第175回 チョコ日和
雪が降り出しそうなどんよりとした曇り空。
授業が終わりいつものように食堂にやってくると、ミントはプレゼントを貰ったのであった。
「ありがと……て、チョコレートシロップ?」
プレゼントは、赤いリボンが巻かれたチョコレートシロップ。
「そう、チョコレートシロップ!」
ミントにそれをプレゼントしたのは、彼を彼の友人たちから無理矢理引き離し、プリンを居づらくした張本人、チロル。
ちなみに、何故居づらくなったかと言うと、
「今日はバレンタインデーでしょ?」
そんなわけで、ココアがそわそわしてポトフが威嚇しはじめたから。
よって現在プリンは寮で一人プリンを食べながらむくれ中。
「だからね、ミントきゅんがそのチョコをかけたものは、全部ミントきゅんのものになるのみたいな!」
相手がいないわけではないが別にムースが来ても残念ながら喜ばないであろう彼はほっといて、チロルはニコニコしながら言葉を続けた。
「例えば、このホットケーキとかあのコーヒーとかこのドリアとかそのお味噌汁とか」
オレはワタルか、とか思いながら、ミントはなんとなく嫌な予感。
「アタイとかっ♪」
的中。
「……あのねぇ」
パコッ
「――って」
ミントが苦く笑いながらコーラを手にした瞬間、彼の右手に握られたチョコレートシロップのフタが開けられ、
「ごくごく」
それをそのままひっくり返して直接飲み始めた人物が一人。
「……」
「……」
「ごくごくごくごく」
「「……」」
「ぷはあー」
完飲。
「って、ワタル?!」
効果音つきでチョコレートシロップを一気飲みした彼の名前を呼ぶと、
「フッフッフッ。ごち」
死神は、満足げに口を拭った。
「いや、"ごち"って」
しかし、彼女からのプレゼントを一気飲みされて、ミントはたまったものじゃないと怒り心頭、
「こんなことして、糖尿病になっちゃうよ?!」
かと思いきや、体の心配。
「フッフッフッ、今日はいい日だ。知らない人からもゆうこりんからもいっぱいチョコを貰ったしな」
チョコレート大好き死神にとって、バレンタインデーは特に素敵なイベント。
どうやら彼は、顔の整い加減からたくさんのチョコを貰えただけでなく、甘いの大嫌いゆうこりんからも、たくさん貰ったチョコをそのまま横流しされて残飯処理機のように貰っていたようだ。
「ますます糖尿病になっちゃうよ?!」
ゆえに、余計に心配される死神。
「フッフッフッ、心配するな。それより」
「いや、心配するって……て、それより?」
「みんとんチョコ持ってない?」
「もはや依存症!?」
まだまだチョコレートを欲している死神と、彼を本気で心配しながらも突っ込むミント。
「……そ、そんな……」
彼の手に握られた、空のチョコレートシロップの容器を見つめ、カタカタと震えていたチロルは、
「あ、アタイじゃなくて、コイツがミントきゅんのものになっちゃったみたいな〜〜〜!!」
と、叫んだ。
「「え?」」
と、疑問符を浮かべるミントと死神。
「「……」」
と、その他大勢。
「え、どしたのさ……?」
食堂の皆さんの目は、ミントが持つ空のチョコレートシロップの容器と、
「……。おお」
その下にいる死神に注がれた。
「オレ様、みんとんのものになっちゃったのか。……ぽ」
今日は、バレンタインデー。
「いやいや、何言ってんのさワタ」
ズザザザザアッッッッ!!
「ってちょっと待ってよ皆さん?!」
文字通りひかれるミント。
「や、何考えたか知りませんが絶対それ誤解で」
「ミントきゅんのバカあああああみたいなあああああ!!」
走り去るチロル。
「って、何涙散らしながら走り去ってんのさチロ」
「「ミント=ブライトてめぇよくもチロルちゃんをっ!!」」
「いや、だから誤解だってばって言うか皆さん何ヒソヒソ話して」
「フッフッフッ。みんとんあいらびゅー」
「て、だから話をややこしくするなあああああ!!」
ミントは今日も、突っ込みに忙しいのであった。
「ソラ」
「――っ!!」
ちなみに、バレンタインはフラント家にも。
「? 何そんなに汗かいてるの?」
「い、いやぁ、なんかヤバイ逃げろって僕の本能が」
冷や汗かきまくりなソラに、エリアは天使の微笑みを向けた。
「はい。ハッピーバレンタイン♪」
――今日はバレンタインデー。
「だから違うんだってばさあああああ!?」
「これはチョコこれはチョコこれはチョコこれはチョコ……っ!!」
想いを伝える、素敵な日。