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学校日和2  作者: めろん
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第23回 絆創膏日和

 ウサギさん寮の男子寮と女子寮への入り口がある、広々とした談話室。

その中央で、むぅちゃんを頭に乗せたプリンは、きょろきょろと辺りを見回していた。


「……むう……何処にもいない……」


『む〜』


やがて二人は火の気のない暖炉のそばにあるソファに座り込み、しょんぼりとうなだれた。


「? あれー?」


すると、寮の扉が開き、ココアが姿を現した。


「プリン、おはよー。どうしたのー?」


しょんぼりとうなだれているプリンの元に移動しながら彼に挨拶するココア。


「む。おはよう、ココア」


彼女の声に顔を上げるプリン。


『む〜!』


「きゃ!?」


同時にむぅちゃんが勢いよく飛びかかってきたので、ココアは反射的にそれを両手で捕まえた。


『む〜む〜!』


捕まえられているにも関わらず、短い手足をじたばたと動かしてココアに抗議するむぅちゃん。


「へ?? ……。! あ、ごめんねー、むぅちゃん。おはよー」


何を言っているのかさっぱり分からなかったけれど、挨拶をしていないことに気付いたココアは、謝りながらむぅちゃんに挨拶した。


『むむむ〜』


すると、おはよーと同じ調子でむぅちゃんが鳴いた。


「やーかわいー!!」


『むむぅ?』


そんなむぅちゃんをぎゅーと抱き締めてから、


「て、そだ。プリンは此処で何してたのー?」


ココアは小首を傾げながらプリンに質問した。


「うむ……ココア、ミントと馬鹿犬を知らないか?」


プリンはその質問に、違う質問で返した。


「えー!? プリンも知らないのー?!」


ココアは驚いたような、がっかりしたような声でそう言った後、


「……て言うか、やっぱり張り合う相手がいないと寂しいんだねー?」


と、悪戯っぽくニヤリと笑った。


「なっ!? ぼ、僕が探しているのはミントだっ!! と言うか、あいつがいなくて寂しいのはココアの方だろう?!」


ココアに言われてムキになる、非常に分かりやすいプリンと、


「なっ!? べ、別に寂しくなんかないわよー?!」


プリンに言われてバフッと赤くなる、非常に分かりやすいココアであった。












ぽつり


「! 降ってきたわね」


 頬に雫が当たり、空を見上げたエリアが言った。


「えい! やっ! はあ! たああ!!」


「く――っそ!!」


ソラの連続切りをなんとかかわしていたものの、最後の一撃に当たってしまったポトフは、


ブンッ


光の剣を素早く振り下ろして反撃を仕掛けた。


「甘いよ!」


ドッ!!


「ぐはァ?!」


それを難無く避けたソラに追撃され、ポトフは勢いよく後方に吹っ飛んた。


「あうぅ……ポトフ……」


ぽつぽつと降ってきた雨にも関わらず、心配そうにポトフを見ているミントに、エリアはふわりと笑って、


「大丈夫。火は雨にも弱いのよ?」


と言った。


「やああ!!」


「っさせません!!」


ガキィン!!


