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学校日和2  作者: めろん
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第27回 悲鳴日和

ゴーン


 日付が変わり、校内に古めかしい時計の鐘の音が響き渡った。


「……はあ、やっと終りだね」


「うむ。終りだな」


「やァっと終わったなァ」


その音を聞き、ミントとプリンは頭の上から濃硫酸入りのボウルを取り、ポトフは空のボウルを取った。


「じゃァ、寮に戻ろォぜ、ミント♪」


ぎゅっ


「うむ。戻ろう、ミント」


ぎゅっ


「うん。どして二人してオレの服掴んでるのさ?」


服をしっかりと掴んでそう言ったポトフとプリンに、ミントがその理由を二人に聞くと、


「あっはっはっ! バカだな、オバケなんているわけねェだろォ?」


「うむ。その通りだ」


と、何やら違う答えが返ってきた。

どうやら彼らは気が動転して、二歩ぐらい先の答えを口にしてしまったようだ。


「……。そだね。オバケなんているわけないよね」


まだオバケが怖いのか、とか思いながら、ミントは彼らに同調した。


「おう!」


「うむ。その通りだ」


「じゃあ、キミらの肩に白い手が乗ってるのも気のせいだよね?」


「「きゃああああ?!」」


と思いきや、まったくしていなかった。


(……"きゃああああ"?)


プリンとポトフの甲高い悲鳴に、首を傾げるミントであった。










ガチャ


 ウサギさん寮の部屋の扉を開けると、薄暗い部屋の中を下弦の月がぼんやりと照らしていた。


「……わは〜、月が綺麗だね〜」


「……月は好かねェ」


暗い部屋で月を眺めながらミントが言うと、ポトフはぼそっとそう言って、カーテンを閉める為に一歩踏み出した。


『むぎゅ』


「っきゃあああああ?!」


ガバーッ!!


「うわあお!?」


が、何か柔らかいものを踏んだ為、ポトフは再び甲高い悲鳴をあげてミントにしがみついた。


「ななな、なんかいるぞ! なんか!!」


「なんかって何さ? プリン、明かりつけて――ってキミもなの?」


「ヤーあ!」


明かりをつけてもらおうとしたプリンも、今にも泣きそうな声を発しながら自分にしがみついていることに気付き、


「……はあ……」


ミントは、やれやれと呆れたように溜め息をついてから、ポケットから取り出した杖を振った。


パッ


「はい、オバケとごたーいめーん」


 部屋に明かりがともり、全体が明るくなると、ミントはポトフの足元に目を向けた。


「「お、オバケなんかいないもんっ!!」」


彼に続くようにして、恐る恐るそちらを見るプリンとポトフ。


「「あ」」


『……むゆ〜……』


そこには、ポトフの足跡がくっきりとついているむぅちゃんがいた。


「むぅちゃんを踏むな!」


すると、先程の弱々しい彼は何処へやら。

プリンはポトフを枕で吹っ飛ばした。


バシーン!!


「ぐはァ?!」


「ヒール!」


吹っ飛ばした後、すぐにしゃがんでむぅちゃんに回復魔法をかけるプリン。


「あれ? セル先生、ペットは禁止だから捨てたって言ってなかったっけ?」


回復魔法の光を当てられているむぅちゃんを見て、ミントが小首を傾げながら言うと、


「……植物ならいいということだろう」


と言って、プリンは彼にむぅちゃんの長い垂れ耳を見せた。


「! 葉っぱになってる」


むぅちゃんの耳は緑色に塗られていて、白い葉脈が書かれていた。


「……なかなか可愛いんだね、セル先生も」


「うむ。お茶目さんだな」


ふふっと笑いながら、ミントがむぅちゃんの頭に花を乗せていると、


「?」


プリンはカーテンが風に揺れていることに気付いた。


(……? 窓が開いてる?)


「――!? 馬鹿犬?!」


次いで、何処にも部屋のポトフがいないことにも気付き、プリンは慌てて窓に駆け寄った。


「!」


そして、固まった。


「? プリン?」


プリンの隣に移動するミント。


「どしたの―…さ……」


そして、固まった。


「ふわふわ」


窓の外には、下弦の月をバックに、死神が大鎌の刃と柄に足をかけて宙に浮いていた。


「「……」」


ポトフをお姫様だっこしながら。


ぱたん


シャッ


野郎同士のお姫様だっこはなかなかのショッキング映像だったらしく、ミントとプリンは無言で窓とカーテンを閉めた。


「酷いなあ」


「「?!」」


 回れ右をするとそこに死神がいたので、ぎょっと目を見開くミントとプリン。


「よっこいせ」


その間に、ポトフをベッドに乗せる死神。

ポトフは気絶しているらしく、ぐったりとしている。


「窓から侵入しようとしたら、いきなりポッティーが飛んできたから、オレ様がガシーっと受け止めてあげたのに。ぷんぷん」


死神は腰に手を当て、ぷんぷんと怒っている。


「「ど……どうも……」」


彼にお礼を言いながらも、


((と言うか、侵入しようとしたのか))


とか思うミントとプリン。


「まあ、兎も角今日はもう遅い。てなわけで、グッナイ☆」


二人の疑問をよそに、死神はそう言って横になった。


「……」


「……」


ミントのベッドに。


「ぐーすかぴー」


「いやいやいやいや?!」


自分のベッドで眠り出した死神を、突っ込みを入れつつ起こすミント。


「ん……なんだ?」


若干不機嫌そうにうっすらと目を開ける死神。


「いや、なんだ? じゃなくてね!? 何自然に寝てんの?! っていうか何さっきのいびき!? 更に言うと此処オレのベッドなんですけど?!」


そんな死神に、ミントが四連突っ込みをかますと、


「!」


死神はその眠そうな目をハッと見開いて、急にベッドの上で正座した。


「なっ……にさ?」


彼の行動に疑問符を浮かべるミント。

すると、死神は両手をついて頭を深々と下げてこう言った。


「……ふつつかものではございますが、どうぞよろしくお願いします……」


と。


「……初めてだから、優しくしてね? ぽっ」


そして、顔を上げて口に手を当てて目線を反らして恥じらった死神を、


「朝顔」


ミントは薔薇の鞭で縛り上げ、ベランダから逆さ吊りにした。

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