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学校日和2  作者: めろん
110/235

第110回 帰還日和

 足元に突然現れた、紫色に光る複雑な模様が描かれた魔法陣を見て、


「ま、魔法陣!? ちょ、プリン大丈夫――?!」


その上に立つプリンに、ココアは慌てて声をかけた。


「ぷわ……ねむねむ……」


「って、いやいくらなんでも大丈夫すぎるでしょそれはー?!」


すると彼が呑気に欠伸をしたので、彼女は思わず突っ込んだ。


「ぷゆ……昨日、遅くまで起きてたから……」


「? 遅くまでってー?」


「九時三分」


「いやそれその歳で考えたら充分早いよー?!」


「いつも九時なのに」


「うっわ超よい子ー?! って、いつもより三分遅いだけで夜更かししたと思ってるのー!? って言うかむしろ何が原因で三分遅れたのー?!」


「……ぐー」


「私のツッコミ聞いてないでしょあんたーーー?!」


彼女なりに結構頑張った突っ込みも虚しく、立ったまま眠ってしまったプリン。


「……結局なんなのよこの魔法陣の効果はー?」


そんな彼を見ながら疲れたように肩を落とすココア。


ぶわん!!


「!」


すると、プリンの隣に、彼と同じ魔法陣が二つと、


「すかー」


「くぅ」


その上に座って眠っているポトフとミントが現れた。


「ポトフ!! ミントもー!?」


あの岩に潰されてお煎餅になって現れるよりは遥かにましなものの、二人もまた眠っていたので驚いたココアは、


「……あ、もしかすると、この魔法陣に催眠効果がー?」


ふと思い付いたそれっぽいことを口にした。


『その通りだぜベイベ☆』


 すると、彼女の後ろからそれを肯定する声が聞こえてきた。


「……」


うわウザイ。

と、一言聞いただけで声の主の人格を判断したココアは、絶対に振り向かないと心に誓った。


『ワッツ? どうしたんだいマドマゼール? ユーのそのビューティフォーなフェイスをミーに見せておくれよ?』


ココアの直感は正しかったようで。


「ポトフー、ミントー、プリンー、おーきてー」


シカトシカト。

ココアは後ろにいるであろうウザイ奴をガン無視して眠っている彼らを起こそうと試みた。


『はっはーん、さては照れてるんだなシャイなプリティガール?』


それでも奴は傷付かない。


「ねー起きてー起きてよ三人ともー」


無視無視。

意地でも振り向いてやるものか。


『ハハハ、無駄だよプリティガール。ユーのナイト様たちは、ミーのマジックにかかってドリームの中、さ☆』


チロルより度の強い横文字の混じり具合いな上に、だいぶウザイ。


「ねーねー、もー帰ろうよー」


本当にお願いします、という感じでポトフを揺らすココア。


『……あー、ごほん。お困りのようだねプリティガール? ユーが望むなら、そのマジックを解いてあげようか?』


度重なる無視で流石に傷付いたのか、別の方法で必死に彼女を振り向かせようと試みた。


「ホン――」


それを聞いたココアが振り向くと同時に、


「――?!」


彼女はいきなり口を塞がれた。


『……ユーがミーのお嫁さんになってくれるなら、ね?』


彼女の口から自分の口を離すと、敵は不敵に笑ってそう言った。


「っダークネスサクリファイスー!!」


突然の出来事に乙女らしく顔を赤くするどころか顔を真っ青にしたココアは、そいつに向けて最大魔法を放った。

何故なら、たった今自分の唇を奪った奴が、


『ハハハ、そう照れ』


「ダークネスサクリファイスダークネスサクリファイスダークネスサクリファイスー!!」


『るぐほわっと!?』


「死ねカタツムリ!! ダークネスサクリファイスー!!」


ちゅどおおおおおおん!!


――巨大カタツムリだったから。


「はー……はー……うー、汚い気持ち悪い最低最悪有り得ないー!!」


最大魔法五連発をお見舞いした後、涙目になりながら必死で口を拭うココア。


『ハハハ』


「!」


が、しかし、


『残念。可哀想だけど、この程度の闇魔法は、ミーには利かないよ』


爆煙の向こう側から、敵の声が聞こえてきた。


『何せミーは、この洞窟のプリンスだからね!!』


えっへん。


「っどこの世界にそんなカッコ悪い王子がいるのよー!! ダークネスサクリファイスー!!」


いちいちウザイ敵に再び闇の十字架を振り下ろす。


ちゅどおおおおおおん!!


