第183回 青春日和
春めく陽気のなか、やわらかな風に乗って桜の花弁がひらひらと舞うグラウンド。
靴ひもをしっかりと結び、そこに立った彼の顔は、
「……ぷえ……」
超嫌そう。
「……本当にやるの?」
校庭に出て三秒後、早くも帰りたくなったプリンが尋ねると、
「「当然」」
彼の隣に立つ友人、ミントとポトフがばっちりと頷いた。
「体力は基本だよ! それにキミ、学力は学年最上位なのに体力は学年最下位なんだよ?」
「そォそォ。負けっぱなしで悔しくねェのかよ?」
頭はトップで体はドベだったプリンに、ミントとポトフが訴える。
「うむ。別にいい」
別にハナからトップなど狙っていないと、プリンは頷きながら即答した。
「いくないの!」
が、否定された。
「もうすぐ体力テストでしょう?」
「うむ」
「お前また学年最下位に成り下がる気かよ?!」
「うむ」
「いやいやいやそこは否定しようよ!?」
「む? だって」
とりわけプライドがあるわけでもないプリンは、そんな二人に正論を突き付けた。
「僕、握力以外は開始十秒で疲れるんだぞ?」
開き直りの風格。
「っだから、それを改善する為に特訓しに来たんじゃんか!」
「ぷゆう!」
無意味に威厳のある彼にビシィッとキレのあるツッコミチョップをお見舞いした後、
「まずは走り込みだよ! ほら、ここに立って」
彼をスタートラインに立たせ、呼び出した箒を振り上げた。
「付き合ってやるんだからありがたく思えよ?」
「む、お前も走るのか?」
トントンと爪先で地面を叩きながら言ったポトフに首を傾げるプリン。
「そ。速い人と走った方が速くなるってよく言うでしょ?」
彼の疑問に答えたあとで、ミントは勢い良く箒を振り下ろした。
「よーい、どんっ!」
走り込み、スタート。
「……」
走り出した二人を見て、何も言えなくなるミント。
擬声語で現状を表すと、どぴゅーん、と、ぱたぱた。
「んっだそのちょっとした所要を思い出して室内を小走りするときみたいな走り方はァァァ!?」
「ぴわあ?!」
トラックを一周回ってプリンに易々と追い付いたポトフは、両手で彼を押し始めた。
「ば、馬鹿か貴様は! 四百メートルもあるんだからペース配分というものが」
「四百メートルしかねェだろって言うか俺はとっくに超えてるぞって言うかペース配分とか明らか必要ねェだろォ!?」
「何を言うか、四百メートルだぞ?! センチになおすと四万センチメートルでミリになおすと四十万ミリメートルでマイクロになおすと四億マイクロメートルでナノになおすと四千億」
「お前の歩幅はナノ単位かァァァァァ!?」
などと言い合いながらも、押されていることによってプリンの足はその分速くなる。
「ぷ、わっ?!」
が、分不相応な足の動かし方は、破滅を呼ぶだけであって。
「ぴわあ!」
「うおわァ?!」
ズザザザザアッッッ!!
足がもつれた彼は、ポトフを巻き込んで盛大にずっこけた。
「……うん。差がありすぎたね」
速い人と一緒に走ると言っても、体力面でも学年トップな彼と走らせるのはと、ようやく無理に気付いたミントであった。
「気を取り直して、じゃあ一回走ってみようか?」
回復魔法のありがたみを身をもって体験したプリンに、ゴール地点に立ったミントはそう言った。
「あれったけの距離を走ったくらいでウォーミングアップになるとは思えねェけど」
「ぷう……は……」
「そうでもねェみたいだからやってみっか」
トラックを半周もしていないプリンの息が若干あがっていることに気付いたポトフは、取り敢えず右手をスタートフラッグの代わりにした。
「はい、スタートォ」
ゆるい掛け声に、プリンは枕を抱えたまま走りだす。
ピッ
結果、
「わっは〜、単純計算してポトフが二回ゴールできるね」
ポトフが行って帰って行った分。
「お前、ちゃんと本気で」
「ぴわ……ぷう……っ」
「……やってるんだな?」
呆れたように言い掛けた途中で、ポトフは彼が本気だったことに気付く。
「たく、今までどんな生活送ってたんだか」
「まあ、歩き以外は瞬間移動だし」
「まったくもって魔力の無駄遣いだよな」
「そだねぇ。魔力が高いからいいものの、テレポートは普通一回使ったらすっからかんになる消費量なんでしょ?」
そう言いながら、
ガシッ
「ふっ……、ぷゆ?」
ミントとポトフは、プリンの両腕をしっかりと掴んだ。
「「特訓あるのみ」」
「!? ま、まだやるのか?!」
「「特訓あるのみ」」
大事なことだから、二回。
「っヤー!!」
そういうわけで、グラウンドをひたすら走り続ける三人を見て、
「青春じゃあ……!!」
体育担当のエル先生は、感動の涙を流していた。
今年の体力テストのプリンの成績がちょっぴりアップしたのは、特訓のおかげかエル先生の好感度アップなおかげなのかは定かではない。
更新不定期誠に申し訳ございません……っ!
どうやらかなりのスランプらしく思うように書けません
よって今回もかなり微妙な話に……
まだまだ抜け出せていませんゆえ、今後も気長に待っていただけると嬉しいです……!!




