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学校日和2  作者: めろん
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第18回 びっくり日和

 真っ黒な蒸気機関車から降りた少年の灰色の瞳に、森の先にある城のような建物が映った。


「……わあ、あれが国立魔法学校?」


『む〜』


彼の短めの銀髪の上に乗った、淡い紫色の犬のぬいぐるみのような魔物、むぅちゃんが鳴くと、


「じゃあ、まず、この森を抜けなきゃね」


少年は、くすりと笑って歩き出した。












 薬草学の授業中。

生徒たちは、羽が葉っぱになっている蝶々の捕獲を命ぜられ、森に入っていた。


「……で、ココアと仲直り成功、と?」


森の中を歩きながらミントが聞くと、


「おう!」


虫取網を担いだポトフはにっこりと笑って元気に頷いた。


「詰まんないね、プリン」


「詰まらないな、ミント」


「え!? 面白さを求められてた?!」


本当に詰まらなそうに詰まらないと言ったミントとプリンと、そんなことを言われてもと困るポトフ。


「……あ、もしかして焼き餅かァ、ミントォ?」


しかし、ポジティブな考えに到ったポトフは、ミントを後ろからぎゅっと抱き締めた。


「うん。プリンがね」


彼の腕の中で、ミントは表情一つ変えずに言った。


「なっ!? ミント?!」


まさかのとばっちりに驚いたプリンは、虫籠を肩に下げている。


「ま、枕……」


無意識にミントを離して、びっくり顔でプリンを見るポトフ。


「き、貴様もその気になるな!!」


バシーン!!


「ぐっは!?」


そんな彼の顔面に、プリンは突っ込みも兼ねて、抱えていた枕を右から叩き付けた。


「っテメェ、俺の顔に何すんだ?!」


打たれた所を右手で押さえながらポトフが怒鳴ると、


「何されたのかも分からないのか馬鹿!!」


彼に負けじと怒鳴り返すプリン。


「バッ?! テメェ、喧嘩売ってんのか!?」


「今なら無料サービス中だ!!」


「おっしゃ買ったァ!!」


そうして、プリンとポトフは虫取網と虫籠を投げ出して、ドカンバコンと喧嘩をし始めた。


「……も〜、汚れちゃうじゃん」


問題はそこなのか。

ミントは溜め息交じりに虫取網と虫籠を拾い上げた。


「う〜ん、羽が葉っぱになっている蝶々なんて、何処にいるんだろ?」


背後で行われている白熱した喧嘩を完全にシャットアウトし、授業に専念するミント。


ガサガサ


「ん?」


 辺りをきょろきょろと見回していると、ミントは前方の暗がりから何者かの気配を感じ取った。


「この感じは……魔物!」


そう呟いた後、ミントは薔薇の鞭を出現させて、それを素早く暗がりへと走らせた。


バチィン


次いで聞こえてくる、薔薇の鞭が何か硬いものに当たった音。


「! 弾かれた……!」


直感で分かるのか、ミントは薔薇の鞭を一旦手元に引き戻した。

それを頭上で振り回し、勢いをつける。


「――乱れ咲け!! "蓮華(レンゲ)"!!」


そして再び暗がりへと走らせ、四方八方から攻撃を畳み掛けた。


ガガガガガガガガガッ!!


くんっ


「! うっそ―…」


それがすべて弾かれてしまった上に、鞭が掴まれたと分かったミントがそう口にした直後、


ぐんっ!!


「うわあ?!」


ミントは暗がりへと勢いよく引っ張られた。


「「! ミント?!」」


それに気が付いたズタボロのプリンとポトフは、慌てて彼を追った。













「わあああああああ!?」


 まるで釣られたように暗がりへ思い切り引っ張られたミントは、綺麗な放物線を描き、


ゴッ


太い木の幹に突っ込み、鈍い音を立てて撃沈した。


「ええ!? 人?!」


その近くには、右手に銀色に輝く剣を持ち、左手には薔薇の鞭の先端をしっかりと握っている少年がいた。


『む〜!』


彼の足元には、まるっこい魔物、むぅちゃんがいる。


「だ、大丈夫ですか!?」


少年は剣と薔薇の鞭を持ったまま、ミントの元に駆け寄った。


「……ふえら〜……」


それまで頭上にくるくるとお星様が回っていたミントは、


「はっ! 魔物!」


と言って、ガバッと起き上がった。


『む〜』


そして、彼の視界の真ん中に、ばっちりとむぅちゃんが映った。


「あ、魔物……って、むぅちゃん?! ごっ、ごめんね!? 怪我はない?!」


自分が今までむぅちゃんのことを攻撃していたのだと気が付き、慌てて謝るミント。


『むぅ』


そんな彼に、こくりと頷いてみせるむぅちゃん。


「あ、そだよね。オレの攻撃は全部弾かれたんだし。って、弾かれたあ?!」


自分の発言にハッとなったミントは、恐る恐る次の言葉を紡いだ。


「……って……ことは……オレ……むぅちゃんに……負けた……?!」


そして、


「…………うわーん!!」


「わ!?」


そのことが余程悔しかったのか、ミントは隣にいた少年に泣き付いた。


(……ん? 泣き付いた?)


一時冷静になるミント。


「ご! ごめんなさい!」


知らない人に泣き付いてしまったことに気付いたミントは、慌てて離れて深々と頭を下げて謝罪した。


「あ、いいえ。僕の方こそごめんなさい」


すると、少年は頭を下げ、


「その……まさか人が釣れるとは思わなくて……」


と、申し訳なさそうに言った。


「え? あ、いやいや。誰だって暴れ回ってる薔薇を引っ張ったら人が釣れるなんて思わな――え?」


自分の発言の途中で、ミントはまたしても疑問符を浮かべた。


「え、ええ!? ってことは、キミが?!」


ミントが驚いた顔を少年に向けると、


「はい。ごめんなさい」


少年は再び深々と頭を下げて謝った。


「いやいや、オレの方こそごめん……えっと?」


彼の頭を上げさせる為のミントの発言が途中で止まったので、


「あ、僕はアオイ。"ヒュウガ アオイ"です」


少年は頭を上げてアオイと名乗った。


「あ!」


そして何かを思い出したように、剣を背負っている鞘に収め、その手でポケットからハンカチを取り出すアオイ。


「はい、どうぞ」


そしてふわりと微笑み、それをミントに差し出した。


「あ。……ありがとう、アオイ。……えっと、オレはミント。ミント=ブライトだよ」


自分が先程泣いたことを思い出し、恥ずかしいと思いながらハンカチを受け取ってお礼を言うミント。


「いいえ。どういたしまして、ミントさん」


すると、アオイはくすりと微笑んだ。

その微笑みは、ポトフに見られたら危険。


「プリティプリティイイィ!!」


ガバーッ!!


「わあ!?」


見られちゃった……。

プリティ(超)プリティ(可愛らしい)と叫びながら、ポトフはアオイをガバーッと抱き締めた。


「やめろ変質者」


そんなポトフは、プリンの枕によって思い切り吹っ飛ばされた。


バシーン!!


「変質者?!」


変態と言われるよりも、変質者と言われた方がなんとなく傷付いたポトフであった。

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