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学校日和2  作者: めろん
219/235

第219回 お礼日和

 せっせと課題を終了させた後の午後、


「ごろごろォ」


ポトフは、床に転がっていた。


「……」


またやってるよコイツ、とか思ったミントの隣で、


「……? 何をしているんだ?」


プリンが首を傾げて質問した。


「暇だからゴロゴロしてんだよ」


それに対してさも当然のように答えた後、


「ごろごろォ」


ポトフは引き続き床の上を転がりだした。


「……」


理由は、暇だから。


「「ごろごろォ」」


「て、加わるな加わるな」


一緒にゴロゴロし始めた彼らに、ミントのツッコミ本能が黙っていなかった。


「ん?」


 と、そこで鳴り響いた着信音。

そう言えば、夏休み前からずっと持っていた。


「む? ココアから?」


「だね」


プリンの言葉に、ケータイをカバンから引っ張りだしながら答えるミント。

何故分かるかってそれは、ケータイ所有者が四人しかいないから。


「うん。……へ? う……うん、分かった」


なんとも短い通話。

しかしプリンは、自分の作ったものが実際に使用されるのを見て満足気。


「どォしたんだァ?」


「うん。なんか来いって」


ポトフからの問いにアバウトに答えたミントは、


「ちょっと行ってくるね」


てこてこと部屋から出ていった。


「いってら〜ァ」


「……」


ひらひらと手を振るポトフを片目に、ココアと一緒にいる僕の時とはえらい違いだな、と思ったプリン。


「……、でーと?」


「あっはっはっ、んなまさかァ」


ないない、と手を横に振るポトフ。

どうやら彼も、あまりミントを野郎とみなしていないようだ。










 ココアに呼び出されて向かった先は、食堂の隣の小さな売店。

筆記用具やらお菓子やらシンプルな服やら、いろいろなものを取り扱っているその店の、隅っこに設けられた試着室から、


「……」


ネコ耳フードがついたきぐるみパジャマを着たミントが現れた。


「やー! ミント可愛いー!」


フードの下からのぞく表情から、彼がこれを気に入っていないことはすぐ分かるのだが、ココアは知らんぷり。


「……何。これのために呼び出したの?」


気分の優れない表情で、ミントは引きつりながら質問した。


「いや違くて! これ絶対似合うと思ってー!」


「なんだその思わせぶりな否定の語句は」


「おねーさん、これいくらですかー?」


「っていや何勝手に購入する方向で話を進めてるのさ?」


「心配しないでミント、このサイズ大丈夫だよー!」


「いやオレ今そんな質問した?」


何て言ってるうちにお会計を済ませたココア。


「って、お会計を済ませたココア?!」


「レシートびりびりー!」


「そして手際よく返品不可能にしたココア!?」


 いらねえええ!! とショックを受けて頭を抱えているミントに、


「ミント、ありがとー」


ココアはにこっと笑ってお礼を言った。


「……、へ?」


突然のお礼に、ミントは疑問符を浮かべた。


「ミントのおかげで、仲直りできたから」


そんな彼に、ココアは感謝の理由をつける。


「あ。ううん、お礼ならチロルに言ってよ」


するとミントは、とんでもないと笑いながら首を横に振った。


「ふふ、チロルにもちゃんと言ったよー」


対して、彼女はそう答えた後、


「でもすごいよねーミント? 私の心が読めるんだもーん!」


きらきらした尊敬の眼差しを彼に向けた。


「へ? いや、ココアの心を読んだわけではなく単なる想像で」


「乙女心が分かるなんて、流石だよー!」


「ねえ、それは褒めてるの?」


なんだか、流石は女の子と言われた気がしてならないミント。


「きっと中身もお母さんに似たんだねー?」


「"も"って何さ"も"って」


ミントの勘は、当たるらしい。


「……あんなのには似たくないよ」


ため息をつきながらそう返す。

あんなのとは、もちろん彼の母親、ジャンヌのこと。


「またまたー、そんなこと言っ」


「だってまあそりゃあ激痛を絶する激痛なんだろうけど出産するのに溶解魔法使ったりまだ一歳にもならない息子に人工ミルクを自力で作らせたり育児放棄と取れる放任で自分はずっと庭で意味もなくブリッジしてたりおかずをちょっと残したりすると鞭打ちとゴキと幼虫の刑を執行したりヒトの迷惑も考えずに大通りでぶくぶく溶けたりメルヘンだのわけの分からないことをごちゃごちゃごちゃごちゃ」


「ごめん。私が悪かったよー」


この日ココアは、ミントにジャンヌの話を振ってはいけないことを学習した。


「とにかく、この前のお礼がしたかったの。本当にありがとー、ミントー!」


 ざっくりと話を戻したココアは、にこりと笑いながらお礼を言い、


「それ、ほんの気持ちだからー!」


バイバイしながらぱたぱたと去っていった。


「へ? あ、うん。ありがとー」


いつの間に話題が戻ったのか不思議に思いながら、ミントは、感謝の言葉とお礼の品をくれた彼女に手を振り返した。


「……って……」


お礼の、品。


「ありがたくねえええええ?!」


ミントは、猫耳パジャマを手に入れた。

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