第108回 二人組日和
深い深い海の底、自然の岩で出来た海底洞窟にて、
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ
「うわあああいオレの選択大ハズレえええ!!」
「納得いかねェェェ!!」
左の道を選んでしまったミントとポトフは、迫り来る巨大な岩から必死こいて逃げていた。
「ああもうなんでオレってこう不幸体質ううう?!」
「なんでこの俺じゃなくてしかもよりによって枕と一緒なんだココアちゃァァァん!!」
「あ、そっち!? そっちに納得いってなかったんすかあああ?!」
「ココアちゃんと俺は運命の赤い糸で結ばれてる筈なのにィィィ!!」
「わぁおとってもメルヘンちっくううう!?」
「は?! そっか俺ミントとも赤い糸が」
「はさみプリィィィィィズ!!」
「そんなヒドォォォォォイ!!」
なんと言うか、本当に必死で逃げているのかどうなのか怪しい二人であった。
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ
「?! ほらポトフのせいでスピードアップしちゃったじゃんかあああ!?」
「えええ俺何もしてないじゃんかァァァ?!」
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ
「「って更に加速しちゃいましたあああああ?!」」
「ぴわわ!? まっくまっく!」
辺りを照らしていた光がフッと消えて真っ暗になった為、プリンは思わず立ち止まった。
「"まっくまっく"って……"真っ暗"って普通に言いなよ可愛いなもー……ダークブレス」
そんな彼と同じ道を選んだココアは、小さく息を吐きながら魔法を唱えた。
「……む? まっくまっくでも見える」
「闇の加護をつけたんだよー。だからまっくまっくでも見えるのー」
不思議そうに小首を傾げたプリンに、ココアはさらりと説明した後、
「んー、ミントとポトフと岩はあっちに行っちゃったみたいだねー?」
と言いながら、道の向こうに目を向けた。
「ふむ。そのようだな」
目が利くようになって落ち着いたのか、プリンはこくりと頷いた。
「……。ココア、さっき本当に寒気を感じた?」
ゴロゴロという音がだんだんと小さくなっていくのを聞きながら、プリンは道を見つめたまま質問した。
「なっ!? あ、当たり前じゃーん! 何!? プリンまで私がかわいこぶって故意にポトフに抱きつい」
「ふむ。では、敵の狙いは間違いなくココアだな」
必要な答えが聞けたので、怒り出しそうなココアの発言を平気でぶった切ったプリン。
「とでも……って、え?」
彼の言葉に、ココアが疑問符を浮かべると、
「僕もミントも馬鹿犬も気付かないほどの敵の気配をココアだけが感じ取ったと言うことは、敵の狙いがココアだけだということだ」
プリンはさらりとそう言った。
「え? で、でも、岩はこっちじゃなくてあっちに行っちゃったんだよー?」
私が狙いならこっちに来るでしょー? とココアが更に質問すると、
「恐らく殺すことが狙いではないのだろう。その狙いがココアだけならば、他は邪魔だということだ」
プリンはふわりと静かに魔力を高め始めた。
「で、でも、邪魔って言ったって、プリンたちみたいに私だってどっちの道に行くかとっさに決めたことだし、さっきの罠だけでプリンたちを消そうとするのは効率悪すぎないー? しかも現にプリンが私といるじゃん……て、え? プリンー?」
重ねて質問をしようとしたところで、ココアは彼が魔力を高めていることに気が付いた。
「あの岩からは魔力を感じた。詰まり、あの岩を操っている奴がいる。だからあれは、ココアと反対方向に進んでいった」
プリンはさらさらと質問に答えた後、
「もちろん、あの罠で消せなかった邪魔は別の方法で消しに来る――神風!!」
振り向きざまに最大魔法をお見舞いした。
「!? 魔物がいっぱいー?!」
それに少し遅れて振り向いたココアのその先には魔物がずらり。
「うむ。しかも全部闇属性だ」
その魔物たちにざっと目を通したプリンが言うと、
「ええ?! ってことは、私の魔法あんまり効かないじゃーん!?」
闇魔法を放とうとしていたココアの動きが止まった。
「旋風! ……ふむ。ここは闇属性の魔物の巣窟なのか」
そんな彼女に、迫ってきた魔物を吹き飛ばしたプリンは、だからまっくまっくなのか、とか思いながら、
「どうやらあいつらに気に入られたようだな、ココア?」
ふっと笑ってそう言った。
「いやまったくもって嬉しくないですよーーー?!」
「ふふふ、ではココアがくっついていた馬鹿犬はもっと酷い目に遭うかもな」
「!? なんか黒いよプリンー?!」
「ぴわ!? でもそしたらミントが!!」
「何その扱いの違いー?! って、カオスシールドー!!」
そんなことを言いながら魔物と戦う、こちらもこちらで緊張感というものが感じられない二人組であった。
「ぴわわ……ミントー!」
「ミントの心配はいーから戦いなさいよーーー?!」