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学校日和2  作者: めろん
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第31回 顔面蒼白日和

 日も暮れてきた頃。

クー先生は、会場がガランとしていることにふと気が付いた。


『おや? 会場に人がいませんね? カラスと一緒に帰っちゃったんですか?』


『……カラスと一緒ではありませんが、医務室に帰っていきましたよ』


『うはー、いいですね! これからみんなで枕投げ大会ですか?』


『そのくらい元気になるといいですね』


楽しそうな彼女に、淡々と応えるポリー先生。


『おっと、すみません。では始めますよセミファイナル!』


自分の仕事を思い出したクー先生は、準決勝に出場する選手の名を読み上げた。


『に〜し〜、ミント〜=ブライト〜』


相撲風に。


「……何故相撲風……」


小さく突っ込みながら、よっこいしょっとステージに上がるミント。


『ひが〜し〜、ココア〜=パウダ〜』


「って言うか、西と東じゃなくて、赤リンゴコーナーと紫リンゴコーナーって言ってなかったっけー?」


その反対側から、小首を傾げながら登壇するココア。


「はわわ……ミントとココアちゃんが……」


「……ふむ。どちらが勝つだろう?」


がらりとした観客席に、間に一つ空けてぽつりと座ったポトフとプリン。


((アナウンスが相撲風ってことは……))


ポトフの心配とプリンの疑問をよそに、ミントとココアは審判であるセル先生を見た。


「……」


「……」


「……やらんぞ」


彼らの期待のこもった目からその意味を読み取ったセル先生は、こほんと小さく咳払いしてそう言った。


「では、これより準決勝を始める」


ええー、とでも言いたげな二人を無視し、セル先生は試合開始の合図をした。


ぷー


「シャドウエッジ!」


「わ!」


しぱんっ!


 開始と同時に放たれた、ココアの初等闇魔法である影で出来た爪を、ミントはひらりとかわしてみせた。


「ふふっ♪ 行くよ、ミントー! アームアーム!」


ココアは強気に微笑むと、自分の右腕に杖を当てた。


ぽわんっ


『おおっと?! ココア選手の右腕がチェーンソーに!! ポリー先生、これはー!?』


『部分変身魔法、アームアームですね。よく出来てます』


実況するクー先生と、ココアの魔法に感心するポリー先生。


「いざ、尋常に勝負ー!」


ヴィーーーーーーーーーン


「……鞭相手にチェーンソーって辺りで尋常じゃないと思うんですが?」


薔薇の鞭を左手に持ったミントが、顔を引きつらせながら言うと、


「細かいことは、気にしちゃダメだよー!」


ココアは勢いよく地を蹴った。


「やあああああああ!!」


「いや、こっちの方がやあああああああ?!」


チェーンソーとなった右腕を振り下ろすココアと、素早く横に跳ぶミント。


ガガガガガガガガガッ!!


『おっとー! 標的を逃したチェーンソーがステージをガガガガーっとー!!』


『だから殺人は犯罪です』


ガガガガっと刻まれたステージを見て、顔を青くする先生方。


「あぁあ、ああ当たればどうなるか分かってますか、ココアさん!?」


当然、彼女たちよりも更に真っ青なミント。


「分かってるよー。さっきみたいに飛び散るんでしょー?」


ステージからゆっくりとチェーンソーを離したココアは、ミントを振り向くと、


「但し、コンクリートじゃなくて、血だけどねー?」


にっこりと素敵な笑顔を見せた。


「よ、よくご存知でらっしゃる……」


ビシバシと伝わってくる嫌な予感に、無意識のうちに一歩下がるミント。


「キャハハハハハハ!! 飛び散っちゃえーー!!」


「わあい、壊れたココア久しぶりいいいいいい!?」


嫌な予感、的中。

ミントは泣き叫びながら逃げ出した。


『おおっとー!? ココア選手が突然破壊主義者にー?!』


『飛び散ったコンクリ見てスイッチが入るとは、危険極まりないですね』


引き続き顔色が悪い先生たち。


「キャハハハハハハ!!」


「わあ!?」


ガガガガガガガガガガ!!


「キャハハハハハハ!!」


「うわ?!」


ズガガガガガガガガガ!!


「キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」


「ちょっとこの人どうにかしてよポトフううう!?」


襲いかかってくるチェーンソーを避けながら、必死に逃げ回るミント。


「どうにかしろと言っているぞ?」


「いやァ……無理だろ?」


ココアを指さして言うプリンと、苦笑いするポトフ。


「キャハハハハハハ!!」


チェーンソーを振り回しながら迫り来るココア。


「っああ、もう!!」


 ミントは、半ばヤケクソに意を決して足を止め、狂った彼女を振り返った。


「キャハハハハハハハ?」


『おっとー!? ミント選手、今度産まれてくる時は何に産まれてきたいですかー!?』


小首を傾げながらもミントに迫るココアと、縁起でもない質問をするクー先生。


「取り敢えず、足の長い父親と溶けない母親の間に産まれたいかなっ!!」


質問に答えながら、ミントはココアに向けて薔薇の鞭を走らせた。

にも関わらず、攻撃が可能な範囲まで来たココアは、彼に向かってチェーンソーを振り下ろした。


「絡み付け――朝顔!!」


ぐわんっ!!


「!? キャハ?!」


ミントが技の名前を叫ぶと同時に、薔薇の鞭は朝顔の(つる)ように見事彼女の体に絡み付いた。


『なんとー!! ミント選手、ココア選手の動きを封じましたー!!』


『せ、成功してよかったですね』


冷や汗ものの先生方。


「キャハ、キャハハハ!」


「ごめんね、ココアとポトフ」


鞭を切ろうともがくココアと、はわわ! って顔になったポトフに謝ってから、ミントは鞭を握っている手に魔力を込め―…


「あ、リングアウトさせればいいのか」


―…ようと思ったが、代わりに力を込めた。


「吹っ飛べええええ!!」


「キャハハハハハハ!?」


そしてミントは、ステージの外に向かって、ココアを思い切り投げ飛ばした。


ドカアアアアアアアン!!


「……パウダー、リングアウト。よって勝者、ブライト」


ココアがリングアウトすると、セル先生が勝者の名を口にした。


『決まったー!! ミント選手、決勝進出ー!!』


それを聞いて、クー先生は盛り上がり、


「ごめん、ココア!!」


「ココアちゃん!!」


ミントとポトフは慌ててココアに駆け寄っていった。


後日談。


プリン

「ミント、あそこで魔力を込めたらどうなっていたんだ?」


ミント

「え? ああ、鞭のそこらじゅうから十センチほどのトゲがビビュッと」


プリン

「……っ」


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