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学校日和2  作者: めろん
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第25回 私刑日和

「リンリンリンリン!!」


「……一回呼べば分かる、です」


「いいからあれ見て!!」


 大きな柱に身を隠しながら、狐色の髪をツインテールにしたウララは廊下の向こうを指さした。


「ね! あれってココアじゃない?!」


「……そのよう、ですね」


栗色の髪のリンが、小声でエキサイトしているウララの指の先に目をやると、そこには確かにココアが歩いていた。


「隣にいるのは、確か……ポテト?」


彼女の隣を歩いている眼帯くんを見て、リンが小首を傾げながら言うと、


「え? そんな名前だったっけ?」


ウララも小首を傾げて疑問符を浮かべた。


「……まあ、そんなことはどうでもいい、です」


「それもそうね」


憐れポテト、もとい、ポトフ。


「見たところ、デート中のよう、ですね」


二人の様子を見て、リンがさらりと言うと、


「ええ……うっは〜! もう手なんか繋いじゃって! ココアったら、見せ付けちゃってくれちゃってるじゃない!」


隣で面白そうにきゃいきゃい騒ぐウララ。


「……。……ウララもユウと繋ぎたい、ですか?」


そんな彼女に、リンがいつも通りの無表情で質問をした。


「そうね―…て、ななな、何言ってるのよ?! そんなことしたら手の骨を粉砕されるのがオチよ!!」


その質問に、顔を真っ赤にして答えるウララ。


「……」


あり得る。

そう思ったリンは、敢えて何も言わなかった。


「え? そうなの?」


「「!?」」


突然後ろから降ってきた声に、二人が驚いてバッと振り向くと、


「ユウ」


ユウを呼ぶ銀髪の少年、アオイがそこに立っていた。


「なんだ、アオイ?」


彼に呼ばれてこちらにやって来る黒髪の少年、ユウ。


「ユウ、手を出して?」


「?」


彼のお願い通りに、ユウがすっと右手を出すと、


「ウララがユウと手を繋ぎたいんだって」


ぎゅ


「はい、ウララ。よかったね」


その手にウララの右手を繋げて、アオイはくすりと微笑んだ。


「……」


彼の真っ白な笑顔を見て、悪意はないんだろうなあ、とか思うリンと、


「……」


「……」


今の状況に、顔を真っ赤にするウララと、表情の変化を見せないユウ。


「……」


「……」


バキィッ!!


「って、やっぱりいいいい!?」


粉砕された右手を押さえて叫ぶウララ。


「……水道は何処だ?」


辺りをきょろきょろと見回すユウ。


「って、何水道探してんのよ?!」


「上水道」


「いや別に水道の種類聞いてねえし?!」


「……お前が手を洗うのはどんな時だ?」


やかましく突っ込んでくるウララに、ユウは倦怠感溢れる溜め息をついてから、彼女にそう質問した。


「え? ……えっと、私が手を洗うのは、手が汚れた時――」


「大正解」


「――表出ろテメェ!!」


「……お前って本当煩いな? 《天空をめぐる無形の(やいば)》」


ビュワッ


ザザザザザザザザザッ!!


「いやああああああ!!」


「おお。水道発見」


という具合いに、ウララがユウの風魔法に切り裂かれている時、


「此処で何してたの、リン?」


騒を起こした張本人であるアオイは、まるで部外者のように小首を傾げてリンに尋ねた。


「え? なっ、何もしてない、です」


我に返ったリンは慌てて首を横に振ってそう答えた。

そして、ココアとポトフの方をちらりと盗み見ると、


「!」


リンはパキッと固まった。

それは、何か彼女たちの距離が、非常に近くなっていたから。


「そう? 何か見てるみたいだったから」


すると、アオイがそう言ってココアたちの方を見ようとしたので、


「だっ、だから、何も見てない、です! と言いますか、アオイにはまだ早い、です!!」


と言いながら、リンはその視線を遮るように立った。


「? 僕にはまだ早い?」


彼女の言葉に、きょとん顔で小首を傾げるアオイ。


「!」


しまった、と両手で口を塞ぐリン。


「……うーん……よく分からないけど、何もしてなかったんだよね?」


そんな怪しげな行動をしているにも関わらず、アオイはそう聞き返すと、


「! は、はい、です!」


「そっか。じゃあ、待たせちゃ悪いから、早く死神さんの所に行こう?」


くすりと微笑んでそう言った。












「あ、死神さん!」


 食堂の前で死神を発見した四人は、彼の元へと移動した。


「おお、遅かったな」


「そう言うなら一緒にテレポートさせなさいよね――って、ええ!? えっと、ミントとプリンが倒れてる?!」


振り向いた死神に文句を言っている途中で、彼の後ろにミントとプリンが倒れていることに気付いたウララは、


「ちょっ、あんた一体何したのよ?!」


と、慌てて死神に尋ねた。

すると、死神はフッフッフッと不敵に笑い、


「言っただろう? "遅かったな"って」


と言った。


「「――!?」」


その言葉に目を見開くリンとウララ。


「う……嘘でしょ、ワタル……?!」


「ま……まさか……二人を……」


信じられないという顔で、ウララとリンが震えた声を発すると、


「ん。お前らが遅いから、先に食べてもらっちゃったぞ☆」


死神は抑揚のない声で、語尾に星印をつけた。


「紛らわしい、です!! 目指せ甲子園!!」


「驚かせないでよ!! 集中豪雨ぅ!!」


「あーれー」


そんな彼に、リンは杖をフルスイングさせ、ウララはボウガンを連射した。


「……おいアホ神。こんな所に呼び出してなんの用だ? くだらない用なら漏れ無く死がついてくるぞ」


 ぐふ、と倒れた死神に、ユウは冷え切った言葉を掛けた。


「カレーパーティーをしようと思ってな」


「《壮麗なる龍はすべてを呑み込む》」


ドパアアアアアアアン!!


立ち上がった死神を、巨大な水龍で容赦なくぶっ飛ばすユウ。


「あ……安心しろ。ちゃんとニンジンはよけてあげるゾ」


「《地を這う悪魔は生者を喰らう》」


ズズズズズズズズンッ!!


立ち上がった死神に、今度は彼の足元から発射された漆黒の光線が襲いかかる。


「……ゆ……ゆうこりん酷い」


「《暗雲の閃光は破滅をもたらす》」


カッ!!


ドガアアアアアアアン!!


ガクッ……とダウンした死神に、凄まじい轟音を伴う雷が落ちた。


「わあ、ユウ凄い!」


「ま、任せろ」


くすりと笑いながらぱちぱちと拍手するアオイに照れるユウ。


「……」


笑顔のアオイを見て、一度彼の目から世界を見てみたい、とか思うリン。

彼の目から見れば、きっとどんな状況もほのぼのと見えるのだろう。


「……ってことは、この二人、カレー食べて倒れたの?」


そう言って、倒れているミントとプリンの近くにあるカレーの鍋の蓋を開けようとしたウララに、


「ウララ、開けては駄目、です」


と言った後、リンはカレーの鍋を指さしてユウに顔を向けた。


「ユウ、後始末をお願いします、です」


「《暗雲の閃光は破滅をもたらす》」


それに頷く代わりに、ユウはカレーの鍋を派手に破壊した。


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