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学校日和2  作者: めろん
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第26回 ツッコミ日和

つんつん


「んー、駄目だ。起きないな」


 頭をつついても、倒れているミントはまったく反応しないので、死神はうーんと首を捻った。


ぐぎ


「あうち」


「何本当に首捻ってんのよバカ?」


本当に首を捻った死神に、ウララはそう突っ込んでから、


「あんた一体なんてもの食べさせたのよ?」


未だに倒れているミントとプリンを見て尋ねた。


「んー……オレ様は普通のチョコカレーを作ったつもりだったのだが……」


作り方がまずかったのか? と顎に手を当てて答える死神。


「チョコカレーって時点で普通じゃないけどね。一体何入れたの?」


プリンの頭をつつきながらウララが聞くと、


「んーとだな、ジャガイモとニンジンとタマネギと肉と」


「うんうん」


死神が指を折って挙げた食材に、普通普通と頷くウララ。


「リンゴとハチミツとチョコときゅうりと」


「うん……うん?」


普通……普通? と小首を傾げるウララ。


「あと生きた魚とカタツムリだ」


「待て待て待て待て待てい!? 明らかにおかしいだろ特に最後の二つ?!」


完璧だ、とばかりに胸を張った死神に、ウララはスパァンと突っ込みを入れた。


「ん? 何故だ?」


「"何故だ?"じゃないわよ?! どこの世界にカレーに生きた魚とカタツムリ入れる奴がいるのよ!? どんだけカオスなカレーなのよ?!」


叩かれた後頭部を擦りながら小首を傾げた死神に、ウララは見事に三連突っ込みを決めた。


「何を言うか。シャーン氏直伝のすぺしゃるカレーのチョコっとアレンジバージョンだぞ?」


「誰よシャーンって?! 間違いなくそいつに問題あるわよ!! あと何"チョコっと"とか小ネタ挟んでんのよ?! って言うかあんた味見したの!? してないでしょ?!」


「そりゃ勿論」


「最悪だなオイイイ?!」


 という具合に、ウララが忙しく突っ込み続けていると、


カツカツカツカツ


「「!!」」


廊下の向こうから、鋭い足音が聞こえてきた。


「ちょっ、先生とか来ちゃったんじゃないの!?」


「そりゃあこれだけ暴れればな」


「あんたがいちいちユウのむかつきポイントを刺激したのが悪いんでしょ!? って言うか、こんな時にそこで何してんのよ、リン、ユウ、アオイ?!」


「「? ジェンガ」」


「あーもー、何でこんな呑気なヤツばっかなのよおお?!」


危機感も何もない死神とリンとアオイとユウに、頭をぐしゃぐしゃにして嘆くウララ。


「誰だ、そこにいる生徒は?」


すると、静かに憤っている声が聞こえてきたので、


(! やば! ワタル!!)


(ん。ちゃお)


ウララは死神をばんばん叩き、死神は大鎌を高々と掲げた。


ヒュッ


直後、その場からアオイとリンとユウとウララと死神は消え去った。


カツン


丁度その時、銀髪のセル先生がその場に到着した。


「……またお前らか」


そしてそこに倒れているミントとプリンを見て、彼は深々と溜め息をついた。












たぷんっ


「明日までそうしていろ」


 二人の頭に液体がいっぱいに入っているボウルを乗せたセル先生は、吐き捨てるようにそう言うと、回れ右して立ち去ろうとした。


「ま、待ってください! ご、誤解です、セルシオ先生!!」


そんな彼を、ボウルを引っくり返さないように注意しながら慌てて呼び止めるミント。


「ああ?」


先生らしからぬ形相と、どすの利いた声と共に、こちらを振り向くセル先生。


「や……オレたちは変なカレーを食べさせられて倒れてただけなんです!!」


「う、うむ! その通りだ!」


若干怯みながらも、ミントと一緒に無実を訴えるプリン。


「カレーだ? 誰に食わされたんだ?」


「死神だ」


セル先生の質問にプリンが答えると、


「……つくならもっとまともな嘘をつけ」


先生はツカツカと去っていった。


「ちょっ、待っ――先生! 先生ええええええ!!」


「む? むぅちゃんがいない」


叫ぶミントと、辺りをきょろきょろするプリン。


「捨てた。此処はペットは禁止だ」


と言う声を最後に、セル先生の姿は見えなくなった。


「……」


「……」


沈黙。


「むぅちゃん!!」


「むぅちゃんじゃないよプリンのバカ!!」


 ガーン、という効果音が似合いそうなプリンに、ミントは素早く突っ込みを入れた。


「ば―…」


「なんで"死神"って答えるのさ?! 嘘だと思われるに決まってるじゃん!!」


「……む……ごめん……」


何か言い返そうとしたけれど、そう言われて素直に謝るプリン。


「ああ、もう、ボウルの中身は濃硫酸だし!! よく無事だなボウル!!」


身に覚えのない罪を着せられ、行き場のない怒りをボウルにぶつけるミント。


「……」


怒っているミントの隣でしょんぼりするプリン。


「――!」


そんな彼に気付き、ハッと我に返ったミントは、


「ご、ごめん、プリン。オレ、酷いこと言って……」


慌てて彼に誤った。


「ううむ。大丈夫」


気まずそうなミントに、プリンはふるふると首を横に振ると、


「すべては死神のせいだ」


と言った。


「だあよおねえええ?!」


心から同意するミント。


「あんな不味いカレー食わせた上にこんな罰則喰らって……」


「おまけにむぅちゃんがいなくなって……」


そう呟いた後、二人は同時にバックに怒りの炎を燃え上がらせた。


「「死神め……!!」」


 二人がメラメラと燃えていると、


「? あれー? ミントとプリンー?」


「こんな所で何してんだァ?」


そこにココアとポトフがやって来た。


「……」


「……」


「え? な、何?」


ミントとプリンにじっと目を向けられ、思わず一歩下がるポトフ。


「……あー、そう言えば今日は午後からブドウに料理教えてあげるんだったっけー!」


すると、ココアはわざとらしく手をポンと叩き、


「じゃ! ポトフ、また明日ねー!」


大きく手を振って爽やかに去っていった。


「え!? ちょっ、ココアちゃん?!」


慌てて彼女のことを追おうとしたポトフを、


「……」


「……」


ミントとプリンの無言の視線が引き止めた。


「っああ、もォ!! 分かったよ、俺もやればいいんだろォ?!」


ミントとプリンの無言の訴えを読み取ったポトフは、彼らと同じようにボウルを頭に乗せたとさ。


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