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学校日和2  作者: めろん
150/235

第150回 架空日和

 真っ赤な幕がゆっくりと開くと、真っ暗なステージが顕になり、舞台に立つメンバーに、ひとりずつスポットライトが当てられた。


「ぷわ……むぅ」


ドラム、プリン。


「欠伸すんな」


ベース、ポトフ。


「ええっと、こうこう……で、次はこうだっけ?」


ギター、ミント。


「……」


ボーカル、ココア。

――今、彼らによって、びよびよ放送局のテーマが流される。


カンカンカンカン


とプリンによって指揮が取られ、



ミントとポトフによって曲が始まり、


すうっ


と息を吸ったココアによってメロディが完全に――


「びーよびよびよびよーぅ♪」


――崩壊した。


―――


 と、言うわけで始まりました。

五十回ぶりのびよびよ放送局でーす。


「わは〜、ココアって歌へったくそなんだね〜?」


「わ、悪かったわねー?! もー、だからやりたくないって言ったのにー!!」


一発目のお題は『もしもバンドを組んだら』、結果は生き地獄。


「え、私の歌そこまでひどかったー?!」


 ではではこの調子で、『もしもコーナー』の始まり始まりー。


『もしもミントがハゲたら』


「いきなり聞き捨てならねえ?!」


タイトル、"ミントの秘密"


―――


「ふあ……はよー」


 撥ねまくった髪を寝癖で更に撥ねまくらせたミントパパ、シャーンが欠伸をしながら二階から降りてくると、


「"はよー"じゃないよ。もうみんな食べ終わってるんだよ? 早く食べてよね。テーブルが片付かないじゃんか」


ミントは食器を洗いながら、何やらオカンみたいな言葉を口にした。


「おー」


生返事をしながらテーブルにつき、麦茶の入ったコップを手に取るシャーン。

なんだか息子と父親の会話のようには思えないが、これは、ブライト家で送られている日常。


「……で、今日は何時に帰ってくるのさ?」


「んー……」


夕食を考えてミントが質問すると、シャーンはコップを口から放して、


「7時。つーかお前、家の中では帽子被んなって言ってるだろ?」


さらりと答えた後、室内でも帽子を着用しているミントにこう言った。


「はあ? 誰のせいだと思って」


「ハゲるぞ?」


と。


ガシャーン!!


直後、ミントの手からお皿が滑り落ちた。


「……」


「……」


「「……」」


静寂。


「……え? おま……まさか……?」


完全停止したミント以上に動揺を隠しきれないシャーンであった。


―――


「「み、ミント……」」


「ハゲてねえよ!!!!」


帽子を取って友人らの誤解を解く必死なミントくんでした。


『もしも"メルヘン"と言うたびに爆発したら』


"歩く爆発物"


―――


「メルヘン!」


ドカーン!!


「メルヘン!」


ドカーン!!


「メルヘン!」


ドカーン!!


「……」


 ことあるごとに爆発する母親を見兼ねて、ミントは一家に一台ある黒電話のダイヤルを回した。


「あ、もしもし? 危険物処理班の方ですか?」


―――


「ゲヘヘ♪ メルヘン!」


「爆発しとれ」


『もしもマロとフランがメルヘンをマスターしたら』


"特訓の成果"


―――


バァン!!


 と部屋の扉をノックもせずに勢い良く開け放ったのは、


「みんとん!」


「ミントさん!」


ジャンヌの弟子の、マロとフラン。


「な、何さ?」


ドライヤーで髪を乾かしていた風呂上がりミントが、驚きながらも用件を尋ねると、二人は得意げに笑ってみせた後、


ぶくぶくーっ


溶けた。


「……」


それを見たミントは、おもむろにドライヤーの向きを変えた。


ブオー


「「あ、や、やめっ、やめっ!!」」


干上がる干上がる! と焦るマロとフランであった。


―――


以上、ブライト家の住人シリーズでしたー。


「改めて思ったんだけど、ろくなのいねえな」


 続きまして、仲良し四人シリーズです。


「ミント、こっち」


「あ、うん」


『もしもオーケストラをしたら』


"楽器と言えば"


―――


「オーケストラって、何やるの?」


 ミント、素朴な疑問。


「さあー? 取り敢えず、歌わないよねー?」


ココア、首を傾げる。


「自分が弾ける楽器弾いてればいいんじゃねェ?」


ポトフ、適当。


「……。そうだな」


プリン、訂正するのも面倒。

――そうして、四人が手にしたのは、伝家の宝刀。


「「リコーダー」」


結果。

学校の音楽会になる。


―――


「管弦楽っていうけどねー?」


「なんかパッとフルートとかバイオリンなイメージだけどなァ」


「そういう楽器使ったことすらないしね、オレら」


「む? 弾けないのか?」


「「……」」


何やら素敵ポイントが増えた模様のプリンでした。


『もしもお鍋をやったら』


"すき焼き日和"


