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学校日和2  作者: めろん
181/235

第181回 お出掛日和

 庭で謎の特訓をしているシルクハット紳士とピエロ少女とそのペットに留守を任せ、


「えっと、タマネギにニンジンにジャガイモに……」


財布を持って家を出たミントは、買う予定のものを指折りしながら商店街へと向かった。


「あ。あと、確か洗剤と歯磨き粉がなかったよなぁ」


完全に主夫化した彼は、数あるなかで一番安いと経験で学んだスーパーに入ると、早速お目当ての物を買い物カゴに入れはじめた。


「……」


一通り必要なものをカゴに入れ、ついでにコーラをおまけしたミントははたと立ち止まった。


「……? 何か忘れてるような……?」


余計なものはコーラ以外入っていないカゴ。

それをじーっと眺めてしばらく思考。


「あ、タマゴか!」


ピコンと思い出したミントが顔を上げると、


「ほへ?」


タマゴが、振り向いた。


「……」


「……」


「「……」」


もちろん、タマゴ違い。


「って、タマゴ?!」


「おお。久しぶりやな、ミント」


キャラメルブラウンのクセっ毛と緑の瞳のソバカス少年、タマゴを発見し、


「え、タマゴってシャイアに住んでたの?」


驚いたミントは質問を投げ掛けた。


「いや、観光に来てこないな生活必需品は買わへんやろ?」


すると、ご尤な答えが返ってきた。


「え、じゃあもしかしてサラダも?」


「……。まぁせやけど、そんないっしょくたにせんといてもらいたいわ」


まるでサラダとセットが当たり前のような感じに聞こえたのか、若干不満そうなタマゴ。


「あ、ごめん。でも、へえそうだったんだぁ」


シャイアは広いことを改めて実感しているミント。

生まれてからずっとここに住んでいるのに、彼らが同じ街に住んでいることを知らなかったなんて。


「まあ、ワイらは知ってたけどな?」


そんな彼に、


「自分、その頭でめちゃくちゃ有名なんやで?」


タマゴは、矢印的な何かをぶっ刺した。


「それに、学校よくサボってたやろ?」


「……え? タマゴって、イースト校生だったの?」


 心に傷を負いながらも、ミントは驚きに目を見開いた。

イースト校、その名の通りシャイアの東に位置する学校は、ミントにとっては苦々しい思い出の場所。


「ちゃうちゃう。ワイはサウス校生や」


それを首を横に振って否定したタマゴ。

どうやら東区ではなく南区に住んでいるらしい彼は、


「自分がシャイアの外によくひとりで出てってたのを見たんや」


平日にもな、と付け加えて口を閉じた。

南区には駅があり、更には城壁で囲まれた街の通常の出口となる門がある。


「ああ、なるほど」


そこを通って街外れの花壇に通っていたミントはなるほど納得。


「学校にも行かんと……よく国立魔法学校に入れたな?」


そんな彼をしみじみと眺めながら、タマゴは続ける。

それもその筈。

国立魔法学校に入学する為には、入学試験に合格しなければならないから。

しかもその上、実はセイクリッド魔法学校はこの国においてトップクラス。


「え? ああ……なんて言うか、すごい家庭教師さんがついてたからさ」


引きつった笑みを浮かべながら言うミント。

すごい家庭教師とは、夜な夜な城を抜け出す常習犯、ルクレツィア=シャイアルク。


「なるほどなぁ」


「う、うん。そうそう」


 流石に国王様に勉強を見てもらっていたなんて言えない彼は、納得してくれたタマゴに感謝しつつ、


「あ、そう言えばさ」


早急に話題を変えることにした。


「シャイアに住んでるのにどうしてお国喋りなの?」


自然に、自然に。


「ん? ああ、これな。おとんの影響やねん」


狙い通り、自然に話題を変えることに成功した。










 会計を済ませた後、魔法で家に荷物を移動させたミントは、


「ここや」


タマゴのご自宅にお邪魔することに。


「わは〜……」


「あ、せや」


「ん?」


綺麗なお住まいに感心していたミントは、


「家に入る前に、花粉叩き落としてな?」


と、言われたので、パタパタと服を叩く。

誰か花粉症なのかな、と、少なくともマスクをして外出していないタマゴ以外の人物を予想。

その間にドアを開けたタマゴは、


「ただい」


「おっそい!!」


バリバリバリィィィ!!


電撃で、ぶっ飛ばされた。


ズザザザザアッッッ!!


後、地面と激しくご対面。



「て、タマゴおおお?!」


何事かと思いつつ、ぶっ飛んだタマゴのもとにミントが駆け寄ると、


「鼻炎の薬とティッシュペーパー買ってくるのにどんだけかかってるの?!」


家の中から、ポリー先生が現れた。


「?!」


現れたポリー先生に、ミントはびっくり。


「お、おかん、ごめ……」


「!?」


タマゴのおかん発言に、ミントは更にびっくり。


「おお、タマゴ。帰ったか」


「?!」


一汗流して帰ってきたエル先生に、ミントは更に更にびっくり。


「……て、ミントさん?」


「おお。なんや、ブライトもおんのか」


どうやらこの世界は、夫婦で同じ学校の教師を勤められるらしい。


「ええええええええ?!」


タマゴの傷に、響く声。


「ちょ、ええ?! や、セル先生とクー先生もそうだけど、夫婦で、って言うかベル先生とフェイ先生とチロルもそうだけど、家族で同じ学校行ってていいんですか!?」


が、アウトオブ眼中。

ミントは長い突っ込み質問を投下した。


「ええんちゃう?」


「ってめちゃくちゃ軽いです?!」


回答は、エル先生のお国喋り。


「……まあ、学校では一応"せんせ"言うとるしな」


「いやまあ確かにそうだけどさ!?」


補足は、それに影響されたタマゴ。


「それに、バレなきゃいいことです」


「いや、今めちゃくちゃばれてるんですが?!」


ついでに、ピノキ花粉症のポリー先生。


「ああ、では」


スチャ


「忘れていただきましょうか」


ポリー先生は、両手にトンファーを装備した。


「い、いやぁ、先生が生徒に」


「いえ、今は主婦ですし」


「や、オフだとしても生徒に手を挙げるのは問題が」


「いえ、問題ありません」


「いやいやいや、何をおっしゃって」


ミントの発言を再三遮り、


「どうせ忘れるんですから」


ポリー先生は、地を蹴った。


「い、やあああああ?!」


脱兎のごとく逃げ出したミントと、それを追う狩人、ポリー先生。

そんな二人を見送りながら、


「おかん、花粉症と違うの?」


「今日は"非常に多い"って言うてたのにな」


お国喋りの二人は、のんきにそんな会話をするのであった。

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