第201回 因縁日和
落葉が舞い始めた森のなかを、二人の少女がお話しながら歩いていた。
「まったく……大部分の生徒の進路が決まったからって、いきなりサバイバルバトルだなんて」
「一体何考えてるんだ〜ってかんじみたいな〜?」
「……まあ、おおよそ何も考えてないんでしょうけどね」
その名もアロエとチロル。
種類は違えど、二人揃って美少女である。
「で〜、アロエは大学進学が決まったのよねみたいな?」
クー先生への愚痴をこぼした後で、チロルはころっと話題をもとに戻した。
「はい、より専門的な知識を身に付けるために」
それに対し、アロエは尤らしい返答をする。
「それで、チロルさんは花嫁修業、でしたっけ?」
返答ついでに、彼女が次の話題を持ち出した。
「そうそうそうそう! 花嫁修業! 立派な花嫁になってみせる〜みたいな!」
するとチロルは、がっつり食い付いた。
「ほほう、例えば?」
「んとね、お料理でしょ、お洗濯でしょ、お掃除でしょっ」
アロエの適当な催促にノリノリでついていくチロル。
「ふむふむ、他には?」
「それにそれに、あんなことやこんなことまで、ってキャー! 何妄想してるのアタイってばー!!」
「……何を妄想したのか知りませんがご馳走様です」
呆れたような棒読みアロエの隣で、チロルは一人で勝手にフィーバーしていた。
「だからねだからねっ、アタイはもっとミントきゅんにふさわしいような可愛くて素直で明るくてしっかりものでか弱くて頼りがいがあって艶めかしくてセクシーで落ち着きのある女性になるのみたいな!」
「随分と欲張りましたね」
「んふ〜っ♪」
どうやら自分の世界に入ってしまった様子のチロルにかなり適当に付き合いながら、アロエが無意味に前進していると、
「あ」
「「あ」」
「あ?」
木々が晴れて道が拓け、彼女の目の前にミントとココアが現れた。
「あ」
それを、チロルはワンテンポ遅れて確認した。
「お久しぶりです、ミントさん、ココアさん」
「あ、うん。こっちこそ久しぶり」
「ひ、ひさしぶりー」
さらっとしたアロエの挨拶に、さらっと応えるミントと引きつるココア。
その、引きつるゆえんのものは、
「……、………………」
心なしか燃え盛る炎と共に阿修羅像が背後に見える、チロル。
「ね、念のために言っておくけど、勘違いしないでよねーチロルー? わ……私は、今回たまたまミントとペアになっただけで」
「キエエエエエエエ!!」
「って、イヤーーー?!」
誤解を解こうにもチロルが先に錯乱状態に陥り襲い掛かってきたため、ココアはひとまず逃げ回り始めた。
「ち、チロル……?」
「おやおや。落ち着きのある女性を目指していたのではないのですか?」
その荒れ狂いっぷりに若干引き気味のミントの隣で、アロエは小さく息をつく。
ガキィン!!
瞬間、炎の属性がついた双剣でミントの首を狙ったところ、マットホイップの口で食い止められた。
「っ、危な……。あ、アロエ?」
冷や汗かいたミントが、恐る恐る名前を呼んでみると、
「これはサバイバルバトルですよって首を狙います」
アロエの、単純かつ明快な回答が返ってきた。
「いやいやいやサバイバルバトルなんだけど首を狙いますって」
「では心臓を狙います」
「っていやオレなんか悪いことしたあああ?!」
「まあ、多少」
「って、ええホント!? ちょ、まっ……、ご、ごめんなさいいいいい!!」
連続攻撃を畳み掛けるアロエと紙一重でかわしまくるミント。
こうして、ミント・ココアペアとチロル・アロエペアの戦いが始まった。




