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学校日和2  作者: めろん
194/235

第194回 団欒日和

 虫たちが涼しげに鳴く山奥の静かな街。

その街にある旅館を兼ねた家で、早めの朝食をとる家族がいた。


「けーたい?」


と、彼、ココアパパは見慣れない機械を見て疑問符を浮かべた。


「そー、ケータイ。これはまだ試作品なんだけどー、携帯できる電話なんだってー」


それにこくりと頷いたココアは、


「なんか、通信魔法のテレパシーの原理を応用して、この中に入ってる電池式の魔石の魔力がもつまで相手と通話ができるとかなんとかー?」


確かそんなこと言ってたなとか思いながら、ケータイを説明した。


「へえ、便利なものを作るね、プリンくんは」


すごいなと素直に感心するココアパパと、


「あらあら、プリンくんって、あのかわいい子?」


以前旅館に泊まっていた水色の髪の男の子を思い出しながら言うココアママと、


「ははは、そのプリンくんが作ったものを、どうしてココアが持ってるのかなー?」


"くん"イコール男ということで敵意むき出しのココア兄。


「いや、フツーに使えるかどうか試してみてって。これがどこまで通じるか、夏休み中に試してほしいみたいよー?」


それに対して、ココアはさらりと答えてみせる。

ここ、フェノリリルは大陸の端の方に位置する街。


「でもすごいよねー。聞いただけで本当に作っちゃうなんて、さすが魔科学者目指してるって言うかー」


ゆえに合点がいったのか敵意が弱まったココア兄の隣で、以前アオイのそのままな説明を聞いただけでこれを完成させたプリンに感心するココア。

ちなみに、彼女の兄は、彼女の彼氏が大陸の反対側の端の方に位置する街に住んでいることは知らないようだ。


「目指してるって言えば、ココアちゃんもこの夏に試験を受けるんでしょう?」


 すると、ココアママがにこやかにそう切り出した。


「うん、だから今年はあんまり手伝えなくなっちゃうけどー」


試験とは、看護学校に行くためのもの。

魔法学校卒業後の彼女の進路である。


「気にするなココア。お兄ちゃんは精一杯応援するぞ!」


「うん、別にしなくていいよー?」


「え」


「邪魔だから」


重度のシスコンである兄の激励を、ココアはすっぱりざっくり断った。


(反抗期?!)


可愛くて仕方ない妹に突き放されて、お兄ちゃんはぐさりときた後に落ち込みだした。


「そうだね、第一志望があの有名なアクリウムだからね」


「そうね、しょーちゃんは邪魔ね」


相変わらず穏やかなココアパパと、にこやかに追撃するココアママ。


「うん! 目指すはアクリウムだよー」


更に落ち込んだ兄をよそに意気込むココア。

アクリウムと言えば、この国一の医療の街。


「でも、ここからアクリウムに通うとなると大変ねぇ?」


ついでに、ここ、フェノリリルから一番離れた街。


「て、ちょっともーママったら。そーゆー心配は試験に受かってからにしてよねー?」


「ははは、気が早いなぁママは」


そして、


「あ! そう言えば、ポトフくんはアクリウムに住んでるのよね?」


フラント家が在住している街。


「……」


「……」


 オカン、そんなことを言ってしまったら、と動きが止まるココアとココアパパ。


「……え?」


彼らの予想通りに、落ち込んだ兄がぴくりと反応する。


「まあまあ! だったら、そこから通わせて貰えばいいんじゃないかしら?」


素敵素敵、と、楽しげに言うココアママ。


「……」


「……」


「……」


オカン、そんなこと言ってしまったら。


「って、えええー?! ななな何言ってるのよママー!?」


「そうだ! そんなの絶対駄目だぞ母さん?!」


そんな父の予想通りに、桃色兄妹は騒ぎだした。


「あら、どうして? いい考えだと思うのだけど?」


「何言ってるんだ、あんなケダモノと同棲なんて」


「相談してみるー!!」


「て、乗り気いいい?!」


首を傾げた母に食って掛かる途中できりりと言った妹に思わず突っ込みを入れる兄。


「ちょ、駄目だろマイシスタよりによってあんなケダモノと一緒に住むなんて」


「うふふ、プリンくんのけーたいの使いどきね! アクリウムはちょうどここから一番遠い街だし、試すにはもってこいだわ!」


「いやだから何を煽ってるんだと言うか母さんは一度引っ込んで」


「う、うん! ありがとープリンー!!」


「いやいやいやだからなんで乗り気なんだって言うか一度冷静になるんだマイシス」


「番号分かる?」


「うん、……でも電話で話したことないからなんかドキドキするよー!」


「分かるわその気持ち! ママも、固定電話だったけど、パパに初めて電話した時にね」


「って、聞いてーーー?!」


兄の突っ込みは完全に無視されたなかで進む母と娘の会話を、


「あ、茶柱」


のほほんと和みながら聞く父であった。


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