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学校日和2  作者: めろん
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第106回 会話日和

 どんよりとした曇り空の下、国立魔法学校と蒸気機関車の駅とを結ぶ広大な森の中を歩きながら、


「一年の時からずっと学年トップだなんてすごいよね〜」


「……照れる」


コーラ片手にミントが言うと、プリンはさっと枕で顔を隠した。


「しかも今回の学年末テストも全部パーフェクト」


「……照れる」


遠い目ミントの言葉に、プリンは一旦照れた後、


「む。でもミント、植物学100点」


枕を下ろしてそう言った。


「いやまあそうだけど……でも、じゃあ魔科学の平均点いくつでキミは100点取ってるのさ?」


するとミントが尋ねてきたので、


「む? 32点」


プリンはさらりと答えてみせた。


「……こっちは平均64点でだよ?」


どんだけ魔科学取ってるみんなと差ぁつけてんだよ、とか思いながら、ミントはさらりと言い返した。


「む……で、でも、100点は100点だっ」


ので、プリンは少々慌ててそう言った。


「そだね。まあ学科の方は終わったことだし、今は実技だよね」


 それに頷きながら、ミントは極自然に話題を切り替えた。


「う、うむ! 今回の課題は、この地図に書かれた洞窟の中で見つけた魔晶を取ってくるんだったな」


話題が元に戻って来ないうちに慌てて話に乗っかるプリン。


「えっと、魔晶って、オレたちの心臓の中心にあるっていうあれと同じ?」


「うむ。魔晶は魔力が宿った光る石のことで、その魔力のおかげで人間や魔物、極稀に他の動物たちが魔法を使うことが出来るんだ」


疑問を浮かべたミントにこくりと頷いてみせた後、


「あと、自然界にある魔晶は、その属性ごとに加工することによって、例えば光属性ならスイッチを押せば部屋の明かりがついて、水属性なら蛇口を捻れば水が出るようになるんだ」


プリンはさらさらと説明した。


「魔晶って、いろんなところで使われてるんだね〜」


「うむ。ちなみに、自然に存在している魔晶は別名バースといって、これに対して人工的に作った魔晶はリバースというんだ」


「はへ〜」


勉強になりました、と付け加えたミントに、


「ふふふ、どういたしまして」


と、プリンは笑顔で応えた。


「あ。そう言えば、今日はひな祭りだね」


 すると、突然話が明後日の方向にすっ飛んだ。


「? ひな祭り?」


「……。さっきまでさらさら答えてたのにこの落差って……」


何それと小首を傾げたプリンを見て、ミントがぽそりと呟くと、


「! ひよこさんのお祭り!?」


彼は、期待に満ち溢れた青い瞳を向けてきた。


「え? あ〜……う〜んと……そうじゃない?」


その目があまりにも真っ直で綺麗すぎて、否定することが出来なかったミント。


「わー……! ミント、それどこでやってるの!?」


すると、厚意から嘘をついてしまった彼を窮地に追いやる質問が飛んできた。


「へ?! え、えっと……それは……」


「それは!?」


 プリンが目をキラキラに輝かせ、ミントが冷や汗をダラダラと高速で流している時、


「誕生日おめでとォ、ココアちゃん」


彼らから5メートルほど後ろを歩きながら、ポトフはにこっと笑って長方形の箱を差し出した。


「ほえ? ……。! あ、ありがとー!」


自分の誕生日を忘れていたのか、ココアはしばらくの間を置いてからプレゼントを受け取った。


「……え、えっとー……」


「あっは、開けてみて?」


「! うん!」


受け取ったプレゼントを開けていいものかどうかココアが困っていると、ポトフがそれを開けてみるよう促した。


「!」


リボンを解いてフタを開けたココアは、


「わー……! ね、ポトフこれって……」


箱の中に入っていた首飾りを手に取って彼を見た。


「うん、お揃い♪」


ので、ポトフは自分の左耳にある十字架ピアスを指さしながらそう答えた。


「貸して?」


「?」


後、ココアからそれを手渡してもらうと、


「はい」


ポトフは彼女の首にそのネックレスを装着させた。


「わー……! あ、ありがとうポトフー!」


「あっは、どォいたしまして♪」


ネックレスについた小さな十字架を両手で包み、若干顔を赤くしながらお礼を言うココアと、それを笑顔で返すポトフ。


「らぶらぶしてるとこ悪いんですけど、着きましたよ〜?」


「「!」」


 すると、前方からミントの声が飛んできた。


「ら、らぶらぶなんかしてないもんーーー!!」


「それは悪うござんした」


「むーかーつーくー!!」


気持ちがまったくもってこもっていない謝罪にむかついたココアは、ミントの両頬をしっかと掴んで左右にびろーん。


「ここが俺たちのコースの入り口なのかァ?」


「うむ。地図によると」


そんな彼らの隣で、小首を傾げたポトフに、


「この先が"海底洞窟"」


と言って、プリンは前方に目を向けた。


ザパーン


白波が寄せては返る波打ち際の岩山に、ぽっかりと開いた大きな入り口。

その先に広がる不気味な闇の中で、彼ら四人の実技試験の課題が始まるのであった。


「いふぁいいふぁいいふぁいいふぁい!!」


「あは、なーに言ってるのか全然分かんなーい♪」


「いふぁいいふぁいいふぁあああああ?!」


やっぱり、まだ始まらなかった。


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