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学校日和2  作者: めろん
128/235

第128回 ピエロ日和

 国立魔法学校の裏山の中にて。


「……むぅ……」


夢魔の拳によって作られた洞窟を覗き込みながら、ちっちゃいプリンは帰りの遅いミントを心配していた。


「ヒ〜マ〜だァ!」


その近くにあった枯れた木の上に何故か登ったちっちゃいポトフは、枝の上に腰掛けて、退屈そうに足をぶらぶらさせていた。


『む〜』


それに同意するように鳴いたむぅちゃんは、彼の頭の上に乗っている。


「てなわけで」


何か考え付いたのか、ポトフは枝の上から飛び降りて地面にしゅたっと着地した後、


「あそぼォ?」


いつもと違って、何やらえらく素直にプリンに遊びのお誘いをした。


「! ……、あそぶ?」


彼の口から出た言葉を、びっくりフェイスで聞き返すプリン。


「そォだなァ……」


その反応を、何で遊ぶのかという疑問と解釈したポトフは、うーんと少し考え始めた。


「サッカーやろォ!」


人数的に無理があるかと。


「……? サッカー?」


彼の提案に、何それ? 的な表情で小首を傾げるプリン。


「サッカーは、ボールをけるんだよ」


そんな彼に、ポトフは物凄く漠然としたルールを説明した。


「でも、ボールない」


ふむふむと頷いてから、プリンは蹴るようなボールがないことを指摘した。


「あ、そっか。う〜ん、なにかないかなァ?」


そうして、ポトフとプリンはボールの代役になるものをキョロキョロと探し始めた。


「う〜ん……まるいもの、まるいもの……」


きょろきょろ。


「むぅ……まるいもの」


きょろきょろ。


『むぅむぅ、む〜』


きょろきょろ。


「「……」」


てんてんてん。


『? むぅ?』


こちらに向けた目をきらーんと光らせた二人に、からだ全体を傾けるむぅちゃんであった。













 一方その頃、夢魔の根城に侵入したミントとマロの二人は、


「ちょ、待ってよ!? 出来るだけ平和的に! そう! 平和的に話し合いで解決」


ドゴオオオオオオオン!!


「しましょうよおおおおお?!」


ちっちゃいボディから繰り出される強烈パンチを必死に避けていた。


「は……はあ……聞く耳なしですか」


軽く息切れしながらミントが呟くと、


『む〜!!』


ドゴオオオオオオオン!!


殴る耳が飛んできた。


「ああ、もう! だからなんで急に学校を襲っちゃえ大作戦を企てたのさあああ?!」


それを走って避けながらミントが叫ぶと、


『むむ〜!!』


夢魔が声を発したが、悲しいことに理解不能。


「だからそんな一音で微妙に強弱と長短を変えて表現されたって何言ってるのか全然分かんな――はっ! マロ!!」


言葉の壁に頭を抱えている途中で、何かにはっとしたミントは、マロにバッと顔を向けた。


「まろろ……みんとん、意外と平和主義」


「そりゃあ、っ話し合いで解決出来るなら戦う必要ないでしょう?!」


意外そうに呟いた言葉に、ミントが夢魔の攻撃を避けながら応えた。


「分かったまろ。夢魔の言葉を訳せばいいまろね?」


マロは、タンッと地を蹴ってくるりと宙返りして夢魔の拳を(かわ)すと、


「うん、お願い!」


頷いたミントの隣に着地して、彼に向かってくる夢魔の言葉を待った。

その間に間合いを詰めた夢魔は、伸縮自在らしい耳を思い切り引いてパンチに勢いをつけ、


『む〜!!』


鳴いた。


「"歯ぁ食い縛れえ!!"」


ドゴオオオオオオオン!!


そして、ミントがぶっ飛んだ。


「って、みんとーん?!」


マロの訳を聞いて思わず動きが止まってしまったミントが夢魔の拳をまともに腹に受けたので、彼女が慌てて彼に駆け寄ると、


「みんとん、大丈夫まろか?!」


「嘘だ! 嘘だぁ!!」


「何必死に現実逃避してるまろか!?」


ミントが痛みも忘れて現実逃避していたので、マロは心配も忘れて突っ込んだ。


「そんな、あの"む〜"がそんな番長的な意味合いの言葉だっただなんて……」


「いや、すべての"む〜"がそういうわけじゃないまろよ?」


「これじゃあ百パー話し合いで解決出来ないじゃんか!?」


「まー話し合い以前に会話にすらなってないまろからね」


深刻な表情で頭を抱えるミントに、のほほんとした表情で受け答えるマロ。


「……じゃあ仕方ない。ここは実力行使といくしか」


腹を括ったミントは、そう言いながらなんかかっこよく立ち上がると、


ぼてっ


「みんとーん?!」


倒れた。


「みんとん、大丈夫まろか?!」


「ズッキーンてきた。今更ながらすっげーズッキーンてきた」


「はう!? そう言えば、みんとん、夢魔の攻撃をもろに!」


うつぶせに倒れたまま言うなんかカッコ悪いミントを見て、マロは、彼が夢魔の耳パンチを食らっていたことを思い出した。


「まろろ……なら、ここはまろが」


そう言って、マロは立ち上がるとキッと夢魔たちを振り向いた。


『『む〜!!』』


すると、やんのかコラ、とでも言うように耳を振り上げる夢魔たち。


「魔王の実力、魅せてやるまろ!!」


そんな威嚇をものともせずに、マロは両手を広げて一気に魔力を練り上げた。


「――ラスカルクラウン!!」


彼女が叫ぶと同時に、水玉模様の巨大な玉がどこからともなく転がってきて、巨大な流れ星がいくつも降り注ぎ、最後に巨大なピエロが地面からびっくり箱のごとく飛び出した。

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