第141回 海水浴日和
白く輝く太陽に、空と海の青が映え、白い砂浜に白波が寄せては帰るこの場所は、隣国の国立魔法学校がある大都市、バテコンハイジュの南の外れに位置するジェラート邸。
海に臨む南国の風情溢れるその屋敷では、
「あれー? 珍しいね、チロルー?」
水着に着替え終わった少女たちが、お互いの姿を見合わせていた。
「ふふっ、ミントきゅんは純情可憐な男の子〜みたいな♪」
露出度控えめな水着を見て小首を傾げたココアに、チロルは両手を重ねて右の頬に当てた後、
「ココアの彼とは違ってね〜♪」
にやりと笑ってそう言った。
「なっ、ポトフだって別に……別に……別に……? いやいや、確かにそれはないねー」
彼女の言葉を強く否定しようとしたものの、その途中でポトフに純情可憐なんて言葉はとてもじゃないけれども使用できないということに気付いてしまったココア。
「ねね、この水着、どうかしら、リン、アロエっ?」
そんな彼女の隣で、頭の上の方で二つにまとめた狐色の髪を揺らしながら、ウララが自分の水着に対しての意見を求めた。
「……。よろしいのではない、ですか?」
露出度高めな水着を着た彼女を上から下まで眺めた後、栗色の瞳でウララを真っすぐ見たリンは、
「ユウ、むっつりっぽい、ですし」
と、無表情でそう言った。
「! やっぱそうよねっ? アイツむっつりっぽいわよね?!」
「……好きな人にどんな評価をつけているんですか、あなたは?」
リンの発言に共感したウララに、アロエはさらりと突っ込みを入れた。
「でも、ウララ、羨ましい、です」
「「?」」
すると、リンは瞳を伏せて呟いた。
「……リン、ぺったんこ、です」
自分の胸に、手を当てながら。
「つあ! 何言ってるのよリンって言うかむしろ控えめと言うよりも奥ゆかしい胸を気にするその姿が可愛すぎるわよリンっ!!」
「その表現はどうかと思うのですが」
何やらきゃわ〜んと瞳を輝かせながら騒ぎだしたウララに再びさらりとした突っ込みを入れた後、
「……それに、彼はヒトの体型を気にするような方ではないと思いますよ?」
「!」
とアロエが言うと、リンは顔を赤らめながらも嬉しそうにこくこくと頷いた。
「ぷ、プリンはわたくしのこのような姿を見て、どう思われるのでしょうか……?」
その更に隣で、水着姿の自分を鏡で見ながら、高鳴る胸を押さえているムースがいた。
「……。……道端の、小石……」
そんな彼女の隣で、バニラが何やら残念な意味のカードを引いてしまっていた。
一方、その頃、ジェラート邸前の綺麗な海辺では、
「フハハ! これがムース嬢のプライベートビーチというものか!」
「脇役がいきなりしゃしゃり出てこないでください」
グラサンにアロハシャツという、どこか怪しげな格好をした緑色長髪男子、バジルが、茶髪眼鏡男子、アセロラの冷ややかな突っ込みを受けていた。
「脇役とは? 私はいつでもヒーローさ!」
「グラサンとかき氷をひっくり返したアロハシャツを着ているヒーローがどこにいるんですか」
「フハハ! 君のように焦げ茶色の瞳と比べて、私の水色の瞳は眩しさの度合いが違うのだよ!」
「すみません、僕の言い方が悪かったですね。グラサンはともかくさっさと着替えてきてください」
「それにしてもレディたちが遅いね、アセロラ君?」
「健全でよろしいとは思いますけれど、ほぼ100%に近い確率であなたは彼女たちの眼中にないと思いますよ」
テンションの差が激しい会話が繰り広げられているその場から少し離れたところでは、
「お水……」
「お水……」
似たような顔色で海を覗き込んでいるプリンとアオイが。
「大丈夫だって。ほら、入ってみてよ?」
彼らが立っている砂浜の少し先、海の中にいるミントが彼らに声をかけると、
「う……うむ」
「う……うん」
それに頷き、二人は顔を見合わせて頷いた後、恐れながらも海の中へと歩きだした。
一歩、また一歩と進んでいくのにつれて、海はほんの少しずつ深くなる。
そうして、アオイの膝の辺りまで水に浸った時、
「ね? 大丈夫でしょ?」
どぱあん!!
