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学校日和2  作者: めろん
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第15回 名乗り日和

「とーちゃーく」


『む〜』


 死神の抑揚のない声と、彼の頭の上からむぅちゃんの鳴き声が聞こえると、ミントは広々とした、必要以上に豪華な部屋に立っていた。


「……? 此処って、シャイア城の王室?」


辺りを見回しながらミントが尋ねると、


「ん」


なんとも簡潔な返事が死神から返ってきた。


「じゃあ、ルゥ様の手紙に書いてあった"追伸。使いの者を送っちゃったゾ☆"ってのは、キミのことなんだ?」


「……フッフッフッ。バレちゃあ仕様がない」


ミントの問いに、死神はフッフッフッと不敵に笑った後、


「オレ様は死神だ!!」


「うん。知ってる」


と、迫力満点に名乗ったのだが、さらりと流されてしまった。


「……いじいじ」


『む〜う!』


それにいじけてしまった死神は、頭の上からむぅちゃんを降ろし、人さし指でつつき出した。


「……ねえ、ワタル?」


そんな彼に、引き続き辺りを見回していたミントがゆっくりと話し掛けた。


「ん? なんだ、クリスマスしょうね―…」


「ミント」


「―…ミント?」


ミントの声がものごっつ怒っていたので、彼の呼び方を素早く訂正する死神。


『む〜っ』


その隙に、ミントの肩の上に避難するむぅちゃん。


「プリンとココアとポトフは?」


いつもの声に戻ったミントが尋ねた。


「んー、プリンとココアは大好きだが、ポトフは甘くないから―…」


「食の話じゃねえよ」


「かたじけない」


床に手をついて謝る死神。


「枕少年とピンク少女と眼帯少年は……んー、たぶんだな……」


彼はしばらく考え込み、


「そこら辺に落としてきちゃった☆」


抑揚のない声で語尾に星印をつけた。


「ローズホイップ」


彼と同じ調子で、ミントは薔薇の鞭を出現させた。












ひゅっ


「ぴわっ?!」


どすんっ!


 死神に空間移動の途中で落とされてしまったプリンは、シャイア城の廊下で、思い切り尻餅をつくかたちになってしまった。


「……痛い」


強打した腰に手を当てながら、プリンがそう呟くと、


「邪魔」


という、酷く冷たい声が上から降ってきた。


「じゃ―…」


腰の痛みも忘れて、プリンが声の主にバッと顔を向けると、


「通行の邪魔だ。退け」


そこには、一人の少年が立っていた。

美しく整った顔立ちの彼の肩までの撥ねまくった髪と鋭い瞳は、漆黒に染まっている。


「……」


その少年を、じっと見るプリン。


「……。……なんだ?」


「食べ歩きよくない」


「黙れ」


少年の手に握られているきゅうりを見て言ったプリンに、彼はさらりと言い返した。


「……ふむ。あいつと似てる」


 そう言いながら、ゆっくりと立ち上がるプリン。


「……?」


「死神とかいう奴とお前の魔力似てる」


同じくらいの身長の、疑問符を浮かべた彼にそう言った後、


「お前、あいつのいる場所知ってる?」


プリンは小首を傾げた。


「……助詞が少ない」


そんな彼の発言に、少年は小さく突っ込みを入れた。


「む?」


それがよく聞こえなかったのか、反対側に小首を傾げるプリン。


「……これから行くところだ。だから退け」


すると、少年はさらりと言った。


「うむ。分かった。ついてく」


「……勝手にしろ」


そう言ってプリンが右にずれると、少年はスタスタと歩き出した。


「だから、食べ歩きよくない」


「黙れ」


きゅうりをかじりながら。


「僕はプリン=アラモードだ」


「は?」


突然自分の名前を名乗ったプリンに、疑問符を浮かべる少年。


「そろそろ名前出さないと少年のまま終わるぞ?」


「……。……"イシグロ ユウ"だ」


そんなことを言いながら、少年、ユウとプリンは、王室に向かって歩き出した。

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