『ハハ、だから効かないって』


それに吹っ飛ばされたと思いきや、カタツムリのくせにケロリと起き上がった敵は、


『さあ、どうする? ユーの一番強いマジックはミーには通用しない。詰まり、ユーはミーに勝てない』


ニヤリと笑っているような声でこちらに向かって近付いてきた。


『そしてユーのナイト様たちはミーのマジックでドリームの中で、ユーを助けてくれはしない』


ずるりずるりとゆっくりと。


『それに、例え起きたとしても、ミーの手下とトラップのせいでもう体力も魔力も残ってないだろうね』


目と目の間に乗っている、黒と金色の王冠を光らせながら。


『ハハハ、どうやらユーはミーのお嫁さんになるしか』


「ひとつ、自分は何もしてないのに偉そーなヤツ。ふたつ、勝手に決めつけるヤツ。みっつ、相手のことを考えないヤツ。更にその上カタツムリ」


『――?』


前進の途中で突然ココアが口を開いたので、敵は疑問符を浮かべて停止した。


「おめでとー。パーフェクトで大っ嫌いだよ」


そんな彼に向けてそう言うと、ココアは両手をそれに向けた。


バチィ!!


『――!?』


それと同時に、地面に刺さっていた六つの闇の十字架から黒い雷のようなものが発せられ、それが繋がって大きな円と二つの三角形が上下に重なって出来た星が描かれたひとつの魔法陣が完成し、


「闇の鉄槌――ブラッディクラーシュ!!」


彼女の声に応えるように、ちょうど中央にいる敵に鉄槌を下す漆黒の雷が、魔法陣全体から放たれた。


バリバリゴロズパンドカンズキャアアアアアアン!!


洞窟じゅうを震わせるような轟音とともに黒く輝く雷は、プリンスカタツムリを存分に穿ち貫き焼き付くして消し去った。


「女の子だからって、嘗めないでよねー」


ドカアアアアアアアン!!


ついでに、魔法陣から上に向かって闇の雷が放たれたので、洞窟の天井をぶち抜いた。


「……って」


洞窟の天井を、


「……」


ぶち抜いた?


「プリンーーー!!」


スッパアアアアアアン!!


「ぴぐわ?!」


渾身のビンタによって強制的にお目覚めになった、魔法陣が消えてもまだ眠っていたプリンの胸ぐらをガシッと掴むと、


「さっき"ギリギリ大丈夫"って言ってたでしょだから私の魔法が消える前に早くテレポートーーー!!」


前後にがっくんがっくんさせながら、ココアは彼に向かって必死の形相でそう言った。


「ぴっ、ぴわ、わ、だっ、だから、て、テレポートはもといる場所が」


「おーっと、そーでしたー!!」


「ぷゆっ」


後、ぱっと手を放されドサッと地面に倒れたプリンは、


「……うむ。テレポート」


ミントとポトフとココアと自分の位置を確認すると、テレポートを発動させた。


ドバアアアアアアアア!!


直後、ココアの魔法によってぶち抜かれた天井から大量の海水が押し寄せ、辺り一面を呑み込んだ。













しゅぱん


「っあー、死ぬかと、ホントに死んじゃうかと!!」


「……ぴゆ……痛い」


 海底洞窟の入り口に戻ってきたココアがバクバク煩い心臓を押さえながら叫んで、プリンが彼女に思いっ切り打たれた頬を押さえながら呟くと、


「くァ……れ? 外?」


「ふあ……あれ? オレいつの間に寝てたんだろ?」


彼らの隣で、ポトフとミントが目を覚ました。


「っもー、バカバカー! 三人揃ってアホ面全開で寝てる間にヒドイ目に遭ったんだからねー!?」


それと同時に、ココアに怒られた。


「「は、はいゴメンなさい!?」」


「……僕、ぶたれた」


ので、わけも分からず謝るミントとポトフと、ぶうと膨れて文句を言うプリン。


「はっ?! しかも課題どーしてくれるのよー!?」


そんな彼らに、課題のことを思い出して理不尽にキレるココア。


「あ、魔晶ならここにあるよ?」


すると、ミントがズボンのポケットから黒く光る魔晶を引っ張り出した。


「それを早く言いなさいよー!!」


スッパアアアアアアン!!


「ぐわは?!」


それを引ったくると同時に何故か彼にも平手打ちをお見舞いしたココアは、ズカズカと学校に向かって歩き出した。


「……あれ? なんでオレ今ぶたれたの?」


「ぶう……僕もぶたれた」


「なんか、機嫌悪いみたいだなァ……?」


そんな彼女の後を静かについていく三人。


カチッ


「かち?」


ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ


「……」


ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ


「ごめーーーーーん!!」


「ごめんで済むかああああ!?」


「ぷわ……ねむねむ……」


「って寝とる場合かァァァ?!」


課題が終わったばかりなのに、随分と元気な四人であった。



ココアの活躍! 的なものが書きたかったのですが、……活躍……出来てましたでしょうか(不安

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