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学校日和2  作者: めろん
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第138回 呪い日和

「「言霊の、呪い?」」


 カードに描かれている、見えない鎖で拘束された白い石の絵と同様に、あまり感じがいいとは思えない言葉を、ミントとココアとポトフは聞き返した。


「うむ。詰まりは、貴様は言葉の魔力によって呪われているということだ」


すると、プリンはさらりとそう言った。


「!? ポトフ、呪われてるのー?!」


「ちょ、言葉の魔力ってなんだよ枕!?」


「それは」


彼の言葉に驚いたココアとポトフがしたそれぞれ別の質問にプリンが答えようとしたところ、


「フッフッフッ。それはオレ様が教えてくれようぞ」


「「?!」」


彼らの前に、突如として死神が現れた。


「っび、びっくりさせないでよー?!」


「し、心臓に悪いぞテメェ!?」


自分の登場の仕方にいちゃもんをつけられているのにも関わらず、彼は大鎌を持っていない方の手でピストルを作り、その銃口をポトフの胸の辺りに向けた。


「?」


その行動に疑問符を浮かべたポトフに向けて、死神は不敵に笑ってこう言った。


「ずっきゅーん」


と。


ずっきゅーん!!


「――?!」


「!? ポトフー?!」


すると、彼の指先から魔法の弾丸が本当にずっきゅーんと発射され、ポトフは死神にずっきゅーんとハートを射ぬかれた。


「って、誤解招く表現すんな?!」


「フッフッフッ。オレ様に惚れると、火傷するぞ?」


先程のナレーションに突っ込みを入れたポトフと、自分なりにかっちょいいポーズを決めた死神と、


「……」


密かに死神と同じようにピストルの形にした自分の右手をじっと見るココアであった。















 セイクリッド魔法学校の三階にあるのは、無数の書物が棚という棚にずらりと並んだ部屋。


「わは〜、オレ、図書室なんて初めて来たよ」


ポトフとココアが死神の相手をしている隙に、ミントとプリンは、その部屋、図書室にやって来た。


「うむ。僕も」


彼の言葉に頷きながら、プリンはきょろきょろと本棚を見回す。


「それにしても、古代語を読めるなんてすごいね、プリン?」


「ううむ。小さい時に、たまたま絵本で読んだことがあったんだ」


「? 絵本で、古代語?」


すごいと誉められたことを偶然のこととして片付けた友人に、ミントが、そんな本あるの? と疑問符を浮かべて小首を傾げると、


「む。これ」


プリンは、はいっと彼に本を手渡した。


「へ? わっ!?」


何気なく受け取ったミントは、予想外の重さにそれを落としそうになったところで、


「! ……これって……」


見たこともないような不思議な形をした文字――古代語が、その本の表紙に使われていることに気付いた。


「……うわぁ……」


そして、おもむろにその本のページをパラパラと捲ってみる。

そこには、思わず目が痛くなるような紙いっぱいに並んだ古代語と、


「……」


何十ページのうちの一ページにあるかないかの、挿し絵が。


「……。ねぇ、プリン?」


「む?」


「小さい時って、いつ?」


まさかとは思いつつ、ミントがゆっくりと尋ねると、


「むぅ……五歳くらい?」


プリンは、さらりとそう答えた。


「……へぇ……」


そのまさか――プリンは小さな挿し絵しかないようなこんな分厚い本を"絵本"と称していた事実を知り、ミントは爽やかな笑顔で窓の向こうに目を向けた。

うぅん、今日も実にいい天気。


「む、あった」


 そんな彼をよそに、プリンは棚のひとつから、これまた分厚い本を何冊か引っ張りだした。


「む? ミント、読まないのか?」


その本を持ってこちらに戻ってきたプリンは、古代語の本を棚に戻そうとしているミントを発見した。


「へ?! あ、いや、ちょっと遠慮しとこうかなと」


「ふむ、そうか」


引きつった笑みを浮かべてそう答えた彼に、確かにそんなにたいした内容でもなかったからな、と思いながら、プリンはイスを引いて腰を下ろした。


「それ、なんの本?」


そんな彼が持ってきた本の種類を、恐る恐る尋ねるミント。


「……。……呪魂魔法」


すると、プリンがそう答えたので、


「! もしかして、さっきの?」


驚いたミントは、バニラのカードに書かれた文字のことについてここに調べに来たのかと問うた。


「うむ。……恐らく、その呪いのひとつは僕のせいだから」


彼の問いに、プリンは分厚い本をパラパラと捲りながら答えた後、


「……それに」


独り言のように、ぽつりと呟いた。


「あいつは僕の、弟だから」


――そう言った彼、


「! ……。ね、オレも手伝っていい?」


「! うむ! ありがとうミント!」


大切な弟の為に頑張るプリンを手伝うべく、ミントは彼の隣のイスに座り、見ただけで頭が痛くなるような分厚い本を手に取った。


「あ、その前に"言霊の呪い"って?」


「呪文を使わない呪い、詰まり、言葉が魔力を持って呪いになってしまった、言わば事故魔法のことだ」


「え、それって確か呪いを解除する為の魔法がないんじゃなかったっけ?」


「うむ。だから、それを解く他の方法を――」


ポトフにかかった呪いを解く為に、ミントとプリンは分厚い本を読み漁るのであった。


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