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学校日和2  作者: めろん
198/235

第198回 結論日和

 朝の陽気に包まれて、


「む……」


海のごとく青い瞳を開けたプリンは、こちらを覗き込んでいる二人を発見した。


「わあ! プリン偉い偉い!」


「ぴわ!?」


一人はミント。

彼は一人でちゃんと起きられた友人を犬のように撫でてやった。


「おはよ! ちゃんと一人で起きられるようになったんだね!」


「む、おはよう。ふふふ、頑張った」


 もそもそと起き上がった後、進化を遂げたプリンはミントと挨拶を交わす。

前よりも随分と伸びた髪についた寝癖は、撫で付けるだけですぐに従う。

これを、なかなか素直な髪と取るか、なかなか根性のない寝癖と取るか。


「?」


ココアにケンカを売っているその髪質はほっといて、プリンは残る一人に目を向けた。


「……」


それは、さっきからこちらをじとーっとした目で見ているポトフ。


「……。人の寝顔を観察するとは、趣味が悪いな」


そんな彼に、プリンはさらりとそう言った。


「誰もテメェの寝顔なんざ興味ねェって言うかそれ以前に今までどんだけ寝顔さらして生きてきたと思ってんだテメェはっていやそんなツッコミはどォでもいい!!」


するとポトフは自らの長いツッコミをポイ捨てし、後ろに隠していた少女を前に出した。


「ふわあ?!」


両方の肩をしっかり掴まれてズイッと姿を現した彼女は、


「? ココア?」


まごうことなきココア。


「……おはよう?」


「お! おおおはよー!」


 なんでいるの? と言わんばかりだが取り敢えず挨拶をするプリンに、挙動不振に応えるココア。


「……」


「……」


「……」


「……」


「「……」」


沈黙。


「ええっと……プリン、ときめいたりする?」


 訪れた無音の世界を振り払うように、ミントがゆっくりと口を開いた。


「? ときめく?」


「う〜ん、なんて言うか、ココアを見てドキドキする〜、とか?」


ときめくの説明を、ミントが自信なさげにすると、


「全然」


プリンがきっぱりくっきり答えた。


「テメェちょっとはときめけェ!!」


ゆえに、ポトフは彼に蹴を入れた。


「っていやいやときめいちゃダメでしょー?!」


よって、ココアが彼にツッコミを入れた。


「テメェ、ココアちゃんに魅力がないっていうのかいやときめきやがっても蹴るけどな!!」


「つまりどっちにしろ蹴ってたのー!?」


 むちゃくちゃなポトフにココアが突っ込みを入れているなか、


「つまり、魔法はちゃんと解けたってことだね」


ミントはプリンを起こさせながら安心した。


「む? ……、ああ」


なんのこっちゃと少し考えた後、たどりつくのは昨日の出来事。


「ちゃんと覚えてるみたいだね、どうだった?」


「む?」


「"恋愛感情"の感想は」


ピンときたプリンに、イタズラっぽく笑ったミントが問い掛けた。


「……。ふむ」


すると、プリンはココアに目を向けた。


「確か、ココアを見ているだけでドキドキしてきて何か理由もなく"好き"という気持ちでいっぱいになってずっとそばにいたくて誰にも渡したくな」


「のわーーーーーー!!」


真面目な顔でさらさらとこっぱずかしいことを言われて堪ったもんじゃないココアは、顔を真っ赤にしてその回答を遮った。


「ほほう、どうやらポトフからそんなふうに思われてるらしいねココア?」


「聞こえない聞こえない聞こえないー!」


にやりと笑ってみせたミントの言葉も、両手で耳を塞いでシャットアウトするココア。


「……で、"恋愛感情"とやらがなんぞやってのは分かったんだろォ?」


 その隣で、その感情が自分の物と確認できたポトフが質問を投げ掛けた。


「ムースちゃんのことはどォなんだ?」


という、当初の目的を。


「うむ、あれが"恋愛感情"と言うものならば」


それを真面目に受け取ったプリンは、


「僕は今まで一度もその感情を抱いたことがないぞ」


まことにさらりとお答えになった。












「っ、くしゅん!」


 同時刻。

隣国の国立魔法学校に小さなくしゃみが放たれた。


「……ふぅ、嫌ですわ。風邪でしょうか?」


それは、見事なツイストがかかった紫色のロングヘアお嬢様のムースから。


「……」


鼻に手を当てるムースの隣で、彼女のルームメイトであるバニラは、水晶玉から飛び出したカードを無表情に見下ろしていた。


「……道端の、小石」



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