第200回 合格日和
夏休みから約一ヶ月。
卒業を控えた学校には、お知らせフクロウがたくさんやってきていた。
「受かったァーっ!!」
「わっ、ホントに受かってるーっ!!」
リボンを解いて内容を確認すると、ポトフとココアの瞳が輝いた。
「ホント、ココアちゃんもっ?!」
「うんうん、ポトフもーっ?」
「あはは、おめでと二人とも」
きゃいきゃいとはしゃいでいる彼らを見て、ミントは温かく祝福した。
「む。受かった」
「あはは、えらい温度差だねプリン?」
後、実にあっさりとしたプリンの感想に、笑いながらツッコミを入れた。
「む? ミントにも、お知らせ?」
するとこちらの持ち物に気付いたプリン。
彼は、ミントの左手にあるお知らせの紙を見て首を傾げた。
「あ、うん。みんなみたいに進路が決まったお知らせなわけじゃないけど」
それにこくりと頷いた後で紙をそちらに見せたミントは、
「薬草取り扱いの資格。これならみんなに少しでも協力できるかなー? ……って、思って」
と、照れ臭そうにそう言った。
「……」
「……」
「……」
協力。
言わずもがな、ココアとポトフは医療関係。
プリンは、製薬などにも関する大企業。
「……あ、えっと、その」
「「ミントーーー!!」」
「って、何事おおお?!」
彼らの反応を見て言わなきゃよかったかと思っていたところ、プリンとポトフが感極まってひっついてきたゆえに叫ぶミント。
「あはは、やっぱり友達思いだねーミントはー?」
そんな友情を眺めながら、ココアはふわりと微笑んだ。
「ん?」
その時彼女は、ひっつかれた拍子にミントの手から落ちた紙が、二枚であることに気が付いた。
「なんで二枚ー?」
それを拾ったココアは、彼がもう一つの資格を取得していたことを知った。
「……猛植類取り扱い資格……」
具体例・マッドプラント。
廊下を歩いていると聞こえてくるは、生徒たちの声。
「受かりましたぁ!」
「ホンマか! やったなぁ自分!」
それは、夏休み中に受けた就職試験やら入学試験の結果。
「うんうん、みんなちゃんと受かってるね」
学力水準の高い学校だけあって、喜びの声の方が圧倒的に多い。
「うふふっ」
明るいニュースで持ちきりの校内で、クー先生は、頬が弛むのを止められなかった。
それもそのはず、自分が手塩をかけて教育してきた教え子たちが立派に巣立っていくから、
「これでやっと遊べるねー!!」
――では、なかったようだ。
『そんなわけで、第何回? 愛と勇気の体育祭を始めるよー!!』
思い立ったらすぐ実行。
アナウンス魔法を使い、クー先生は全校生徒に体育祭開始を告げた。
『なんか受験生らしくピリピリしちゃって……まったく、このわたしに気を遣わせるなんて高度なテクニック使わせないでよねみんなったら!』
ちなみに彼女が、えええ、とか、そんないきなり、とか、校内の至る所から発されたツッコミに構うことなんて一切ない。
『タイトルは、"サバイバル・いん・樹海での障害物競走――目の前の障害物を張り倒せ――"! ルールは簡単っ、とにかくサバイバルだよ!』
ノリノリで体育祭らしくない説明した後に、クー先生は指ぱっちんをかました。
『優勝ペアには、トロフィーと賞状が贈られるよ!』
賞品は、わりと普通。
『じゃあ早速始めるよ! みんな、デッドオアアライブ☆』
後に縁起でもない言葉で、クー先生はスタートフラッグを振り下ろした。