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学校日和2  作者: めろん
158/235

第158回 平日日和

 枯葉が舞い始めた学校の校庭に、箒を持ってたたずんでいる少年が一人。


「……はぁ……」


さっさっと箒で枯葉を掃きながら、彼は小さく溜め息をついた。


「……アオイ、元気ない、です」


その様子を少し離れたところで見ていたリンが、ちりとりを持ち上げながら口を開くと、


「そうねぇ。いつもにましてボーッとしてるし、溜め息ばっかりついちゃって」


箒を持ったウララも彼を見た。


「……恋かしら?」


ガターンッ!!


直後、リンがちりとりを取り落とし、辺りに回収した落ち葉が散乱した。


「ああ! せっかく集めたのに――って、リン?!」


せっかく綺麗にしたのに再びばらまかれてしまい、ショックを受けるウララ。

しかし、初めて見たかもしれないリンのショック顔に、彼女はショック顔をびっくり顔に切り替えた。


「こ、ここここっ、ここ」


何故ならば、いつもはポーカーフェイスな彼女が、今やこんなにも錯乱しているからだ。


「もも、もしかしたら! もしかしたらの話だからねリンっ?!」


「こここ、こけーっ!!」


「こけーっ!?」


ニワトリ化したリンに焦るウララ。

 そこへ、教室の掃除を終えた死神とユウがやってきた。


「こけーっ!!」


「こけーっ!!」


「……何やってんだお前ら?」


コケコケ騒いでいるリンとウララに、冷ややかな目を向けるユウ。


「くっくどぅーどぅー」


アメリカンなニワトリで仲間に入る死神。


「こけーっこここ」


「こけーっ」


「くっくどぅーどぅーくっくどぅー」


愉快なニワトリフレンズをスルーして、


「アオイ」


ユウはアオイの元へ移動した。


「あ、ユウ」


彼の声に反応して、アオイがゆっくりと振り向くと、


「……? どうした?」


ユウは、アオイ以外の人間ではあり得ない彼の気持ちを敏感に感じ取った。


「! ユウ、すごいね」


自分の感情にすぐさま気付いた彼にびっくりした後、


「……。あのね? ユウ、僕……」


アオイは、箒をぐっと握り締めてうつむき加減に口を開いた。


「!」


「こけ?」


「ぴーんひょろー?」


彼の声をキャッチしたリンは耳をそばだて、ニワトリウララとニワトリからだんだんと離れた死神が疑問符を浮かべる。


「プリンの髪、切っちゃったからどうしようかとずっと思ってて……っ!」


そんななか、アオイが灰色の瞳に涙を浮かべながら悩みを告白した。

直後、リンが胸を撫で下ろし、


「気にするな」


ユウが彼の頭にポンと右手を優しく置いた。


「そのうち伸びる」


ご尤。


「いやいやいやそりゃそうだけどそういう問題じゃ」


「! うん、そうだね!」


「って、ええんかそれでえええ?!」


 ウララのツッコミがいつものごとくスルーされ、元気を取り戻したアオイが掃除を終わらせると、


「……日が短くなった、ですね」


暗くなってきた空を眺めながら、リンがぽつりと呟いた。


「うん。それにだんだん寒くなってきたね」


それに頷き、秋の訪れをアオイが実感していると、


「こんな日はおでんに限るわよね!」


と、突然ウララが意見を出した。


「きゅうりだろ」


「チョコレートがいい」


「いやそれ秋関係ないじゃない?!」


さらりと意見したユウと死神に、おでんも冬よりな気がしながらも突っ込むウララ。


「おでん、ですか」


「僕はちくわが好きだな」


「リン、はんぺん、です」


ほのぼのとおでんトークを始めるリンとアオイ。


「いやいやここは昆布でしょ?」


「……。銀杏だろ」


それに加わるウララとユウ。

なんとなくメインでない気がする品をチョイスする彼らに、


「チョコバナナ」


死神が、進撃を仕掛けてきた。


「……」


「……」


「……」


「……」


静寂。


「さ、帰りましょ」


「うん」


「はい、です」


「そうだな」


ある平和な午後のことであった。


ずりずりずり


「ゆうこりんひどいー」


「何故俺だ? と言うかその呼び方やめろ」


 足を掴んだ為にずりずりと引きずられながら死神が訴えると、ユウはさらりと切り返した。


「断る」


「何故譲らない? と言うか離れろ鬱陶しい」


「断る」


「いやそこは承諾しなさいよ?!」


ユウの命令をきっぱりすっきり断った死神を、ウララがユウの足からひっぺがすと、


「だいたい、あんた絶対甘党を履き違えてるわよ!」


彼女のツッコミモードが再燃した。


「……。ウララ、ワタルがユウとひっついてるのが気に食わなかった、ですね」


「あ、鱗雲だぁ」


その傍らで、彼女の行動を分析するリンと雲を眺めるアオイ。


「何を言う。オレ様は人類の歴史を塗り替える甘党、死神ワタルだぞ」


「何政党っぽくキャッチコピーつけてんのよって言うか人類の歴史を塗り替える?!」


「公園のベンチを、チョコレートで」


「甘ーい☆ って、さすなあああ!!」


「……今のは完全に自発的発言だろ」


賑やかな死神とウララに、冷ややかな目を向けるユウと、


「……。ユウ、ワタルとウララが騒いでいるのが気に食わなかった、ですね」


「わあ、赤トンボだぁ」


その傍らで、彼の行動を分析するリンと、飛んできた赤トンボを人差し指に止めてみせるアオイ。

――秋の涼しい風が吹く、ある平和な午後のことであった。

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