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学校日和2  作者: めろん
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第29回 初戦日和

「……ココアちゃん、大丈夫かなァ……」


「あはは、去年の学園祭優勝者に何言ってるのさ?」


 心配そうにステージを見つめるポトフにミントがそう言うと、拡声器からクー先生の声が流れ出した。


『では、記念すべき第一回戦を始めるよー!! まずは選手に入場してもらいましょー!!』


それを聞いて、賑わっていた会場が静まり返る。


『赤リンゴコーナー』


「赤コーナーでいいと思うんだけど?」


『ココア=パウダー!!』


観客席にいるミントの突っ込みが届く筈もなく、クー先生がそのまま続けると、ステージの右側からココアが登壇した。

同時に、わあっと沸き上がる会場。


「ココアちゃんカワイーっ!!」


「うん。ちょっと黙れ?」


騒ぎに便乗して何か叫んだポトフを爽やかに黙らせるミント。


『対して、紫リンゴコーナー』


「? なんで青じゃねェんだ?」


「紫リンゴって、明らかに毒リンゴだよね」


『チロル=チョコ!!』


ポトフとミントの突っ込みを華麗にスルーし、クー先生は、相手選手の名前を読み上げた。

再びわあっと声援があがる会場。


「って、チロル?!」


ステージの左側から登壇したチロルに驚くミント。


「……ふむ。いきなり去年の優勝者と準優勝者の戦いだな」


賑わっている周りに起こされたプリンは、眠そうに目を擦りながらそう言った。


『おおっと!? 初戦でいきなり去年の優勝を争った二人の対決ですね、ポリー先生!!』


『……なかなかのくじ運ですね』


 そんな先生方の声が流れると、


「……くじ運がいいですって? 何言ってるのってかんじぃ……」


ステージの中央まで歩を進めたチロルがわなわなと震えながら呟いた。


「? どしたのー、チロルー?」


そんな彼女と対峙して、小首を傾げるココア。


「……アタイは……アタイは……」


すると、チロルはダンッと片足で思い切りステージを踏みつけ、


「アタイはミントきゅんに薔薇の鞭でいたぶって欲しかったのに〜〜〜みた〜いな〜〜〜っ!!」


と、叫んだ。


「ぶはあ?!」


その直後、飲みかけていたコーラを思わず盛大に噴き出すミント。


「……」


「……」


に、会場じゅうの視線が集まった。


「……み……」


「……ミント……」


両サイドのプリンとポトフも、だいぶ引いてしまっている。


「っうわーん!! オレ、そんなことしないもんんん!!」


ので、ミントはコーラを床に叩き付け、泣きながら何処かに走り去っていってしまった。


「ん。やはりキャンディーはメロンだ」


そんな中、死神は平然とメロンキャンディーを舐めていた。


「……ゴホンッ。では、これより試合を開始する」


 静まり返った会場に、ステージの中央に立った、この試合の審判であるセル先生の声が響いた。


ぷー


「ライトニングアロー!!」


「イービルフィア!!」


何やら可愛らしい合図と共に、ほぼ同時に高等魔法を繰り出すチロルとココア。


ドカアアアアアアアン!!


バチバチとした雷の矢と、禍々しい闇の渦が衝突し、相殺された。


「……あんたねー? そーゆーことはこんなとこで、しかも、大声では言わないでしょ普通ー? ミント泣いちゃってたよー?」


先程の彼女の爆弾発言について、尤もな突っ込みを入れるココア。


「フンだ! ヒトの恋路を邪魔するアンタが悪いのよ!!」


が、聞く耳持たず。

チロルは杖を取り出し、それを勢いよくココアに向けた。


「ギロチン!!」


ボワンッ


「させないよー!!」


出現したギロチンに捕われる前に、後ろへ素早く跳ぶココア。


「アイアンメイデン!!」


ボワンッ


「!?」


するとチロルが叫び、ココアの両サイドに、無数のトゲがついた、半分ずつの人型の鋼鉄が現れた。


バコンッ!!


それが確認出来たと思ったら、それらは勢いよくくっついて、完全な人型になった。


「……チッ」


合わさったアイアンメイデンを見て、悔しそうな顔で舌打ちするチロル。


「あああ、あぶ、危ないでしょー!?」


それは、そのすぐ後ろに、顔を真っ青にしたココアがいたから。


『なっ……なな、なんて恐ろしい試合なのでしょうか!? チロル選手、ココア選手を殺す気だー!!』


『殺人は犯罪です』


ようやく我に返り、実況を始めるクー先生と、コメントするポリー先生。


「まだまだぁ!!」


ボワンッ


「きゃ?!」


チロルが再び杖を振ると、ココアは椅子に確りと固定された。


「こ、これは――?!」


「紫電の断罪!! サンドラルエクセキューションっ!!」


「――って、そういう意味で電気椅子ー?! カオスシールド!!」


こんな危機的状況でも、突っ込みを入れる余裕があるココア。


ドシャアアアアアアン!!


直後、紫色の雷と、暗黒の盾が激突した。


『おーっとー!! チロル選手の雷魔法と、ココア選手の闇魔法との激しい衝突ー!! はたしてこの勝負の行方はー?!』


眩しそうに目に手をかざしながら実況するクー先生。


ボシュウ……


『! 闇が、ココア選手が勝ちましたー!!』


「……ふふっ♪ 強い電気をありがと!」


雷が治まると、ココアは不敵に笑って、


「おまけつきで返してあげる!! ブラッディハザード!!」


次の闇魔法を唱えた。


「!?」


すると、紫色の雷を帯た暗黒の盾、カオスシールドが勢いよくチロルに襲いかかった。


ドカアアアアアアアン!!


チロルが闇に呑み込まれ、爆炎が巻き起こった。


『「……」』


爆炎が治まるまでの暫しの沈黙。

それを破ったのは、セル先生。


「チョコ、戦闘不能。よって勝者、パウダー」


静かな会場にセル先生の声が響き渡り、


『決まったー!! ココア選手の勝利ー!!』


クー先生が叫び、会場がわあっと盛り上がった。


「あ、あっはっはっ! 流石ココアちゃんだぜェ!」


「むぅ……ミント、次なのにまだ帰ってこない……」


賑わう観客席で、冷や汗を握っていたポトフと、次の試合に出場するのに、未だに帰ってきていないミントを心配するプリンであった。

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