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学校日和2  作者: めろん
228/235

第228回 職員日和

 よく晴れたぽかぽか陽気の昼下がり。

全生徒の進路も決まっていよいよ全体的にゆるゆるし始めた学校内の食堂にて、


「これなんかどォ?」


「わー! この部屋可愛いー!」


「……何畳設定なのさこれ?」


「ふむ、十八畳くらいあるだろうな」


ポトフとココアとミントとプリンは、昼食をいただきつつ新生活を応援するカタログを見ていた。


「うえ、そっかー。ね、部屋ってどのくらいだっけー?」


「んー……八くらいかなァ?」


「広さ考えないと足の踏み場もなくなるよ?」


「うむ。その広さならこっちだ」


新しい生活に向けての他愛のない会話。

 そんなほのぼのとした空間の後ろに、


「ここにしよっかー!」


クー先生ご一行がやってきた。


(? 珍しい)


ずらりと並んだ先生方。

いつもバラバラに食べているのに珍しい、とコーラを飲みながら思うミント。


「そうだな」


(あ、お子様メニューじゃない)


同意したセル先生のお盆には、簡単なサンドウィッチとコーヒーがのっている。

どうやら他の先生と一緒の時は、お子様メニューは控えているようだ。


「いやあ、進路も全員決まって一安心だなぁ!」


「ふふ、そうですね。みなさん決まって本当によかったです」


席に着いた社会科のフェイ先生と家庭科のピット先生は、ほのぼのと笑い合う。


「……パイナップル……」


「あらぁ? リアラ、酢豚にパイナップル入れない派?」


その隣で医務室のベル先生の言ったとおり、酢豚に入ったパイナップルにわなわなと肩を震わせているのは生物学のリア先生。


「……で、卒業式の方はどうするんです?」


 そんななか、マスクをした魔法学のポリー先生が本題に触れた。


(え、こんなところで?)


そんな話をしていいのか、と聞こえてくる会話から思うミント。


「うーん、ただやるだけじゃあつまらないよね?」


(卒業式に面白さを求めないでくださいクー先生)


クロワッサンをもぐもぐしながら言うクー先生。


「……。そうだな」


(クー先生の味方ですねセル先生)


いつもクー先生の味方なセル先生。


「そのまま帰しちゃえばいいんじゃないのぉ? かったるい」


(そこはかったるがらないでくださいベル先生)


パスタをくるくるしながら面倒臭がるベル先生。


「……パイナップル……」


(こだわりますねリア先生)


酢豚に入ったパイナップルがとことん気に食わないリア先生。


「……じゃあ、いつもみたいに試験しまぶえくしょん!!」


(今年のピノキは厄介らしいですねポリー先生)


目と鼻腔がつらい季節なポリー先生。


「いや、ここはマヨネーズでしょう」


「アホかマスタードに決まっとるやろ」


(いやなんの話をしてるんですかって、え!? プリンに?! プリンにそれらをかけるんですか!?)


プリンにかけるもので口論になっている美術のケア先生と体育のエル先生はほっといて、


「えー? 卒業するのに試験なんてするの?」


クー先生は、不満そうに口を尖らせた。


「最後まで勉強させるなんて可哀想だよ!」


なんだかいつになく生徒の味方のような発言。


「何を言いますか。学生の本分は勉学です」


ズビズビとつらそうな鼻をかみつつ、ポリー先生が反論する。


「それはそうかもしれないけど……、でも!」


どうやらここは譲れないクー先生は、


「生徒のURLを考えるべきだよ!」


ガタッと立ち上がって、真剣な顔でかっこよく言い放った。


「……? URL?」


インターネットアドレス? と首を傾げたポリー先生に、


「……。QOLって言いたかったんだろ」


セル先生は、生活の質の間違いだとコソッと訂正してあげた。

ちなみに、コソッとなあたりが彼の優しさである。


「じゃあ、クロレカはどうしたいのぉ?」


間違いに気付いていないクー先生に向けて、ベル先生は、桃色の髪を指先に巻き付けながら質問した。

なんだか、かなりどうでもよさそうだ。


「え、わたし? えっと、わたしはね」


しかし、クー先生にとってはそんな態度の方がどうでもいいようで。

彼女はその質問を待っていたかのように、らんと目を輝かせた。


「生徒のみんなが、この学校に来てよかったなって思えるような卒業式にしたいの!」


そして、にこっと笑って自分の意見を発表する。


「この学校で、みんなが先生たちから学んだことを最大限に活かせるような」


胸に手を当てて、優しく言葉を紡ぐクー先生。


「それで、それらを乗り越えることで、ひとりひとりが誇りと自信を持って新しい未来に大きくはばたけるような」


いつもの彼女らしからぬ、学校の先生らしい提案に、他の先生たちは驚いたように黙り込んでいた。


「――そんな実技試験にしたいの!」


が、いつものクー先生だった。


((やっぱりね))


ガクッと軽く思い思いにずっこけた先生たちの周りで、話を聞いていた生徒たちは、予想通りだと小さくため息をつくのであった。


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