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学校日和2  作者: めろん
176/235

第176回 形無し日和

 お休みの日に、異世界のお友達と遊びに来たのは遊園地。


「……ぷゆ……」


「だ、大丈夫っ? 何か飲むっ?」


初めてのジェットコースターに乗って見事に酔ったプリンを介抱するアオイから少し離れたところで、


「〜っ! もういいわよ行こう、リン、ココア!!」


「ふえ?! わ、私ー?」


「う、ウララ、速い、ですっ」


何やらカチンと頭に来たウララが、ココアとリンを連れて人混みの中へと消えていった。


「あーあ」


「うららん」


「怒っちゃったぜェ?」


 彼女たちを見送ったミントと死神とポトフが向けた視線の先は、


「……。知るか」


ぷいっとそっぽを向いた、ユウ。


「もう、そんな子どもみたいにって二本食い?! きゅうりをまさかの二本食い!?」


「おお、ゆうこりん贅沢だな。もふもふ」


「そしてこっちはチュロス五本食い?!」


知らんぷりしてきゅうりを二本食いし始めたユウと、それに対抗してチュロスを五本食いし始めた死神に突っ込みを入れるミントはほっといて、


「なんでそんな素直じゃねェかなァ?」


呆れたもんだと、かなり説得力がないポトフが溜め息をついた。


「フッフッフッ。五連メイプルだ」


「あっまぁ?! 糖分取りすぎなのは気のせいなんかじゃないよ!?」


 メイプルな甘ったるいにおいが漂う中で、


「お前、そんなんじゃ一生伝わらねェぞ?」


ポトフはさらりとそう言った。


「みんとん、あのキャラメルポップコーン欲しい」


「だから糖分取りすぎだし更に塩分と脂肪分足す気なのかよって言うかこっちが気持ち悪くなるからやめようよ?!」


「えー? じゃあコーラ」


「なら許す!」


死神とミントの会話と平行して、確かに聞こえたその言葉に、


「――?!」


ユウは、目を見開いた。


ボフッ


後、真っ赤っか。


「なっ、ななな、何言ってっ!?」


プラス、噛み噛み。


「……」


「……」


「……」


その様に、彼は野郎三人からの注目を浴びた。


「……? 食後の虎の前足と口の周りのように顔が真っ赤だが、ゆうこりん、お熱?」


と、小首を傾げたのは、遊園地で大鎌を担いでいる死神。


「もうちょいまともな例えが見付からなかったの? 甘党らしくイチゴジャムとかさ」


と、突っ込みを入れたのは、絶叫マシーンに乗る前に帽子を取ることを断固拒否したミント。


「お熱はお熱でも、ウララちゃんにな」


と、さらりと言ってくれたのは、鹿の着ぐるみを見てお腹を鳴らしたポトフ。


「……」


「……」


「……」


「……」


間。


「ッ、だから違っ」


「おお、だからゆうこりんはうららんのチョコレートだけくれなかったのか」


「ち、違」


「へぇ、超分かりやすいねゆうこりん」


「違」


「認めろよゆうこりん」


「ち――って言うか"ゆうこりん"言うな!!」


思わず本来の話題と違うところを否定しちゃったゆうこりん。


「あのなァ?」


はふう、と再び溜め息をついたポトフは、


「お前がウララちゃん大好きなのは、見てれば誰でも分かるってェの」


「ウララと、あとワタル以外ね」


ぴっとユウを指差してそう言い放ち、ミントが軽く補足した。


「ん? オレ様、2―ブチン?」


「なんでそこで化学の世界へようこそ?」


「フッフッフッ。意味はない」


ニブチンで分かりにくいボケをかました死神と、とことん突っ込むミントはやっぱりほっといて、


「な、何?! 何故分かる――って、あ!?」


うっかり認めてしまったユウ。


「……。ま、こォゆう理由なんだろォけどな。好きなら好きって自分から伝えろよ」


クールのかけらもない今の彼に、ポトフはズビシッと言い放った。


「男だろ」


お節介は、承知の上。


「――!」


その言葉は、どうやらちゃんとユウに届いたようだ。


「遊園地なら、ベタに観覧車でとかどうー?」


「「!」」


 そこへ、いつの間にか戻ってきていたココアが提案した。


「それはいい、ですね。ウララ、ベタに弱い、です」


それにリンが同意すると、


「ちょっ、ココア、リン? 何よ忘れ物って?」


彼女たちに遅れて、ウララがその場所に戻ってきた。


「観覧車ね」


「観覧車か」


「観覧車な」


そう、ミントと死神とポトフに文字通り背中を押されたユウは、


「っ……い、行くぞっ!」


「へ? ちょっ、な、何するのよ?!」


素直にウララを観覧車まで引っ張っていった。


「おおー、ゆうこりんガンバ」


「ちゃんと告白しろよォ」


「真っ赤っかの噛み噛みだけどね」


「うまくいけばいいねー」


「はい、です」


 そんな二人を見送りながら応援している彼らのもとへ、


「……ぷゆぅ」


「あれ?」


だいぶ具合がよくなったプリンと、彼を看病していたアオイがやってきた。


「ユウとウララ、どこに行ったの?」


彼らとすれ違ったのか、皆に尋ねるアオイ。


「観覧車、です」


それに、リンが答えると、


「へぇ? 珍しいね?」


アオイは、ぱちぱちとまばたきをしてからこう言った。


「ユウ、高いところ苦手なのに」


高所恐怖症、判明。


「「え」」


――この後、ウララが気を失ったユウを引きずって帰ってきたそうな。

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