 徐々に強くなっていく雨の中、炎の剣を光の剣が受け止めた。


「! なかなかやるね、ポトフくんっ!」


不敵な笑みを浮かべて炎の剣を光の剣ごと力強く押し込むソラ。


「ど、どォも……っ!!」


無傷なソラに対して、全体的にボロボロになっているポトフは、負けじと炎の剣を光の剣で押し返す。


「ふふっ、でも」


しかし、力負けしたポトフの光の剣は、ソラの炎の剣に弾かれて、


「もう限界みたいだね?」


「――!!」


無防備になったポトフに、炎の剣がそのまま勢いよく振り下ろされた。


「……」


「……」


「……」


 さらに勢いを増して、やかましく鳴り続けている雨の音だけが聞こえる、長い長い沈黙が流れた。


「……?」


振りかかってこない痛みを不思議に思ったポトフは、反射的に瞑った目をそっと開いてみた。


「……はれ?」


目を開けてみると、先程までの狂気に満ちた危険な笑顔が消え、きょとん顔をしているソラが立っていた。


「……ええと……僕は何を?」


ぱちぱちと目をしばたいて小首を傾げ、ソラは右手に持った剣に目を向けた。

炎の剣は、バケツを引っくり返したような雨に濡れて勢いを無くし、その手の中でか細く燃えている。

次いでソラは、傷やら泥やらで汚れまくっているポトフを見た。


「わあああ!? だだだ、大丈夫、ポトフくん?!」


そして叫んだ。


「……??」


ポトフが無事だったことに安堵しつつも、何があったのか分からない様子で疑問符を浮かべるミント。


「ふふっ、雨がソラの頭を冷やしてくれたのね」


そんなミントに、エリアは微笑みながらそう言った。


「! エリアさん……!」


そう言われてエリアを見たミントは、彼女の手が、青白い光を帯ていることに気が付いた。










ペタ


「……本当にごめんね、ポトフくん?」


 青い屋根の家の中で、ポトフの顔に絆創膏を貼りながら、申し訳なさそうに謝るソラ。


「……」


それに何も返事をしないポトフ。

その理由は、


「絆創膏貼りすぎですソラさん!!」


絆創膏の貼りすぎの為。


「え?」


「いや"え?"じゃないですよ?! ポトフ、ミイラ男ならぬ絆創膏男になってるじゃないですか!!」


小首を傾げたソラに、ミントはポトフを指差しながら勢いのいい突っ込みを入れた。


「わあああ!? ほ、本当だ!! ごめんね、ポトフくん!?」


ミントに突っ込まれて、自分が絆創膏を貼りすぎていることに気付いたソラは、慌てて顔に貼ってあるそれを剥がした。


ベリィッ!!


「ぎゃああああああ?!」


「ななな、何してるんですか、ソラさんんんん?!」


「わあああ!? ご、ごめんねポトフくん!!」


「なんで半笑いなんですかソラさんんんんんん?!」


「いやぁ、面白いなと」


「わざとなんですかソラさんんんんんんんんん?!」


と、主にミントがギャーギャー騒いでいると、


「お昼ごはん出来たわよ〜?」


エリアが、何かジュワアアアといってる物を持ってきてそう言った。


「「?!」」


それを見て、目を見開くソラとポトフとミント。


「?」


小首を傾げるエリア。


「「……それはなんですか?」」


三人が同時に何かジュワアアアといってる物を指差しながら尋ねると、


「何って、おにぎりに決まってるじゃない?」


可愛らしく笑いながら、エリアは、何かジュワアアアといってる物をおにぎりと称した。


「……」


「……」


ソラがちらりとポトフを見ると、ポトフは頷いてミントの腕を取った。

そして、


「わあ、もうこんな時間! 僕、美容室に戻らなくっちゃ!!」


「あっはっはっ! さァ、そろそろ学校に戻ろうぜ、ミントォ♪」


「あ、う、うん! お、お邪魔しました〜!」


わざとらしい言い訳を口にして、何かジュワアアアといってる物から逃れようと試みた。

――が、


ガシィッ!!


「折角人数分用意したんだから、お昼くらい食べていってよ?」


片手でソラとポトフを捕まえたエリアは、にっこりと素敵な笑顔でそう言った。


「「……は、ハイ……」」


こうなってしまったら、もう頷くしかないソラとポトフと、


「……なんでオレまで」


とばっちりを受けてしまったミントであった。


エリア

「はい、お茶もどうぞ」


ゲヒヒヒヒヒ


ミント

(わ、笑った!? なんか今お茶が笑った?!)


ポトフ

(お、おにィさァん……)


ソラ

(こ、これも特訓だよ、ポトフくん!)


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