―――


「今夜はすき焼きだよー」


 と、すき焼きセットをココアが持ってくると、


「おォ! 生肉!!」


「ポトフ生で食べない!」


「む! おとうふ!」


「プリンはスプーン持ち出さない!」


「でもちょっと薄すぎねェ?」


「って、だから生で食べない!」


「おしょうゆ!」


「だから冷奴の準備しない!」


「しかもどっちかってェと俺牛じゃなくて鹿肉派――」


「ミント、しょうが――」


「だから聞けええええええ?!」


「勝手にやってるよー?」


ミントとプリンとポトフが騒ぎだしたので、ひとりでテキパキとすき焼きの準備を進めるココアであった。


―――


「鍋奉行はミントだねー」


「いや鍋になってすらないから」


「鹿肉鹿肉♪」


「おとうふおとうふ♪」


結果、生肉好きとぷるぷる好きのせいで鍋になりませんでした。


『もしもお料理教室を開いたら』


((惨劇の予感……))


「む? 僕の顔に何かついているのか?」


"ひとりでできるもん"


―――


「じゃあ、今回はおにぎりをつくってみましょー」


「はーい」


 ミントが言うと、エプロンに三角巾というお料理支度のプリンが元気よく返事をした。


「では、まずはお米をといでください」


「? とぐ?」


ミントの言葉を聞いて、早速初歩的な用語を聞き返すプリン。


「お米を洗えってこと」


さらりと答えながら、ミントは彼にお米を渡した。


「む、分かった。お米を洗えばいいのだな」


それを受け取って腕まくりをしたプリンは、蛇口を捻って水を出し、


ガシィッ!!


スポンジと洗剤に手を伸ばしたところを、ガシィッとミントに止められた。


「む?」


「んな懇切丁寧に洗わんでよろしい」


「む? 水洗いでいいのか?」


「あたぼう」


「ふむ、漂白剤も使わないのか?」


「わは〜、そしたらきっと真っ白なごはんが炊けるね♪」


「うむ♪」


「食えるか」


 お米を食器どころか洗濯物か何かと同じように洗おうとした彼に、ミントは既に炊き上がったごはんを持ち出した。


「ここに炊き上がったごはんがあります」


「うむ。炊き上がったごはんがあるな」


彼の言葉に頷くプリン。


「では、手に水をつけてください」


「うむ。手に水をつけたぞ」


言う通りに両手を水で濡らしたプリンに、


「じゃあ、手に塩をつけてください」


ミントはさらりと指示を出した。


「ふむ、何塩?」


「へ? 普通に食塩だけど?」


「うむ。分かった」


すると、プリンは指を打ち鳴らし、


ぽんっ


と塩酸と水酸化ナトリウムを出現させた。


ガシィッ!!


すると、再びガシィッと止められるプリンの腕。


「む?」


小首を傾げるプリン。


「何する気だ」


「食塩を生成しようと」


「わは〜、出来たてほやほやの食塩が作れるね♪」


「うむ♪」


「食えるか」


結果。

おにぎりすら作れない。


―――


「むぅ、料理って難しい」


「何? オレなの? オレのやり方が悪かったの?」


「い、いやいや、悪いのは明らかに枕の方だぜ、ミントっ?」


「そ、そうだよー? 火も包丁も使わないかなーり初心者向けの、料理? を、選んだミントは偉いと思うよー?」


 お次はなんちゃって恋愛シリーズです。


『もしもミントとココアがくっついたら』


「へ?」


「え?」


"ミント×ココア=?"


―――


「ごめん、ココア。待った?」


「あ、ううん。私も今来たところだよー?」


「ふぅん? じゃあ、ココアも遅刻したんだ?」


「ええ?! ち、ちが」


「あはは、じょーだんじょーだん♪ 遅れてごめんね?」


「もー……まーいいや。行こー?」


「うん!」


 なんだかお友達感溢れるとってもピュアなお付き合い。


―――


「「……」」


「ちょ、も、もしもの話だよー?!」


「て言うか、もうすぐ二人もそんな目出来なくなると思うけど、ポトフとチロル?」


「はェ?」


「ふぇ?」


『もしもポトフとチロルがくっついたら』


「「――?!」」


"ポトフ×チロル=?"


