相当向いていないのだろうな、と、ミントは何かを諦めたような清々しい笑顔で、窓の外に目を向けた。


「あ」


 その時、箒に乗って飛行している生徒が丁度目に入った。


「そう言えば、オレの箒、空中分解しちゃったんだった」


ふと、自分の箒がお釈迦になっていたことを思い出したミントは、


「……今日買いに行こうかな?」


実技試験で使うことになったら大変だし、と思いながら、ぽつりと呟いた。


「僕も」


「俺も」


「「行く!」」


すると、喧嘩中だったのにどうやってそれを聞き取れたのか、プリンとポトフが食い付いてきた。

お互いの頬を引っ張りながら。


「……うん。じゃあまずその手を離そうね?」


「「はーい♪」」


彼らの聴力に驚きつつ、うっかり口に出してしまったことを若干後悔するミントであった。












「うは〜ァ! いつ来ても此処は人がいっぱいだなァ!!」


 王都市・シャイアの駅で蒸気機関車を降りたポトフは、辺りを見回しながらその感想を述べた。


「うむ。貴様はいつ来ても田舎者丸出しだな」


そんな彼を見て思ったことを、遠慮なくさらりと述べるプリン。


「丘に住んでるヤツに言われたくねェよ」


「森に住んでる奴に言われたくない」


バチバチと火花を散らし始めたポトフとプリンに、


「置いてくよー?」


ミントはスタスタと歩きながらそう言った。


「「ま、待って!!」」


どちらも都会に慣れていないので、二人は慌ててミントを追い掛けた。












「えーと、箒屋さんはっと……」


 ミントが歩きながら背伸びをしつつ、きょろきょろと辺りを見回していると、


「ミントミント! あそこにおっきいプリン屋さんがある!」


プリンが目を輝かせながら言った。


「んーそだねー」


それを適当に流すミント。


「ミント! あそこで新作眼帯が売ってるぞォ!?」


ポトフが目を輝かせながら言った。


「わーホントだー」


それも適当に流すミント。


「ミント!」


「ミント!」


それでも彼らは後ろから何度もミントを呼ぶので、


「ああもう煩いっ!!」


ミントは立ち止まって振り向いて二人を叱った。


「「! ご、ごめんなさい……」」


ので、二人はしょんぼりと下を向いて彼に謝った。


「……っ」


やりにくい。

非常にやりにくい。


「……箒買ってから行こうよ?」


ので、ミントは己の甘さを恨みながらそう言った。


「「! はーい♪」」


すると二人はぱあっと顔を明るくし、張り切って箒屋を探し始めた。


「よし、良い子」


己の父性愛を呪うミントであった。












「! リン、見て!」


「? 何用、ですか、ウララ?」


 洋服店で白いワンピースを見ていると、ウララに名前を呼ばれたので、リンはそれを元の場所に戻して彼女の元に移動した。


「ほら、あれ! ミントとプリンとポトフよね!?」


祝、ポトフ。

彼の名前をちゃんと覚えたウララが言うと、


「……そのよう、ですね」


店員と一緒ににいる彼らを見て、リンはこくりと頷いた。


「かっこいいわよね〜、あの二人♪」


「……ウララは面食い、なのですね」


うっとりしているウララを見て、無表情でそんなことを呟くリン。

その後、もう用はないと言うように、リンが先程のワンピースの所に戻ろうとした直後、


ぽわんっ


「「!?」」


店員がミントの肩を軽く叩くと、次の瞬間、彼は可愛らしい服を着てそこに立っていた。


「……すごい、です……」


着替えも魔法で出来てしまうのか、と驚くリンと、


「きゃー! フリフリでカワイー!!」


オレは男だああ的なことを叫んでいるミントを見て、エキサイトするウララ。


「……まあ、似合ってしまうものは仕方ない、です」


ええ!? そうだったんですか?! 的なことを店員に言われているミントを見ながらリンが言うと、


「あ、いたいた! リン、ウララ、こんな所で何してるの?」


もう五時だよ? と言いながら、アオイが後ろからやって来た。


「……」


「……」


「な、なあに?」


その声にバッと振り向いてじっと見つめてきたリンとウララに、アオイがビクッとしながら尋ねると、


「ねぇ、リン?」


「何、ですか、ウララ?」


「似合っちゃうものは?」


「仕方ない、です」


そう言いながら、じりじりとアオイに迫るリンとウララ。


「り、リン? ウララ?」


それに合わせるように、一歩ずつ後退りするアオイ。


「うふふ、これを着る、です、アオイ」


「ふふふ、こっちでもいいわよ、アオイ?」


「な、何言ってるの? それ、どっちも女の子の服だよ?」


やたらフリフリした可愛らしい女の子用の洋服を持って迫る二人の目を、後退りしながら覚まさせようと試みるアオイ。


ゴンッ


「!?」


が、彼はいつの間にか店の角に追い込まれてしまっていた。


「ふふふ、残念ね、アオイ?」


「うふふ、覚悟、です」


にやりと笑うウララとリンに、


「ぼ、僕は男だよお!!」


アオイが涙目で叫ぶと、


「死にたいようだな、貴様ら?」


「「!!」」


彼女たちの後ろから、恐ろしい殺気を含んだ低い声が聞こえてきた。


「ゆ……」


「ゆ……」


「ユウ!!」


ギギギと彼を振り向いた二人の間を走り抜け、ささっとユウの後ろに隠れるアオイ。

アオイが攻撃範囲からいなくなると、ブワッと高まるユウの魔力。


「お、落ち着く、です、ユウ……?」


「そ、そうよ? それに、此処はお店の中―…」


「《壮麗なる龍はすべてを呑み込む》+《暗雲の閃光は破滅をもたらす》!!」


ドパアアアアアアアン!!


ドガアアアアアアアン!!


リンとウララの説得も虚しく、彼女たちと洋服店の北側の隅っこは、ユウの最大魔法×2によって吹っ飛ばされてしまったとさ。

店員

「ちょ?! お客さ―…」


ユウ

「これで許せ」


ドサッ


店員

「またのご来店、お待ちしておりまぁす♪」


アオイ

「わあ、ユウってお金持ちなんだね(くすり」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