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学校日和2  作者: めろん
109/235

第109回 未了日和

「疾風!」


「ダークネスサクリファイスー!!」


ちゅどおおおおおおん!!


 真っ暗な洞窟の中で、熊のような、あるいは狼のような、更にはコウモリのような、はたまたよく分からないような姿形をした魔物たちと、プリンとココアは必死で戦っていた。

とは言っても、魔物に狙われているのはプリンのみ。


「っもー! 何体いるのよー!? ダークネスサクリファイスー!!」


ドカアアアアアアアン!!


彼に襲いかかる魔物に最大魔法をお見舞いするも、同じ属性な為あまりダメージを与えられていない上に次々とやって来る魔物たちにイライラするココア。


「! ……ふむ」


そんななか、新たな気配を感じ取ったプリンは、


「囲まれたな」


後ろを振り向きもせずにそう言った。


「?! うそ――」


聞き捨てならない言葉に、ココアは辺りを見回した。


「えええ!? ずるいよこんなの勝てっこないじゃないーーー?!」


後、自分たちをぐるりと囲んだ魔物たちに向けて泣きそうになりながらも思い切り叫ぶと、


ふわっ


「……そう思うか?」


そんなココアを、プリンはふわりと抱き寄せた。


「え――?」


「――巻き起これ――台風!!」


次の瞬間、二人を中心に暴風が巻き起こった。















ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ


「は……は……、っ!!」


 自分たちをしつこく追いまわしている巨大な岩から逃げる為、ポトフは息を切らしながら必死で走っていた。


「ごめんっ!! 本当に人並み程度の足と体力でホントごめんっ!!」


プリズムソードを持ったミントを背負いながら。


「あっは……ミントだってはえェじゃねェか? それに」


心の底から申し訳なさそうな彼に、


「ミントの魔法のおかげであの岩もだいぶ遅くなったしな」


ポトフは足を休めることなくそう言った。


「でも、オレの"防風林(ウッドウォール)"じゃ少ししかあの岩のスピードが落ちな――」


こんな状況でも自分を褒めてくれるポトフに対して、あまり力になれていないことを申し訳なく思っている途中で、


「――! そっか! そうだよオレのバカ!!」


はっとしたミントは、バッと岩を振り向いた。


「ドレインフラワー!!」


そして、岩に左手を向けて魔法を唱えた。


めこっ!!!!


「?!」


 直後、何やら不思議な音がしたので、ポトフが思わず振り向くと、


「……れ? マッド?」


めこっと根っこに締め付けられて停止した巨大な岩の上に、大きな口が咲いていた。


「そうだよあれは岩なんだから栄養があるんだからこれがあったじゃんもー本当オレのバカ」


そんな彼の背中で盛大な溜め息をついたミントは、


「本当にごめんね、ポトフ?」


ポトフに降ろしてもらいながら、本気で彼に謝った。


「いやミントのおかげで助かったんだぜ? ホントにありがとな、ミント」


すると、ポトフはにこっと笑ってそう言った。


「うっ、よく出来た子……!!」


口を左手で押さえて奥様のごとく感動するミント。


「あっは♪ あ。なァ、ミント、これ砕けるかァ?」


彼の反応に笑顔を見せつつ小首を傾げながらポトフが言うと、


「岩を? うん分かった。じゃあ、もっと吸っていいよ」


『ジェラア!!』


ミントはマッドプラントに向けてそう言った。


めこめこめこめこ!!!!


バキバキバキバキ!!!!


ぐんぐん成長するマッドプラントと、それに締め付けられバキバキ砕け散る岩。


「……」


それを見ながら、"栄養あるんだからこれがあったじゃん"というミントの言葉を思い出し、あれヒトでも出来るんだァー、と、ポトフは顔色を悪くした。


コーン!


「?」


「!」


が、その途中で、何か固いものが地面に当たってはね返った音が聞こえてきたので、ポトフは顔色を正常に戻した。


「何これ?」


「それが魔晶だぜ、ミント?」


疑問符を浮かべながらそれを拾ったミントに、ポトフは、さっき根っこの隙間から見えたんだと説明した。


「! じゃあ、これで課題終了!?」


「おォ、ココアちゃんと、ついでに枕にも知らせに行こォぜ?」


ぱあっと顔を明るくしたミントに、ポトフはにこっと笑って言葉を返した後、


「……と、わりィ。動けねェや」


どしゃっとその場に座り込んだ。


「! ううん、謝らなくていいよ。ポトフが疲れたのってほとんどオレのせいだし……あ! ちょっと待ってて!」


そんな彼に自分のローブを布団代わりにかけた後、


「はいこれ! 美味しいよ?」


てててと駆けていったミントは、戻ってくると同時にポトフに紫色の実を数個差し出した。


「! ホントだ!」


お礼を言ってぱくっと食べてみると、驚いたようにポトフが言った。


「でしょ!?」


「おお! ミント、これ何の実なんだァ!?」


よかった、と笑顔になった彼にポトフが尋ねると、


「マッド!」


眩しい笑顔のまま、彼はそう答えた。


「……」


「……?」


「……」


「……」


「……。マッド?」


「マッド」


たっぷりと間を置いた聞き返しに、こくりと頷いてみせるミント。


「へ、へ〜ェ、マッドって実ィつけるんだァ……?」


「うん! いっぱい栄養を吸収すると、ぽんって生るんだよ!」


 複雑な表情になったポトフと眩しい笑顔のミントが地面に座ってそんな会話をしていると、


ぶわん!!


「「――?!」」


彼らの足元に、魔法陣が現れた。












 凄まじい風が吹き荒れるなか、


「……あ……あああ、あのー、ぷ、プリンさん?」


「? む?」


プリンと彼の枕を持っていない方の手の間、詰まり、彼に片腕で抱き締められているかたちになっているココアが口を開いた。


「あ、あの……な、何と言いますか、その、こ、こういったことはムース限定でお願いしたいなーなんて私は思うわけでしていや別にそーゆーつもりじゃないのは分かってるんですけどなんだかこの状況って激しく誤解を生みそうなんですけどって言いますか何やら顔が熱いと言いますかあのそのえーとー……」


友達と言えどもバリバリのイケメンボーイに抱き締められている為、顔を赤くしたココアが何やらごにょごにょ言いながら彼から離れようとした。


「め」


ガシッ


「ひゃい?!」


め、と注意されながらガシッと動きを止められ、結果的に更にくっつくことになってしまったココアが顔を真っ赤にしていると、


「ここは僕の魔法の台風の目。少しでも外に出ると消し飛ぶぞ?」


プリンはさらりとそう言った。


「は、はい――はい?!」


真っ赤な顔が、真っ青に変わる瞬間だった。


ビュオオオオ……


「む。終わった」


 台風が止むと、ココアの格闘も知らずに、プリンは彼女をパッと放して辺りを見回した。


「うむ。どうやら片付けられたようだな」


「……」


まるで何事もなかったかのように平常通り冷静な彼を張り倒してやりたいとか思いながらも、あれだけの数の魔物を片付けてくれた彼にはそんなこと出来ない、と心の内で新たな格闘を始めたココア。


「ぷう……ギリギリ大丈夫だな」


そんな彼女の気持ちなどまったく気付いていないプリンがぷうと一息つくと、


ぶわん!!


「「――!?」」


彼の足元にも、ミントとポトフと同様の魔法陣が現れた。

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