「って、言ってるそばから溺れたあああ?!」
ミントがにこっと笑ってみせたところ、二人は急に溺れだした。
「ぴわっわ、みんとっ!」
「た、たすっ、たすっ!」
ばしゃばしゃと必死でもがくプリンとアオイの目の前で、
「え、え、え? 何っ? 何が起きたの!? 何、奇跡?!」
溺れる筈がないと思っていた位置で溺れている不思議に、ミントは酷く混乱していた。
「なんでなんでなんで?! キミらさっきまで普通に立ってたじゃんか!? ねぇなんで?!」
しつこく質問してくるミントであったが、そんなことより、早く助けて欲しい心境の二人であった。
「あっはっはっ! 相変わらず枕はいろいろと残念だなァ!」
「くっ……耐えろ。耐えろ俺……っ!」
助けて助けてと溺れているプリンを見てポトフは笑い、アオイを見てユウは奥歯を噛み締める。
態度は違えど、二人は彼らが水に慣れてくれるように願い、敢えて手を差し伸べないのであった。
――が、
「フッフッフッ」
「っ!? お前は――」
「し、死神さんっ?!」
二人が溺れていた原因が、死神が文字通り彼らの足を引っ張ったからだと分かると、
「「あ、成程ォ」」
「《壮麗なる龍はすべてを呑み込む》」
ミントとポトフはぽんっと手を叩いて納得し、ユウは遠慮なく死神をぶっ飛ばした。
「お待たせー!」
死神がユウの魔法で生み出された海水で出来た龍に派手にぶっ飛ばされたすぐ後、ジェラート邸からココアたちがやってきた。
「! ココアちゃ―…」
それに答えようと右手を挙げたポトフは、彼女のばっくりと開いた胸元に、自分の左耳に光る十字架と同じものが光っていることに気が付いた。
「……」
そして、そのままの目線で一時停止。
「……。……はっ!?」
再生。
「お、俺のバカァァァァァ!!」
後、早送り。
ポトフは、激しく自己嫌悪しながら海の中に飛び込んでいった。
「あうち」
その際、ぶっ飛んだ死神に激突し、彼が二度打ちならぬ二度ぶっ飛びを経験したことはほっといて、
「おお! マイハニ―…」
「バーンバニッシュ」
「……懲りませんねぇ」
砂浜ではバジルがアロエに黒焦げにされた上にアセロラに呆れられ、
「ぷ、プリン、わわわ、わたくし、ど……どうでしょうか?」
「ゆ、ユウっ、私はどうっ?」
「「……? どうって?」」
波打ち際ではムースとウララが撃沈し、
「ミントきゅんっ!」
「あ、アオイ……」
「「わあ、可愛いね」」
「「! ホントっ?」ですかっ?」
一方ではチロルとリンが喜んでいるなかで、
「ポトフ、どーしたんだろー?」
「……。……海の、藻屑……」
ココアが疑問符を浮かべながら小首を傾げ、その隣では、バニラがまたしても残念な意味のカードを引いてしまっていた。
……ふぅむ、オレ様の扱いが悪いのは気のせいか?
……ん?
おお、久しぶり。
ちゃお。
何やら作者の都合で2ヶ月近く更新が止まってしまったな。
長いこと待たせてしまってかたじけない。
ん? 別に待ってない?
フッフッフッ、ツンデレだな。
ともかく、これからはもう少し早く更新していきたいとのことで、今後も気長にお付き合いしてくれると嬉しいぞ。……ぽ。
では、またのご来店と、ついでに企画へのご参加もちゃっかりしっかりお待ちしているぞ。
ちゃお。




