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学校日和2  作者: めろん
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第14回 間違い日和

「使いの者?」


 長ったらしい上に国王らしからぬ口語で書かれた手紙を読み終えたミントは、最後の文に小首を傾げた。


「む。ミント、読み終わった?」


ベッドに座り、彼が読み終えるまで暇していたプリンが声を掛けると、


「うん」


ミントは手紙を畳んで頷いた。


「そうか。では、昼食に出発だ」


すると、プリンは立ち上がってそう言った。


「あ、ごめん。待たせちゃった?」


「ふふふ。大丈夫だ」


そうして、ミントとプリンがドアに向かうと、


『む〜!』


それに気付いたむぅちゃんが彼らにトコトコとついていった。


『ほ……ホー……』


むぅちゃんに遊ばれまくってしまった憐れなフクロウは、よろよろと窓から飛び立った。















「わは〜、雨凄いね〜?」


「うむ。雷も凄いな」


『む〜』


 食後のコーラとプリンを頂きながら、窓の外を見て言う二人と一匹。

いつの間にか、外は大荒れの天気となっていた。


「あれ? ポトフとココアだ」


ふと視界の隅に入った人影に、ミントは疑問符を浮かべた。


「む? お出掛けしていたのではないのか?」


『む〜?』


「その筈なんだけど……」


と、プリンとむぅちゃんもご一緒に疑問符を浮かべていると、


「あ! ミントとプリンだー!」


ポトフとココアが同時にこちらに気が付いてやって来た。


『……む〜……』


自分だけ名前を呼ばれなかったので、しょんぼりするむぅちゃん。


「こんなところでどうしたの?」


と、ミントが尋ねると、


「いやァ、急に物凄い雨が降ってきたから……」


「雷も凄いし、帰れなくなったら大変でしょー? だから、早めに帰って来たのー」


ポトフとココアがそう答えた。


「……で、丁度お昼だし、と?」


「大正解♪」


「此処に座ってもいいよねー?」


二人はそう言うと、昼食を乗せたトレーをテーブルに置き、ミントたちと同席する形になった。


「びしょぬれだね。大丈夫?」


「え? "水も滴るいい男"?」


「うん。一言もいってないけど」


 ポトフの聞き間違いを笑顔でさらりと流した後、


「はい、タオル」


ミントは魔法でバスタオルを呼び出した。


「あ―…」


「ありがとー!!」


ポトフに差し出されたバスタオルを横から奪い取り、笑顔でお礼を言うココア。


「どういたしまして」


それに対して笑顔で応えるミント。


「……」


タオルを受け取ろうとした右手の行き場を無くしたポトフ。


『む〜!』


プリンから貰ったプリンを美味しそうに頂くむぅちゃん。


「ふふふ。美味しい?」


そんなむぅちゃんを見て、プリンが微笑みながら聞くと、


「ん。まいうー」


という返事が返ってきた。


……。


…………。


………………返事?


おかしい。

むぅちゃんは"む〜"としか言わない筈だ、と四人が声のした方に顔を向けると、


「もぐもぐ」


そこには、自分で効果音を言いながら、平然とプリンのプリンを食べている男が座っていた。

紺色の部分的に長い前髪で右目が隠れている彼は、何故か彼の身長以上もある大鎌を肩に立掛けている。


「……」


「……」


「……」


「……」


 その場に流れる沈黙。

それを破ったのは、プリンの怒号。


「僕のプリン!!」


プリンが弾けるように椅子から立ち上がると、


「「って、誰!?」」


「誰だテメェ?!」


彼につられたように、ミントとココアとポトフも立ち上がった。


「フッフッフッ。オレ様か? オレ様は――」


すると、彼はプリンをコトリとテーブルに置いた。


((一人称"オレ様"?!))


と、四人が心の中で突っ込みを入れると、


「――死神だ」


ガラガラガラピシャーン!


彼が"死神"と名乗ると同時に、物凄くタイミングよく雷が落ちた。


「「し、死神……?!」」


決まりすぎている自己紹介に若干気後れしながらも、自分の耳を疑っているかのように聞き返す四人。


「フッフッフッ。……ん? この世界では、ワタル=シニガーミか?」


死神は不敵に笑ったかと思うと、小首を傾げてそう言った。


「って、苗字"死神"?! しかも何故に伸ばす!?」


それを聞いたミントは、気後れしていたことも忘れて透かさず彼に突っ込みを入れた。


「んー、それはあれだ。チョコだ」


「それを言うならノリだろ!?」


「そうとも言うかもな」


「いや、そうとしか言わねえよ?!」


「よく分かったねー、ミントー?」


死神にズバズバと突っ込みをかます、チョコがノリの言い間違いだと分かったミントに、ココアが驚きながらそう言った。


『む〜!』


そんな中、むぅちゃんがトテトテと死神の前にやって来ると、


「おお、むぅちゃん。ちゃお」


『む〜!』


死神が右手を挙げ、むぅちゃんも右手を挙げて挨拶をした。

そして、むぅちゃんを頭に乗せた死神は、


((!? 飼い主?!))


とか思っている四人に目を向けた。


「赤に緑、水色、ピンク、黒。おお、ピン子だ、ピン子」


ビンゴをピン子と言い間違えた死神は、大鎌を担いで立ち上がると、


「お城へレッツゴー」


と言って、大鎌を高らかに掲げた。

すると、一瞬にして五人と一匹の姿が食堂から消え去った。


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