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学校日和2  作者: めろん
220/235

第220回 通話日和

 北から冷たい風が吹き、気温もなかなか上がらなくなってきた今日この頃。


「……む。ぷわぁ」


眠りから覚めたプリンは、むくりと起き上がると小さく欠伸をした。

時計を見ると、ジャスト七時。

夏休みの特訓の成果は、きちんと身に染み付いたようだ。


「む?」


次いで、カーテンが開いていないことに気付く。

すなわち、プリンが一番早く起きたようだ。

 靴を履いてとことこと窓に移動し、カーテンを開ける。

冬の朝日は、まだそれほど強くない。


「……」


やんわりと明るくなった室内を振り返ると、ミントとポトフがまだ眠っている。

珍しい、と思いつつ、プリンはミントの枕元に移動した。


「……すぅ……」


布団から顔を出しているのは、ネコ。


「ふふふ、可愛い」


先日ココアから貰ったパジャマを律儀に使っているらしいネコミント。

動物好きなプリンには好評のようだ。


「む?」


ネコ耳フードに気をとられていたプリンは、そこでとあることに気がついた。


「……う……」


何やらミントの顔が赤い。


「? お熱?」


と思ったプリンがミントの額に触れてみたところ、


「! お熱!」


だったらしい。


「ぴわわ、わ、わんわんっ!」


ゆえに、慌ててポトフを起しにかかるプリン。


「ん、おにィちゃん……」


ポトフは、寝言を言っていた。


「気持ち悪い!」


スパーン!!


「ふおォ?!」


よって、プリンは枕で文字通り彼を叩き起こした。


「何す」


「ミントがお熱!」


「ん――何ィ?!」


 プリンの報告を受け、ポトフは慌ててミントの様子を窺った。

見ると、猫耳フードの下から見える顔が確かに赤い。


「可愛い!」


「違う!」


何か別の感想を口にしたポトフを、プリンは再び枕で強打した。


「ってェな……ん、風邪だな。たぶんきっと恐らく」


ミントを診て、えらく曖昧に答えを出したポトフ。


「むぅ……ミント、大丈夫?」


「……うにゅ」


「熱があるみたいだし、今日は休みだな」


うにゅ、と答えたのか寝言なのかよく分からないミントに、大事をとって授業を休むことにしたポトフは、


「ココアちゃんに電話しなきゃだぜェ♪」


何やらルンルンでココアに電話を掛け始めた。












ピリリリリリ


「ん」


 食堂でいつものごとく食後のココアを飲んでいたココアは、授業カバンからの機械音に気がついた。


「……げ」


後、嫌なものと遭遇したときの典型的な反応。

と言うのも、画面にポトフとの表示が出ているから。

ちゃんと仲直りしたわけなので、彼自身が嫌なものと言うわけではない。

ただ、電話となると。


「あれ? ココア何それ〜?」


「それなあにココア?」


「え?」


 ケータイと睨めっこしていると、珍しい機械を持った彼女に興味を持った女の子たちがわらわらと集まってきた。

彼女たちは、同じウサギさん寮の生徒たち。

以前のわだかまりも消えて、今では普通に仲のよいお友達。


「ああ、ケータイって言って、携帯できる電話なんだよー」


彼女たちの問いに、以前のアオイの答えと同じ答えを口にするココア。


「へー! そんなものあるんだー!」


「プリンが作った試作品なんだけどねー」


「そうなんだ、流石プリンくん!」


きゃいきゃいと盛り上がるなか、一人の女子生徒が口を開いた。


「で。電話鳴っていますわよ?」


ごもっとも。


「う、うん。そーなんだけどー……」


「ココア、出ないの?」


親友、ブドウに小首を傾げられ、


「……う、うん。分かったよー」


ココアは、しぶしぶ通話ボタンを押すことにした。

すると皆がケータイに注目してきたので、ついでに拡声ボタンを押した。


『ココアちゃん?』


――すると、素晴らしくクリアなポトフの声が聞こえてきた。


「「っきゃあああ!!」」


『っ?! へ??』


耳元にダイレクトに届く甘い声に、女子生徒たちは思わず悲鳴を上げた。


「……だから嫌だったのにー……」


『え? えっと、……ココアちゃァん?』


声だけ耳元に届くことがなれないようで。

性能良く作り上げたプリンを若干恨みつつ、耳から少し離して通話するココアであった。


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