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学校日和2  作者: めろん
203/235

第203回 思考日和

 綺麗な花には刺がある、とはよく言ったもので。


「覚悟なさいこの頭ピンク〜!!」


「脳内ピンクには負けないよー!!」


片や釘バット、片や電ノコという、いかにも刺々しい武器を手にした美少女が二人。

 彼女たちは、一人の罪な男が原因で戦っていた。


「絡みつけ! 朝――」


「剣舞、火炎車」


「うにゃあああ! マッドホイップううう!!」


アロエの動きを封じるつもりが、炎を纏った回転切りによって鞭を斬られた焼き尽くされ、あまりのショックに叫んだ彼の名はミント。

彼が原因で、と言っても、明らかに一方的な勘違いだが、彼らの戦いは始まったのであった。


「きぃーっ! あんたはおとなしくポトフといちゃついてなさいよ〜みたいな〜!!」


「っだからぁ! 私とミントは友達だって何回言ったら分かるのよー?!」


もちろん、ドロドロ三角関係が原因なわけではない。


「友達が彼女の目を盗んでらぶらぶするかあああああ!!」


「いや、あんたの目はどういうふうに脳内変換されてんのよーーー!?」


 互いに噛み合わない言い争いをしながら、互いに物騒な武器を振り回す。


「ウッドウォール!!」


「フレアドライヴ!」


「って、わあああ!? 天然杉があああ!!」


そして、こっちもこっちで騒がしい。

先程から、ミントは対アロエに苦戦していた。

理由は見ての通り、ミントの魔法をアロエがことごとく燃やし尽くすから。


「おやおや、学年チャンピオンがこの程度ですか?」


燃え尽きた愛すべき植物に愕然としている彼を、彼女は悪役のごとく嘲笑った。


「ほら! アロエがミントをいぢめてるよー!」


「話を逸らそうなんてそうはいかないみたいな!」


「いやいや事実ー! ミントめちゃくちゃ相性悪くてめちゃくちゃ不利ー!」


魔法も交えて怒濤の攻撃をしてくるチロルから、ココアは逃げるだけで精一杯。


「うう、愛の力って恐ろしい……」


なんて感想も抱くほど。

 ミントの状況を見ても、明らかにこちらの方が分が悪い。

でも、だからって負けたくない。

ついでにミントをそんな目で見たことは一度もない。

恐らく自分もそんな目で見られたことも一度もない。


「ココア!」


「!? ちょ、ちょっとー! 近づかないでよ火に油ー!!」


 そんなことを考えているとミントが隣にやってきたので、ココアは傷つく言葉を口にした。


「? 何言ってんのさ?」


対してミント。

こいつ、今チロルがあんなに荒れている理由を絶対理解していない。


「とにかく、申し訳ないけどオレだけじゃアロエに勝てそうにないんだ」


そんなココアの思考なんて知る由もなく、ミントは言葉を続けた。


「ココア、盾で動きを封じられる?」


と。

それは、彼のまんま木製の盾では簡単に燃やされてしまうから。


「あ! その手があったかー!」


すると、ココアは気が付いた。

逃げるのがしんどいなら、襲ってくるのを止めればいい。


「いくよー! カオスシールドー!!」


それならば、と早速実行。

ココアは、チロルとアロエを囲むように闇の盾を張り巡らせた。


「!」


「へぶっ!」


それに直感で足を止めたアロエと、見事にぶつかったチロル。


「"へぶっ"って……はしたないですね」


 鼻からいったチロルに、アロエは呆れたような目を向けた後、


「さて、どうしましょうかね」


自分の三倍程もある闇の盾を見回した。

闇と言っても、もちろんただの影になっているわけではない。

現に、チロルが顔面を"へぶっ"っとぶつけている。

そして、以前の学祭で見たように、この盾は相手の魔法を吸収する。


「と、なると」


囲まれていない、上。

しかし、これでは相手の位置が分からない。


「きぃー! この小癪ピンク〜!! アタイもミントきゅんと内緒話したい〜みたいな〜!!」


冷静に状況を見るアロエに対し、何やらおかしな方向で頭に血が上っているチロル。


「まあ、闇の盾を張っている以上ココアさんは攻撃できないでしょうし」


そんなペアとは相談する気も起きないのか、アロエはそのままにしておいた。


「回復魔法は対象の傍にいないと使えないし、召喚魔法なら詠唱させなければいい話。他のミントさんの攻撃なら、アロエの炎で焼き尽くせばそれで終わり」


召喚魔法並みの魔力が高まれば、いくら森の中でもミントの居場所が分かる。

アロエはつらつらと解析すると、


「時間の問題ですね。アロエが勝ちま」


「うーん、残念。オレの魔法は植物を生やすだけじゃないんだよね」


 そんなアロエの発言を、ミントが盾の向こう側から遮った。


「……?」


聞こえてきた声に、彼女は疑問符を浮かべる。

どういうことだ。

彼の今までの攻撃を見ても、鞭の他は、地面からばかすか植物を生やすだけ。


「オレさ、知ってるんだ」


ココアの隣で弱く魔力を放出し、


「チロルのことも、アロエのことも」


ミントは左手を上に向けた。


「「――!?」」


彼の言葉に、アロエのみならずココアも目を見開いた。


「?」


分かっていないのは、チロルだけ。

 今はもう昔の感情ではあるが、誤魔化し切ったつもりだったのに。

まさか、彼はアロエの気持ちに気付いて、


「ピノキ花粉症だって」


やっぱり、いなかった。


「「え」」


 が、気付くとドーナツ状の闇の盾の真上に現れた黄色い塊。

――そう、ミントの魔法は植物を操る力。


「食らえ! 花粉玉あああ!」


「「きゃああああ?!」」


花粉アレルギーな方に対してのみ最悪な奥義、花粉玉。

どこかしらのパクリっぽい攻撃で、ミントたちは勝利をおさめたのであった。


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