第148回 戦隊日和
東の空に日が昇り、ジャングルに朝がやってきた。
「……むう。まだ誰も取ってないのか」
「まーまー、目指すはあの山の天辺だよー!」
人一倍ぐっすり眠っていたにも関わらず、まだ誰も旗を取っていないことに不満を顕にするプリンと、そんな彼を宥めながら自分たちが目指す山の天辺を指差すココア。
「あは、大丈夫ポトフ?」
「お……おォ……」
その隣で、ミントは、狼から人間の姿に戻り、先程ココアに挨拶よろしく破竹の勢いでビンタされてしゃがみこんでいだポトフをつっついていた。
「えーと、ここの、座標? が分からないからテレポートは出来ないんだよねー?」
「うむ。ミントの召喚魔法も使えないらしいからな」
あくまでも他力本願なココアとプリン。
「呼び出し魔法も使えねェから箒も使えねェし」
ぶたれた左の頬を押さえながら話し合いに参加するポトフ。
「ごちそーさまっ。さ、行こっか」
すると、自分で見つけてきた木の実とポトフが狩ってきた鹿さんの右の後ろ足を食べ終えたミントが、一度地面に手を付けた後、ぱんぱんと手を叩きながら立ち上がった。
「む?」
「へ?」
「はェ?」
と、三人が疑問符を浮かべながらこちらに顔を向けたのとほぼ同時に、
「ジャックと豆の樹♪」
ミントが植えた魔法の豆の樹が急成長し、四人を乗せて山の天辺に向かっていった。
大きな豆の樹の葉っぱに乗って、山の頂上までひとっ飛び。
「ミントすごーい!!」
「スゲェぜミントォ!」
「うむ。ミントすごい」
後はゴールの赤旗を探すだけだと、豆の樹から降りたココアとポトフとプリンはミントを誉め讃える。
「あは、この魔法があったことすっかり忘れてたよ」
豆の樹を消してふうっと一息ついたミントが額の汗を拭うと、
「……よ、よくぞここまで辿り着いたな」
「「?」」
どこからともなく、非常に棒読みな低い声が聞こえてきた。
「だが、これが"競争"だということを忘れているようだな。詰まり、勝者はただ一人」
辺りをきょろきょろと見回す四人に向け、再び棒読みな台詞を発した後、
ザッ
と、かっこよく彼らの目の前にその姿を現した。
「こ、この旗が欲しくば、この俺っ……、……ふ……"不思議仮面"を倒すことだな……っ!!」
不思議仮面、見参。
「……」
「……」
「……」
「……」
「「……」」
突然現れた不思議仮面、短めながらも左側にボリュームのある銀髪で、黒を基調とした怪しげな衣服を身に纏い、顔が鼻の頭から上を隠す仮面で半分隠れている背の高い人物の登場に、四人はポカーン。
「……て、何してんですかセ」
明らかに"セ"のつくあの先生だと、早々に不思議仮面の正体を見破ったミントが口を開きかけると、
「「ふ、不思議仮面……っ?!」」
プリンとココアとポトフが、戦慄した。
「って、いやいや何乗ってんのさ? 明らかにセ」
「ミントくん、プリンくん、ココアちゃんにポトフくん!」
ミントの声は、彼らの背後に現れた薬草学担当のクー先生により、再び遮られた。
「! クー先生っ?」
クー先生の登場に驚くココアとプリンとポトフに、クー先生は素敵に笑ってこう言った。
「びよレンジャーに、変身よ!!」
と。
「……」
「……」
「……」
「……」
間。
「いやいや、何わけの分からないことを」
「「びよレンジャー?」」
「って、何興味持っちゃってんのさちょっと」
何か突っ込んでいるミントをよそに、聞いたことのない単語を聞き返すプリンとココアとポトフ。
「うんっ! 悪と戦う正義の戦士、五人合わせてびよレンジャー♪」
紫色の瞳をきらっきらに輝かせて、クー先生は楽しそうに説明する。
「"びよ"って何さって言うかオレたち四人だしって言うか悪ってもしかしてあのセ」
「赤と青と黄色と緑とピンクがあるから、好きなのを選んでね♪」
ミントの突っ込みをことごとく無視して、クー先生は五色のマフラーを持ち出した。
「……」
ここまで無視されたものだから、ミントはくるりと向きを変え、不思議仮面に話し掛けた。
「あの、セ」
「不思議仮面だ」
「いや、セ」
「不思議仮面だ」
「だから、セ」
「不思議仮面だ」
「……」
「……」
「セ」
「不思議仮面だ」
不思議仮面は、一歩たりとも譲ってはくれなかった。
「……。クーせ」
「ミントくん、何色がいいっ?」
(もみ消そうとしてるッ! "セ"に反応しすぎて"先生"の"せ"を遮っちゃうくらいむちゃくちゃ必死でオレの発言をもみ消そうとしてるッ!!)
