第209回 好戦日和
「私ブドウと一緒にいたはずなんだけどー?」
「ココアも元に戻ったことだし」
「ってちょっと無視っすか?」
ココアの疑問をひらりとかわし、ミントは友人二人に向き直った。
「試合開始といこっか?」
いつものメンバーではあるが、これはサバイバルバトルと言う名の体育祭。
「えェ?! 俺、ココアちゃんとミントを攻撃なんて……!」
「さっきからそればっかりだな貴様は」
にもかかわらずまったく争う気のなかったポトフに、プリンは呆れたように呟いた。
「何度も言うがこれはサバイバルバトルだ」
「そうだよ。今の言葉、ぜんっぜんかっこよくないんだからね!」
そして、プリンに次いでミントが畳み掛ける。
「で、でも」
「でももまりもも桃じゃなーいっ!」
「はェ??」
わけっちょ分からない言葉にポトフが疑問符を発生させた直後、
「ポトフが戦わないって言うなら、こうだよ!」
『『ジェララララ!!』』
ミントは、バシーっとココアを縛り上げた。
「ココアちゃん!?」
「って、ちょ、とばっちりー?!」
荒技にでたミントに、ポトフとココアはダブルでびっくり。
『『ジェラ〜♪』』
「って、ちょー、よだれー?!」
「ほーら、戦わないとココアが食べられちゃうよ?」
ココアを人質に、何故か悪役ぶるミント。
「くっ……!」
しかし、ポトフには効果絶大。
「ホントは……っこんなことしたくねェけど! ……"キラキラ"ァ!!」
「そうこなくっちゃ!」
ポトフが初めて自分に向けた光線をかわしながら、ミントは薔薇の鞭を装備した。
「いっくよー! "蓮華"っ!」
「遅いぜ!」
すると今度はポトフがミントの攻撃をかわし、自慢の脚でミントの後ろに回り込んだ。
「! はや――」
「"キラキラ"ァ!!」
後の、最大魔法。
「わ……っ?!」
背中に受けた、よく知っているが初めての魔法に、ミントは思い切り吹っ飛ばされる。
「ふむ。致し方なかったのだろうが」
その視界のまっすぐ先に、プリン。
「自ら二対一にするとはな?」
「――! やっば」
不敵に笑った彼に言われ、ミントは初めてそのことに気が付いた。
そうだ、これではプリンにココアの呪いを解いてもらった意味がまるでない。
「枕が代わって」
自ら進んで不利にしてしまったこの戦いで、
「お仕置きだっ!」
「って、なんか懐かしい技名いいい?!」
何やら久しぶりに聞いた単なる枕でバシーンに、ミントは打ち返されながら突っ込んだ。
「あっは、おかえりミント♪」
逆方向に進んだミントは、当然ポトフのもとに向かうわけで。
なんだか楽しくなってきた模様のポトフは、今度は軸足でしっかりと地面を踏みしめた。
「なめんな、"朝顔"!」
そんな彼の様子を見て、ミントは好戦的に笑いながら薔薇の鞭を操った。
「で、お返しだよ!!」
そうしてうまく捕えられたポトフを、ミントは着地の直後にプリンに向かって投げ飛ばした。
「っぴわ?!」
「おわァ!?」
結果、見事にストライク。
「そんな簡単に負けないんだから!」
「む……こっちだって」
「まだまだだぜェ!」
挟まれている形成を脱した後に対峙したところで、彼らは再びぶつかり合っていった。
「"神風"!」
「"キラキラ"!」
「"ウッドウォール"!」
「む、"木枯らし"!」
「"サザンクロス"!」
「甘い、"枝下桜"!!」
と、どんパチし始めた彼らを眺めながら、
「……なに? 私今回かんぜん無視ー?」
『『ジェララララ!!』』
マッドホイップとともに佇む、少しむくれたココアであった。