第28回 開会式日和
ぱーんぱーんぱーんぱーん
青空に花火が打ち上げられ、生徒は外に集まった。
「学園祭か〜……滅べばいいのに」
朝っぱらからネガティブなミントをよそに、
「シロップは何味にしますか〜?」
「僕はプリン」
「俺は生肉」
「オレ様チョコレート」
無茶な注文をかき氷屋に迫るプリンとポトフと死神。
「かしこまりました〜」
かしこまっちゃった?!
かき氷屋は何やらクリーム色のシロップと、赤黒い不気味なシロップと、茶色いドロドロしたシロップをそれぞれにかけると、はい、と三人に手渡した。
「むむ! 冷たいプリンだ!」
「おォ! 冷たい生肉!」
「きんきん」
それを早速パクッといただいて、目を輝かせるプリンとポトフと、頭が痛くなった死神。
「元気だねぇ?」
そんな三人に、ミントがネガティブな顔を向けると、
「はい、あーん♪」
ポトフは彼の顎に手を当てて口を開けさせ、生肉かき氷を食べさせた。
「ふみゃあ!?」
口の中に広がった生臭い臭と血のような味に、思わず短い悲鳴をあげるミント。
「あっはっはっ! にゃんこみたいでカ〜ワイ〜♪」
そんなミントの頭を撫でながら笑うポトフ。
「あ、いたいたー! おはよーって、なんでワタルもいるのー?!」
そこへ、ココアが走ってやってきた。
「フッフッフッ。さあ?」
「ええー?! なんでいるのか分からないのー!?」
もったいぶったわりには首を傾げた死神に、ココアがええ、と驚くと、
『レディースアンドジェントルメーン! 今年もやっちゃいますよ学園祭!!』
という声がグランドに響いた。
「! 始まったねー!」
「うむ。始まったな」
それを聞いて、声の主の方を向く五人。
『今年も毎年恒例、誰も意見を言ってくれなかったね! でも泣かないよ! もう大人だから!』
声の主、クー先生はそう言うと、
『と言うわけで、今回はトーナメントバトルをしようと思うのだが、おのおのがた、覚悟はよいか?』
急にキャラを変え始めた。
「? トーナメントバトルー?」
ココアが疑問符を浮かべると、
『うん! 詰まり勝ち抜き戦! 勝って勝って勝ちまくって、賞金をゲットしちゃいまひょー!!』
クー先生が生徒たちにマイクを向けた。
「「おおー!!」」
「……なんでみんなノリノリなのさ?」
拳を高々と挙げてそれに答えた生徒たちに、ネガティブミントは小さく突っ込んだ。
『じゃあ、早速始めちゃうよ! カモーン! バトルフィールド!!』
そんなミントの突っ込みは勿論聞こえない。
そのままのノリで、クー先生はパッチィンと指を打ち鳴らした。
ばふんっ!!
「「!?」」
するとグランドが、広いステージを囲むように円形に観客席がある、コロシアムへと姿を変えた。
『うっはー! 超燃えてきたぜベイビー!!』
「「イエア!!」」
「だから、なんでそんなにテンション高いのさ?」
向けられたマイクに気合いの入った声を変えす生徒諸君に、置いてきぼりにされているミント。
『ルールは超簡単! どんな手を使ってでも生き残った人が勝ち! 但し、殺人は犯罪だよ! ドゥーユーアンダースタン!?』
「「イエスアイドゥーーー!!」」
流れに負け、ついに乗ってしまったミント。
『じゃあ、みんな席について! 名前を呼ばれたら、速やかに! 一分以内にステージに立ってね!!』
クー先生がそう言うと、生徒たちはわらわらと観客席へと向かい出した。
「やー、なんか無駄にエキサイトしちゃったねー!」
「あっはっはっ! 楽しかったなァ♪」
「フッフッフッ。オレ様としたことが」
席へ向かう途中、楽しそうに会話をするココアとポトフと死神の隣で、
「乗ってしまった……」
ミントはがっくりと肩を落としていた。
(……ん? みんなってことは、プリンもさっきあんなテンション――?!)
ふと、そう思い、ミントがぱっとプリンに顔を向けると、
「ぐー」
そこには、寝ながら歩くプリンの姿があった。
(……だよね)
プリンがエキサイトする様が思い浮かばなかったミントは、ほっと胸を撫で下ろした。
『さあさあ、今年も始まりました学園祭! 今回はトーナメントバトルと言うことで、私、クロレカが実況を務めさせていただいちゃうよ!』
生徒が皆席についたことを確認すると、拡声器からクー先生の声が流れた。
『そして、解説は魅惑の黒髪美人教師、ポリー先生にお願いしました!』
『……どうも』
クー先生のせいでかなり喋りにくそうなポリー先生。
『待ったなし、戦闘不能になったり、リングアウトしたりしたら負け! 棄権は認めないよ!』
そんなことは気にせず語り続けるクー先生。
「「認めないの?!」」
突っ込む生徒諸君。
『では、トーナメントバトル第一回戦を始めるよ!』
それも無視。
こうして、国立魔法学校の学園祭、トーナメントバトルが始まった。