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学校日和2  作者: めろん
180/235

第180回 花屋日和

 王都市、シャイアの大通り。

様々な店が立ち並ぶその中に、小さな花屋が建っていた。


『ジェラァ♪』


「そう言えばさ」


その店のカウンターにて咲き誇っている、植物とも動物とも形容し難いマッドプラントを撫でながら、


「この前、チロルと何か話してたの?」


お手伝いのミントは、ふとそんな疑問を口にした。


「んぼ?」


「どんな反応ボイスさそれは?」


すると、この店の主にして彼の母親、ジャンヌが振り向いてこう言った。


「何唐突に一週間以上も前のこと聞いてんのよ?」


「や、それは諸事情があるからでしょうよ」


裏事情にさりげなく触れるミント。


「んー、そうね。話してたっちゃあ話してたけど」


並べられた花々を綺麗に整えながら、


「あやつ、求婚しにきたみたいだのぅ」


ジャンヌはさらりとそう言った。


「? 球根?」


「チューリップじゃないわよ?」


「え?! もしかしてマッドウィンプスベルゼモーネの!?」


「あんた随分とマニアックな植物知ってるわね?」


疑問符を浮かべた次には目を輝かせて思わず立ち上がった息子に、ジャンヌは珍しく突っ込んだ。


「球根じゃなくて求婚。あんたを嫁にくださいって」


「いや、そこ嫁じゃなくて婿じゃない?」


「ああ、そうね婿だわね」


なんて、普通に訂正をしたのも束の間。


「って、求婚?!」


やっと本題に突っ込みを入れたミントは、


「は? え? な、何がどうなってそんな話になるのさ?!」


あたふたしながら疑問文を重ねた。


「カエルが輪になって」


「うわめっちゃ仲良し?! っていやいやそうじゃないしカエル関係ないし意味分かんないし!?」


ケロリと答えた母親に突っ込みを続けるミント。


「まあ、あれよ。海草よ」


「海草って、ノリって言えばいいじゃんかもう分かりにくいなぁ!」


「回想よ」


「"うまいこと言った"って顔で言ったぁ?!」


≫≫≫


「そう……あんさんが愚息を婿にしたいってのは分かったわ」


 コトリ、と湯呑みをテーブルに置いたジャンヌは、その眼鏡をきらりと光らせた。


(え、オレ、なんでそんな話になったのかを聞いたんだけど。って言うか愚息って言ったよ愚息って)


聞きながら、頭で突っ込みを入れているミントはほっといて、


「でもね。あのすっとこどっこいが、どんなにすっとことっこ、ぴょーんのぽんぽんぽーんでも、おまいさんが嫌っていた男には一応変わりないことは、ゆめゆめ忘れるでないぞよ?」


回想ジャンヌは言葉を続けた。


「は……はい、分かってます……?」


ミントが男だと言うことは分かっているが、彼女の発言のせいで疑問符を付加するチロル。


「こないだも、あいつのベッドの下で発見したのよ」


「え?!」


やれやれとため息をついたジャンヌの言葉に、チロルは思わずびっくり仰天。


「あ……や、そ、そうですよね、ミントきゅんももう大人――……」


予想外のことに動揺しながらも、さも当たり前のようにチロルは振る舞おうとした。


「カブトムシが」


「って、めちゃくちゃ少年みたいな?!」


が、無駄だった。


≫≫≫


「あのさ、なんでそんな小話を今したの?」


 ご尤な疑問を投げ掛けたミントは、


「んん、いい質問だわね、ゴキ三つ!!」


「何その全然嬉しくない評価?」


ジャンヌにグッと親指を立てられた。


「あんたの部屋にカブトムシがいたのよカブトムシ! ゴキじゃなくてよりによってカブトムシが!」


「なんでカブトムシより、しかもよりによってゴキを希望してるのさ?」


「時期的におかしいでしょ?」


「と思ったら、おお、まともな疑問」


「思わず食べちゃったわよ!!」


「と思ったら、食べ……」


ちょっと待て。


「……」


「……」


「「……」」


沈黙。


「……美味しかった?」


取り敢えず、聞いてみた。


「夏の思い出の味がしたわ!」


取り敢えず、答えてみた。


「……」


「……」


「「……」」


夏の思い出の味?


カランコローン♪


「あ、いらっしゃいませー」


『ジェラジェラァ♪』


気にしたら負けだ、って言うか気にしたら気持ち悪いと思ってミントは、ちょうど入ってきたお客さんをいいことに、カブトムシから離れようと必死に努めるのであった。

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