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学校日和2  作者: めろん
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第34回 早朝日和

 夜が明けて、鳥の鳴き声が聞え出した頃、


「な……なんだよ、こんな時間に……?」


こんな早い時間に起こされたポトフは、真剣な面持ちでこちらを向いている彼に理由を尋ねた。


「……ご……」


すると、彼、プリンは少し躊躇うような仕草を見せた後、


「ごめんなさいっ!!」


バッと頭を下げて彼に謝罪した。


「……は?」


プリンからの突然の謝罪に驚くポトフ。


(なんか、フラれた気になるのは何故だろう……?)


場の雰囲気の問題ではないかと。

ポトフがそんなことを思っていると、プリンはバッと顔を上げ、


「ち、ちゃんと謝ったからなっ!」


恥ずかしそうにそう言った後、ズカズカと自分のベッドに帰って行き、バフッと布団を被った。


「……」


いや、ツンデレ気取られても……と、ぽかんと口を開け、只今の状況を理解しようと努めるポトフ。


「……ぐー」


ポトフが状況を飲み込めたのは、プリンが抑揚のないいびきを掻き始めた頃。

と言っても、プリンが眠りに落ちたスピードが速いだけなので、そんなに時間は経っていない。


「……枕が、俺に、謝ってきた……?」


不安定な声で、ゆっくりと言葉を紡いだポトフは、


「世界が滅びる!!」


顔面蒼白になってそう言った後、慌ててベッドに潜り込んだ。


「ふあ!? ポトフ?!」


ミントの。


「な、何オレのベッドに潜り込んでるのさ?!」


おかげで目が覚めてしまったミントは、上体を起こして彼に目覚めの突っ込みをかました。


「ミント!! 世界が!! 世界が滅びる!!」


ミントの突っ込みを綺麗に無視し、彼の肩を激しく前後させるポトフ。


「ちょ……待っ……な、何寝惚けたこと言ってんのさ?」


ポトフの腕を掴んで彼の動きを止めるミント。


「だだだって、枕が、枕が突然俺に謝ってきたんだぞォ?!」


まだ落ち着いていないようで、ポトフは真っ青な顔でそう言った。


「……へ? よかったじゃん?」


それを聞いて、ミントは、


「それでなんで世界が滅びるのさ?」


と言いながら、思い切り疑問符を浮かべた。


「はェ?! ……あ、……それは……えェと……」


ご尤もな質問をされ、ようやく我に返ったポトフ。


「……。ああ」


そんな彼を見て、ミントはふっと微笑み、


「そんなに嬉しいんだね」


と、言った。


「ふにゃなたあゆゥ?!」


再び壊れるポトフ。


「ふにゃ……?」


彼のリアクションに小首を傾げるミント。


「らひぬやまつきの!! むさねきょもわるよ?!」


「た……頼むからちゃんと喋ってよ? 分かんないから」


錯乱しているポトフに、ミントは苦笑いしながら言った。


「むゥ……生意気な……」


余裕げなミントを見て、ポトフは面白くなさそうに呟いた後、


「おりゃァ!」


「うわあ!?」


バフッ


ミントを冗談でベッドに押し倒した。


「……!」


「ちょっ、何すんのさ?」


が、


「……ミント……」


「って、近い近い近い近い近いですううううう?!」


うっかり本気になってしまった。


「あああ、あ、朝顔!!」


「ふがァ?!」


ので、ポトフは薔薇の鞭で縛り上げられ、天井に吊された。


「……む? 何事だ?」


『む〜?』


 大きな物音を聞き、目が覚めたプリンとむぅちゃんがむくりと起き上がると、


「……! ザ・ハングマン……!」


プリンは天井から吊されているポトフを見て目を見開いた。


「吊された男の正位置……物事の考え方が百八十度変わるゾ☆」


次いで、彼の隣に現れた死神が、抑揚のない声でそう言った。


「ぴわわ?!」


『む〜!』


突然隣に現れた死神に、驚いて思わずのけ反るプリンと、彼に挨拶するむぅちゃん。


「ちゃお」


むぅちゃんに挨拶を返すついでに、ミントとプリンとポトフの三人にも挨拶する死神。


「ん?」


その後、彼はむぅちゃんを見て、


「……お前、いつから植物になったんだ?」


と、真剣な表情で尋ねた。


『むぅ?』


耳を葉っぱテイストにペイントされたことに気が付いていないのか、からだ全体を傾けるむぅちゃん。


「み、ミント、一体何があったんだ……!?」


吊された男になって顔を青くしているポトフを指さしながらプリンがミントに尋ねると、


「そんなことより、昨日の大会の途中姿が見えなかったけど、何してたの、ワタル?」


ミントはさらりとそう言った。


((そ……"そんなことより"……))


軽く流されて、ショックを受けるプリンとポトフ。


「ん? ああ」


『む〜ぅ……』


そんな彼らをよそに、死神はむぅちゃんを指でぐりぐりしながら、


「医務室という所で遊んでた」


と答えた。


「? 医務室で?」


彼の答えに、疑問符を浮かべるミント。


「ん。痛いよーって痛がってる奴らにオレ様は死神だって自己紹介するとバタバタ気を失うからもう楽しくて楽しくて」


と言いながら、フッフッフッと楽しそうに笑う死神。


「「……」」


タチの悪い遊びに、言葉を失う三人。


「……さ、朝ごはんにしよっか、プリン」


「うむ。むぅちゃん」


『む〜』


暫しの沈黙を経て、帽子を被ったミントと、長い髪を一つに束ねてむぅちゃんを頭に乗せたプリンは、ごくごく自然に部屋から出ていった。


「え? ちょ、俺は?!」


「……フッフッフッ。また二人きりになれたな、ポッティー?」


「嬉しくねェェェェ!!」


「まあそう照れるな」


「照れてねェェェェ!!」


鎌子を右手に取って迫ってきた死神から、逆さ吊りにされて逃げられないポトフは、初めて迫られる側の気持ちが分かったとか。


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