―――


「あれ?! もう待っててくれてたの!?」


「あっは、早くキミに会いたくて」


「! ポッティー……! やぁん、アタイ、今日は帰りたくない〜みたいな〜っV」


「もちろん」


ふわり


「……帰さないぜ?」


「やんV ……ポッティー……」


「……ちーたん……」


 なんだかとってもらぶらぶなお付き合い。


―――


「「……」」


「ももも、もしもの話だって!!」


「そそそ、そうだよ〜! アタイはミントきゅんだけ〜みたいなっ?! ほ、ほら、次でそれを証明して見せるんだから〜!」


『もしもミントとチロルがマジ喧嘩したら』


「って、マジ喧嘩ぁ?!」


"ミントVSチロル"


―――


 それは、いつもの朝の静かな食堂での出来事。


「何それ?! ちゃんと謝ってよね!?」


「「!?」」


突然聞こえてきた大きな怒鳴り声に、朝食をいただいていた生徒たちの目が集まった。


「はあ? 意味分かんないよどうしてオレが謝んなきゃいけないのさ?!」


その視線の先には、怒りを顕にした表情のミントとチロルが。


「な、なになに?」


「喧嘩か?」


「あの二人、いつもはらぶらぶしてるのに」


「珍しいねぇ」


「よし、破局しろ破局!」


怒鳴りあう二人を遠巻きに見物しながら口々に呟く生徒たち。

ちなみに破局希望は元チロルファンクラブ。


「だから悪いのはそっちの方でしょう?!」


「何言ってんのさそっちの方が絶対悪いに決まってるじゃん!!」


その間にも、二人の口喧嘩はヒートアップしていき、


「はあ?! もう信じらんない!! そっちが謝るまでもう絶ッッッ対に口利いてあげないんだから!!」


「それはこっちの台詞!! そっちが謝るまで口利く気なんてさらさらないよっ!!」


バァン!! と力任せにテーブルを叩き、オーバーヒート。


「ごめんなさいっ!」


「って、早過ぎるわ」


「「どーも、お騒がせしましたー」」


後、チロルが謝りミントが突っ込みを入れると、二人は周りのみなさんに向けて深々とお辞儀した。


((え、漫才だったの?))


(くそぅ、くそぅ……っ!)


ので、生徒たちは心の内で突っ込んだ。

ちなみに、悔しがっているのは元チロルファンクラブ。


―――


「二人も喧嘩するんだなァ?」


「なーにが原因であそこまで喧嘩してたんだろうねー?」


「ふむ……、おにぎりの具?」


「……何? オレは誰がなんと言おうとツナマヨ派だー的な?」


「ミントきゅんがツナマヨって言うならおにぎりの具は全部ツナマヨにする〜みたいな♪」


『もしもチロルがミントのことを嫌いになったら』


「って、だからなんで破局希望みたいな?!」


"本当の気持ち"


―――


「……成る程。それでチョコレートケーキのヤケ食いを」


 ある日の午後、突然食堂に呼び出されたアロエは、話相手にされていた。


「もうミントきゅんなんて大ッ嫌い!!」


目の前でチョコレートケーキのホールをがつがつ食らっている、チロルの。


「では、アロエはこれで」


よくそんな甘ったるいものを飲み物なしでがつがつ食べられますねぇとか思いながら、なんだか見ているだけで気持ち悪くなってきたアロエはこの場を去ろうと腰を浮かした。


「大ッッッ嫌いなの!!」


すると、その腕をガシッと掴んで引き止めるチロル。


「……。……そう、ですか」


慰めて欲しいんだなと分かってはいたが再認識させられたアロエは、小さくため息をついて腰を下ろした。


「確かに、そこまで言うのはどうかと思います」


「でしょ?!」


「それではチロルさんが彼を嫌いになってしまったのも当然」


「でしょ!?」


「なら」


自分の意見に同意してくれる彼女に、チロルがホールケーキを食道にたたき込みながら相槌を打っていると、


「アロエがミントさんをいただいても、なんら問題ありませんね?」


アロエはさらりとそう言った。


「――……え?」


その言葉に、思わず止まるチロルのフォーク。


「大嫌いなのでしょう? 口も利きたくもないのでしょう? それなら、アロエがミントさんの彼女になって」


そんなチロルを気にも止めずに、アロエは眼鏡を掛けなおして静かに立ち上がると、


「あなたが好きという感情と、あなたと口を利く理由とを、なくして差し上げますよ」


彼女に背を向けて歩きだした。


「だ、ダメぇっ!!」


直後、思わず立ち上がって彼女を呼び止めるチロル。


「……。……分かりましたか?」


するとアロエは立ち止まって振り向いて、


「それがあなたの、本当の気持ちです」


ふっと微笑んでそう言った。


「……! アロエ……!」


目を見開いて驚いていると、彼女が微笑んだまますっと食堂の出口を指差したので、チロルは頷いて走りだした。


「ありがとう! これお礼!!」


食べかけのチョコレートケーキを、プレゼントしてから。


「……。……アロエは辛党、ですよ」


そんなチロルを見送りながら、アロエは切なげに微笑んだ。


―――


「やぁん、やっぱり心の底からアイラブユーみたいな〜っV」


「"そこまで"って……オレはチロルに何を言ったのさ?」


「ふむ、やはりおにぎりの具か」


「そこから離れろよ枕」


「アロエ、もしかして……?」


「さて、長くなってしまったので次回に続くみたいですよ、ココアさん」


「って、ええ?! またー!?」


そんなわけで、次回に続きまーす。

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