にっこりと笑顔を見せながらも、その先は言わせねえぜオーラを放出しているクー先生を目の前に、ミントはついに発言を続けることができなかった。
「私ピンクー♪」
「って、ちょっとお?!」
が、びよレンジャーになりたくはなかった。
「? 何ー? ピンクは譲らないよー?」
「いや、別にオレがピンクがいいからってツッコミを入れたんじゃなく!!」
「じゃァ、俺は黄色♪」
「って、言ってるそばから!!」
「僕は青だ」
「いやいやいやプリンまでえええ?!」
何やらいつもに増してツッコミが不発に終わっているミントの肩を、
「ミントくん」
「! クー先生……」
クー先生が、優しく叩いた。
「ミントくんは、びよレッドとびよグリーン、合わせてびよクリスマスねっ♪」
後、彼の首に赤と緑のマフラーを巻き付けた。
「…………………はい?」
――かくして、びよレンジャーは誕生した。
「この旗が欲しくば、この俺を倒すことだな」
謎の悪役、不思議仮面。
「びよレンジャー、出撃よ!」
天真爛漫司令官、クー先生。
「別にカレーはそんなに好きじゃないけど、びよイエロー!」
斬り込み隊長兼回復役びよイエロー、ポトフ。
「闇属性で武器はチェーンソーだけど紅一点、びよピンク!」
戦場に咲く花びよピンク、ココア。
「ぷわ……ねむねむ、びよブルー」
冷静沈着びよブルー、プリン。
「……じ……人件費削減、びよ……く……クリスマス……」
一人二役びよクリスマス、ミント。
「「四人合わせて、びよレンジャー!」」
シャキーン!
(なんでこんなにノリがいいのさ、って、言うか)
シャキーンとポーズを決めたびよレンジャーに、
「か、覚悟しろ。デビルズドライヴ!」
律儀に待っていてくれた不思議仮面が、先制攻撃を放った。
ドカアアアアアアアン!!
爆発型の闇魔法は、ポーズを決めていたびよレンジャーに直撃。
「大丈夫、ピンク?」
「う、うん、ありがとー」
その攻撃をピンクをお姫様だっこして難なく避けたイエローと、
「ぷわ……」
同じく軽がると避けた後、欠伸が出るわ、と挑発的な態度を見せるブルーと、
「……っ」
直撃したクリスマス。
「「! クリスマス!」」
まさかあの攻撃をくらうなんて思ってもいなかった三人は、慌てて彼のもとに駆け寄った。
「クリスマス、大丈夫?!」
その様子から、彼が先程の攻撃をまともに受けてしまったことを知るクー先生。
「どうした、この程度かクリスマス?」
手始めにと放った魔法が当たってしまい、内心軽く動揺しつつもその様を嘲笑う不思議仮面。
「……」
「「……?」」
仲間の呼び掛けに答えもせずに、クリスマスはゆっくりと立ち上がった。
「……て……」
そして魔力を高め、利き手の左手には薔薇の鞭を、
『『ジェララララ!!』』
反対の右手には、自らが多少動きを補ってくれる食人植物の鞭を。
――ヤバイ。
そうプリンとココアとポトフが思ったのとほぼ同時に、その予感は的中することになった。
「クリスマスって呼ぶなああああああああ!!!!」
ヒュバアアアアアアン!!
戦場に、びよピンク以外に綺麗なお花が咲きました。
以上、お昼寝してたら夢に出てきた変な戦隊もののお話でしたー。←
……ぐだぐだで申し訳ございません