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学校日和2  作者: めろん
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第11回 原因日和

「あらら……随分と派手に壊してくれちゃったね〜」


 食堂に空いたどでかい穴を見て、薬草学担当の紫色の髪の女性、クー先生は、にこっと笑った。


「あっはっはっ……だいぶオープンな食堂になりましたねェ……?」


「う、うむ。森がよく見えるな……」


『む、む〜……』


「あ、あはは……って言うか」


ポトフとプリンとむぅちゃんが引きつった笑顔でそう言った後、


「この斧はなんですか?」


と、ミントがクー先生に尋ねた。

三人は今、壁に背を預け、正面からはクー先生によって首に巨斧が当てられているという、危機的状況の中にいる。


「マリルちゃんだよ」


小柄なクー先生よりも大きな巨斧、マリルちゃんは、名前に似合わずギラギラと危険な輝きを放っている。


「どうして先生はマリルちゃんをオレたちに向けているのですか?」


冷や汗を掻きながらミントが再び質問をすると、


「キミたちが逃げようとするからだよ」


クー先生は、笑顔でそう答えた。


「そ……そりゃあ、斧持った人がこっち向いてにこっと笑ったら、誰だって逃げるでしょう……?」


それに正論で返す引きつりまくった笑顔のミント。

現に、ココアとチロルもさっさと逃げていなくなっている。


「ふふっ♪ そんなことより、この穴はドラゴンのせいで空いちゃったんだよね?」


「は……ハイ……」


 しかし、クー先生は笑顔でそれを切り捨てた。


「でも、ドラゴンが此処に来たのは、そのまるっこいののせいなんだよね?」


『むむぅ?!』


クー先生の鋭い指摘に、プリンの腕の中でぎくりと反応するむぅちゃん。


「で、そのまるっこいのを此処に持ち込んだのはプリンくんなんだよね?」


「ぴぐっ?!」


同様にぎくりと反応するプリン。


「じゃあ、この穴が空いた原因は、キミたちにもあるよね?」


「「は、ハイィ!!」」


クー先生はそう言った後、ギラギラと光るマリルちゃんを三人の喉笛に押し当てた。


「ふふ♪ ねえ? 私が今うっかりくしゃみなんかしたら、キミたちの首と胴体がバイバイしちゃうんだけど、どうする?」


どうするって、どうしようもないではありませんか。そう思った三人は、綺麗に声を揃えてこう答えた。


「「喜んで修理させて頂きマス!!」」










「……はァ……やるか」


「……うむ」


 クー先生が去っていった後、ポトフとプリンは魔法で金槌を呼び出し、彼女が置いていった板を手に取った。


『……むゅ〜……』


「げ、元気出してよ、むぅちゃん?」


垂れ耳を更に垂らして、短い前足で"の"の字を書いているむぅちゃんに励ましの声を掛けるミント。


『むむ……む〜……。……むぅ!』


「?」


弱々しい声を発した後、急に耳をピンと立てたむぅちゃんに、疑問符を浮かべるミント。


『む〜!』


ぽわん


すると、むぅちゃんは小爆発を起こし、金槌に変身した。


「……。…………。あ、使えってこと?」


その意味を理解したミントが、むぅちゃん金槌を左手に取って、右手で支えた釘にそれを打ち付けた。


ごっ


ぼふん


『むゅううぅうんっ!!』


「ごごご、ごめんね、むぅちゃん?!」


打ち付けたと同時に、むぅちゃんは変身を解いて泣き出したので、ミントは慌てて謝った。










「……暇だ」


 同時刻、無駄に豪華で無駄に広い王室にある無駄に大きな玉座に、小柄な白銀の髪の国王が座っていた。


「暇だ暇だ暇だ暇だぁ!」


彼は床に届いていない足をじたばたさせ、己の暇さ加減を表現した。


「う〜……早くシャーン来ないかな……」


力なくうなだれて、ぽつりとそう呟くと、


「――はっ!」


彼は自分の発言に、はっとなった。


「ルゥ!!」


と同時に、王室の無駄に大きな扉がバァンと勢いよく開き、撥ねまくった少し長めの赤い髪の男、シャーンが姿を現した。


「べ、別に来て欲しくなんかねえよ!!」


若干顔を赤らめながら、彼に向かって叫ぶ国王、"ルゥ"こと"ルクレツィア"。


「ツンデレ気取ってる場合じゃねえぞ!! 外見ろ、外!!」


すると、シャーンは酷く焦った様子で無駄に大きな窓を指さした。


「外?」


シャーンに言われた通りに窓に目を向けると、


「――!」


そこから、こちらに真っ直ぐに向かって来ている巨大な魔物――ドラゴンの姿が確認出来た。


「ワア、ナニアレ?」


「ああ、驚いて思わずカタコトになるのも分かるが……って、にっこにこ?!」


 ドラゴンを見て、驚いているだろうと思っていたのに、ルゥがにっこにこだったので思わず突っ込みを入れてしまったシャーン。


「何してんだよ、シャーン?! 早く外行くぞ!! 街に何かあったらどうするんだ!?」


その間に、ルゥは早くも外に向かって駆け出した。


「ああ、それは大丈夫だ。街には城の衛兵を全動員させておい―…」


「馬鹿野郎!! そんなの今すぐ引っ込めろ!!」


箒に乗って彼に続きながらそう言ったシャーンに、ルゥは透かさず喝を入れた。


「だろ? ――って、ええ?!」


褒められると思っていたのに怒られたので、シャーンはショックを受けた。


「そんなことしたら危ないだろ!? 戦って怪我でもしたらどうするんだ?!」


「なんの為の衛兵!?」


「ってなわけで、オレが()る!!」


「男前ッ!! って、いやいや、衛兵よりお前が怪我した方がまずいだろ?!」


無茶苦茶な国王に、休みなく突っ込みを入れるシャーン。


「いひひ♪ だから兵士長も一緒に行くんだろ?」


そんな彼に、ルゥが悪戯っぽく笑いながら言うと、


「? 俺がいつ行くって言った?」


シャーンは疑問符を浮かべて首を傾げた。


「急にドライな対応?!」


突っ込みを入れながらも走り続けるルゥ。

今は緊急事態の筈なのに、随分と余裕である。


「と、兎に角行くぞ!!」


「へいへい」


「超面倒臭げ?!」


そうして、国王と兵士長はドラゴンと対峙するのであった。

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