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学校日和2  作者: めろん
196/235

第196回 再現日和

 長くて短い夏休みが終わり、学生たちは再び学校に集まった。


「やーっと試験が終わったよー!」


「ホント、やァっと終わったぜェ!」


「うむ、終わったな」


蒸気をあげる汽車から降りて、解放感あふれる言葉を口にしたのはココアとポトフとプリン。


「あは、おつかれさま」


彼らの後で下車したミントは、そんな友人たちに労いの言葉をかける。


「テストどうだった?」


「それが聞いてよ過去問と形式変わりまくってたのー! まー、わりといけた気がするけどー!」


「そォそォ、俺の方もだいぶ変わってたんだぜェ? まァ、わりといけた気がするけど!」


「うむ。まあ、あんなところだろう」


と、試験の話題を継続しながらも、自分はこの国を優雅にぐるーっと旅行してましたなミントは、ちょっとした罪悪感を覚えなくもないような気がしていた。


「って、あれー? プリンも試験受けてたのー?」


「うむ。入社試験」


だって、街のお花屋さんに試験なんてないんだもん。


「はェ? 御曹司サマでも試験受けるのかァ?」


「そんなこと関係ない。アラモード社は完全に実力至上主義だ」


でもお土産買ってきちゃったなぁ、と、会話を右から左に受け流しながら微妙な葛藤を繰り広げるミント。


「へー、大変だねー?」


「む? そうか?」


「あの超有名会社だぞおまえ倍率とか絶対知ってねェだろ」


こんなことならお土産なんて買うんじゃなかった。


「で、ミントは休み中何してたのー?」


「へ? あ、ああ、オレはりょこ――……」


が、急に話を振られたミントは、思わず素直に答えてしまった。


「「旅行っ?」」


きらきらきら


「……、うん。旅行」


お土産は、買ってきて正解だったようだ。


「ココアにはこれ」


「わ、フラワンド名産花ココアー!」


「プリンにはこれ」


「む、エンシエン名産都プリン!」


「ポトフにはこれ」


「おお! 鹿……、の……ぬいぐるみ?」


 なんとも手っ取り早く思い付くようなミントからのお土産に、素直に瞳を輝かせてお礼を述べるココアとプリン。


「ただの鹿じゃないよ。フェノリリル名産のリッカジカだよ」


「リッカジカ!? 余計になんでぬいぐるみなんだミントォ?!」


「だって鹿肉だと腐っちゃうじゃん」


「なまものの欠点!?」


それにブランド肉だから高いし、としれっと応えるミントに、鹿のぬいぐるみを片手にショックを受けるポトフ。


「それにしても、毎回この森を通ってるとなんか慣れちゃったねー」


「ね。魔物もなんか一年の時のヤツとか見ると懐かしい感じがするよね」


 ……、いやでもなんかちょっと可愛いぞ? と、微妙に気に入り始めたポトフをよそに、ミントたちは懐かしい思いに浸り始めた。


「うむ。確か最初はミント、スライムに怯えてたな」


「そ! それは仕方ないじゃんかっ!」


「あはは! かなりびびってたし、なんかもう泣きそうだったもんねー?」


「うむ。僕はそんなミントにびびったぞ」


「う、うっさいな〜」


面白そうに笑うプリンとココアに、若干顔を赤くしてむくれるミント。


「あの時はまだ魔法が使えなかったの! まったく、もうスライムなんか怖くも何ともないんだか」


ぼよん


「ら?」


ぷりぷり怒って歩いていくと、ミントは、何かぼよんとしたものにぶつかった。


「……あら?」


見上げると、そこには立派なスライムが。


「……ふむ、噂をすれば」


「ね、立派なスライムだねー」


「水色ぷるぷるだなァ」


その存在に気付いた友人三人も、そのスライムを見上げる。


「……」


「……」


「……」


「……」


「「……」」


そう、見上げる。


「でかくない?」


「でかいな」


「でかいねー?」


「でっけェ」


ごくごく平凡な感想。

見上げた先のでかいスライムは、目はないのだが、もの言わずに見下ろしている感じがする。


ぴょん


ドシーン!!


後、ジャンプ。

着地の音や振動からして、ぴょん、とか可愛い表現はまるで似合っていない。


「ミント」


「ミントー」


「ミントォ」


そんなスライムから目を逸らし、プリンとココアとポトフは、先ほど大口を叩いたミントに焦点を合わせた。


「ごめん。怖い」


前言撤回。


「うわああああああ?!」


「あは、一年の時と同じだねー?」


「うむ。あの時のミントと同じだ」


「むゥ……仲間外れ……」


今にも泣きそうな表情で逃げ回るミントと、それをほのぼのと眺めるココアとプリンと、諸事情により話題に入れないポトフであった。

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