第168回 薬草日和
後書きにお知らせがあります。
親切ながらも悪役らしい仕事をしっかりやっていった不思議仮面が消え去った後、
「脈も問題ねェし……呼吸も、正常だな」
倒れたミントの状態を確認したポトフは、ゆっくりと彼から離れた。
「「本当っ?!」」
「おォ」
彼の言葉に、ひとまずは胸を撫で下ろしたココアとプリンは、
「じゃ、なんでミントは倒れたのー?」
「ミントはなんの毒を飲まされたんだっ?」
再びポトフに質問した。
「そ、それは……」
と、そこで口ごもったポトフ。
「えええ、分からないのー?!」
「き、貴様医者志望だろうっ!?」
すると、ココアとプリンが再び慌てだした。
「っせェな、あくまでも志望だ! んな魔医学を二年習ったくらいで医者と同じことが出来てたまるか!」
「開き直るな馬鹿! ミントは毒を飲まされたんだぞ!? 薬草で解毒しようにもその原因が分からなければ出来ないだろう?!」
「だからその原因の原因が分からねェんだよ! 経口摂取した毒ってのはだいたいが生体内で消化されて反応が起こって初めて効果が出るもんだろ?! こんな飲んだ瞬間ぶっ倒れるよォな超速効性な毒は知らねェんだよ!」
「……。なら、毒を飲まされたわけではないのかもしれないな」
「だァら――……っへ?! あ、そっ、そォだな?」
ヒートアップした会話の中でプリンが急にクールダウンした為、ポトフは自分に急ブレーキをかけた。
「え? でも、不思議仮面は"毒を飲ませた"って言ってたよー?」
急ブレーキで前のめりになっているポトフをよそに、疑問符を浮かべるココア。
「ふむ……。飲ませなければならない毒で、消化吸収されるような毒でないとしたら……」
プリンは口元に手を当てて思考をめぐらせ、すぐに一つの答えに結び付けた。
「……惚れ薬――……」
と。
「えええ?! ちょっと待ってよあの声の低さと体型はどう考えたって男の人な上にたぶん歳も親並みに離れてるでしょー!?」
「お、おおおい、そしたらアレか?! もし課題がクリアできなかったらミントはあの不思議仮面に死ぬほどめろりんこなままなのかァ!?」
その予想だにしなかった単語に、ココアとポトフはサアッと顔を青くした。
「いやー?! そしたら本気で今後の友達付き合い考えちゃうよー!?」
「嫌だ! 俺はそんなミントなんか絶対に見たくねェ!!」
「――……に、似たようなもの?」
「「て、人騒がせ?!」」
ぴこっと小首を傾げたプリンに、ココアとポトフの突っ込みが綺麗に決まったところで、
「ミント、ミント」
おもむろにしゃがんだプリンは、倒れたまま動いていないミントを揺らしてみた。
「ミント、起きて」
((なんか新鮮……))
ミントを起こすプリンの図に、新鮮さを覚えるココアとポトフ。
「……」
しかし、ミントはまったく反応しない。
「……。………………………………めんどくさい」
「「!」」
と、思いきや、うっすらと目を開けた彼がボソッと一言そう呟いた。
「うむ。分かった」
それを聞いたプリンは立ち上がり、期待の眼差しを向けている二人の友人に向き直った。
「"めんどくさい薬"だ」
「「そのまんま?!」」
自信たっぷりにそう言った彼に、ココアとポトフは再び突っ込みをいれた。
「えいっ」
そんな突っ込みを華麗にスルーして、迷うことなく近くにあった薬草をぷちっとちぎったプリンは、
ぺちっ
と、ミントのおでこに薬草を載せた。
「……」
「……」
「……」
「……」
そのまま、数分の時が流れた。
「……。それ、効果あんのか?」
沈黙に負けたポトフが、それ以上は何をするでもなくミントをただじっと眺めているプリンに質問すると、
「……。かぶれた」
彼は、さらりとそう答えた。
「ってアホかァァァ?!」
「ぷわぁ!?」
直後、プリンはポトフによってサッカーボールのごとく蹴飛ばされた。
「ったく何無駄なことしてんだよ、トリート!」
ミントのおでこに出来たかゆそうな湿疹を治してあげるポトフ。
「もー、迷うことなく処方したからそれが薬だと思っちゃったじゃなーい!」
プリンはなんでも知ってるんだと感心して損したココア。
「まったくだぜ、あんななんの躊躇もなく!!」
彼女に続いて、ポトフが言うと、
「馬鹿か貴様は? 薬草は僕の専門外だ」
しれっとプリンが言い放った。
「じゃァなんで迷いなくこれをミントのおでこに載せたんだよ?!」
「なんとなく」
「ミント、ミントー!」
「ざっけんな!! 薬と毒は紙一重なんだぞテメェ何の為の天才設定だよホント使えねェな?!」
「ぼ、僕は天才じゃない! と言うか、設定ってなんだ!? しかも毒の種類も分からなかった医者志望の貴様にそんなこと言われたくない! 使えないのは貴様だろう?!」
「ミント、起きてよー!」
「だァらあくまでも志望だって言ってんだろォって言うか貴様貴様言うな!!」
「貴様ごときに"貴ぶ"と"様"をつけているんだ最高の敬称だろう!!」
「ミントー!」
「え、そっか」
「馬鹿か貴様は?!」
「ミントがいないとすぐ話題が逸れちゃうよー!」
そんなこんなで、ミントの解毒が済むのには、もうしばらくの時間を必要としたのであった。
皆様こんにちは。
学生の方はもう冬休みですね。
かくいう私も学生なのですが、ここで皆様にお知らせがあります。
大学の定期試験の一ヶ月前につき、勝手ながら試験終了まで休載させていただきます。
多少なりとも学校日和を楽しみにしてくださった方には本当に申し訳なく、その上、今年の夏に同じことをして読者様がごっそり減ってしまった現実があるので本当はこのようなことはしたくないのですが、ここは趣味と現実の差で……。
留年したくないんです(切実)
というわけでして、誠に申し訳ないのですが、休載させていただきますね。
もしも待っていてくださるのであれば、来年の二月には必ず……!
ではでは少し早いですが、よいお年をお迎えくださいませ!