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学校日和2  作者: めろん
104/235

第104回 凍結日和

「ぴわわ……真っ白」


「わは〜、オレ初めて見た〜」


 驚いたプリンと遠い目をしたミントの目の前には、


「……僕の勝ちですね?」


「……ありえねェ……」


眼鏡をかけ直しているアセロラと、がっくりとうなだれているポトフと、一面真っ白になったオセロのボードが。


「あーもー、俺のがひとつもないってどォいうことだよ途中まで俺が勝ってたのにィィィ!!」


「でも、こういうので一番大切なのって結果だよね」


「うむ。結果だ」


「結果ですね」


「っだァァァァァァ!!」


頭を抱えて悔しがるポトフとそれを見て笑うミントとプリンとアセロラ。


ぶおん


 そんな和やかな空間に、


「? あれ何、プリン?」


「ふむ。ワープホールだ」


ワープホールが現れた。


「兄さん!!」


と同時に、そこから飛び出してきた、半円形の手を守る役割をする大きなナックルガードがついた、炎のような大きな刃の双剣を逆手に持ったアロエが、それを思い切り振るったので、


ガキィン!!


「……おやおや、随分なご挨拶ですね?」


アセロラは同じ形の、氷のような大きな刃の双剣でそれを難無く受け止めた。


「ぴわわ、そっくり」


「分け目反対なんだなァ」


「でもやっぱり違うよね」


目の前で剣を交差させている双子ちゃんを見て、プリンとポトフとミントがほのぼのとした会話をしていると、


「なんなんですかあの変態?!」


「バジルさんがどうしたんですか?」


憤っているアロエにアセロラがさらりと聞き返した。


((……変態=バジル……))


変態という単語を即座にバジルと変換した彼に、三人は顔を若干引きつらせた。


「ハニー!!」


「「?!」」


ところ、まだ開いていたワープホールからバジルが飛び出してきたので、アロエとミントとプリンとポトフはびっくぅと驚き、


「ああ……成程」


アセロラは一人で何かを理解した。


「フハハ! 照れ屋さんだなぁハニーは♪」


「誰がハニーですかって言うか死ね変態!!」


満面の笑みを浮かべて言うバジルに、珍しく冷静さを失っているアロエが珍しく丁寧語を用いないで言い返すと、


「フハハ! そう照れずにダーリンと呼びたまえ!」


と、バジルが言った。


双炎連剣舞(そうえんれんけんぶ)!!」


「フハハハハハハハハ!」


目にも留まらぬ速さで炎の双剣を舞うように振るいまくるアロエと、それを笑いながら避ける意外とすごいバジル。


「あわわわわ……ここ部屋の中なんだけど……」


「ふむ。ぐちゃぐちゃ」


彼らによってぐちゃぐちゃになっていく自分たちの部屋を傍観するミントとプリン。


「……さあ、乙女のピンチですよ、ポトフさん?」


「狼唱ォォォ!!」


その隣でアセロラがさらりと言うと、はっとしたポトフがバジルに高速連続蹴りをお見舞いした。


ドドドドドドドドドドドドドドドドッカアアアン!!


「扱い易くて助かります」


((ポトフ使い……!!))


眼鏡をかけ直しながら言うアセロラに、ミントとプリンはそんなことを思っていた。


げしっ


「がふっ!?」


存分に蹴られまくって地に伏したバジルの背中に右足を乗せ、


「大丈夫、アロエちゃん?」


ポトフは爽やかにアロエに声をかけた。


「はい、ありがとうございます」


ピンッ


「あっは、当然のことをしたまで――って、ピン?」


目を瞑って爽やかに決めている途中で、ポトフはおかしな音に気が付いた。


「では、アロエはこれで」


そう言って、アロエがぱたむとドアを閉めてミントたちの部屋から出ていったと同時に、


「アイスウォール」


アセロラの防御魔法が発動し、


ちゅどおおおおおおん!!


アロエの手榴弾が、爆発した。


「「……がは」」


バジルの目の前に落ちたそれは、彼と彼のすぐ近くにいたポトフを真っ黒焦げにした。


「ありがとうアセロラ」


「うむ。ありがとう」


「どういたしまして」


一方、アセロラが産み出した氷の壁によって、彼と彼のすぐ近くにいたミントとプリンは無傷だった。


「うわちゃ〜……部屋ボロッボロ」


「ぶう……僕のベッド」


「いや部屋より俺の方心配して?!」


 ボロッボロになった自分たちの部屋を見回しているミントとプリンに、ポトフは必死に自分の負傷を訴えた。


「メディケーション」


「!」


すると、いつの間にかこちらに移動していたアセロラが、ポトフの傷を魔法で回復させた。


「あ、ありがとォ……」


「いえ。僕の方こそ、妹を助けてくださってありがとうございました」


びっくりフェイスなポトフに、アセロラはふっと微笑んでお礼を言った。


「ハニー!!」


ガバアッ!!


直後、倒れていたバジルがアセロラに抱きついた。


「……」


「……」


「……」


「……」


数秒の沈黙。


「アイスエイジ」


後、瞬間凍結。


「では、今日は僕なんかと遊んでくださってありがとうございました」


べりっという効果音が似合いそうな様子でバジルを引き剥がすと、


「え? あ、や、そんな、オレたちでよかったらまた遊びに来てよ。ね?」


「う、うむ」


「おォ、次は負けねェからな」


ミントとプリンとポトフはやわらかな表情でそう応えた。


「! あ……ありがとう、ございます……」


返ってきた言葉に驚きつつも嬉しそうにお礼を言い、


「では皆さん、おやすみなさい。バジルさんが大変失礼しました」


ぶおん、とワープホールを産み出したアセロラは、凍りついたバジルを小脇に抱えて、バテコンハイジュへ帰っていった。


「……」


「……」


「……」


手を振った体勢のまま、再びの沈黙。


「……」


「……」


「……。寒いね」


「「ね」」


分厚い氷に覆われた部屋の中で、ここでどうおやすみしろと? とか、吐く息を真っ白にしながら思うミントとプリンとポトフであった。


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