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長耳の暗殺者

 頂上び接近している男たちはスラリーが遠くから見ても特徴的な姿をしている。

 頭には白い布をかぶり背中には何か大きいものを担いでいて、かなりの重量物に見える。

 タイミング的に考えて、教会から送られてきた刺客に間違いなさそうだ。低山とはいえ背中に担がれたものは山登りにとって邪魔なもの、何らかの武器に違いない。

 急いでスラリーは頂上にいるエミの元に舞い降りる。

 「スライムが飛べるなんて信じられないわ」

 「そんなことより、何かがこっちに近ずいてるっぺ、きっと教会の刺客だっぺ、早く逃げっぺ!」

 その刹那、エミの脚を鉄の矢が刺し貫抜いた!

 突然の事に驚いたのはスラリーの方で、エミは苦痛の表情だが脚を引きずりながらも峰の反対側に素早く隠れた。

 「売女は治療魔術が使える、急いで追いかけ止めを刺すぞ、奴は腕が立つ決して無理に接近するな」

 ターバンの男達のリーダー格が他の二人に指示を出し、エミを追い駆ける。

 焼き付くような痛みの走る脚を引きずり、エミは必死に逃げる。聞いたことがないような遠距離から刺客は弓を打ってくる、太刀打ちのできる相手ではない。

 繁みに隠れやり過ごさなければ!

 しかし敵は頂上付近から重量感のある筒で

エミに狙いを付けた。

 ドパンッ!

 爆発音より早くエミの肩の肉が持っていかれ、後ろの繁みの木の幹が大穴を開けた。

 「ぐうううっ!」

 何かがエミの肩をかすめ、木の幹を穿ったのだ。弓?魔法?弓をはるかにしのぐ破壊力に、魔法など比較にならない遠距離からの攻撃だ。

 「上からの射撃は難しい、思う以上に上を狙え」

 先に打った男がもう一人の男にアドバイスした。

 「OKだ、次は外さん」

 男が引き金を引くその瞬間、上空から透明の塊が男の頭上に落下。

 ドパンッ!

 スラリーのお陰でねらいはわずかに外れ、エミの横の岩に当たり、岩が二つに割れた。

 スラリーは男の眼球だけを溶解し、すぐに隣の男の頭にアタックをかける。

「グワアッ!目が焼ける!なっ何も見えん!痛い、痛い!」

 男は叫びながら、両手で眼を覆うのだった。

 皮膚と眼を溶解したところでスラリーは鉄の矢に貫かれた。

 捕食中だった男は一瞬ビクリッと痙攣し、大きく口を開けそのままうつ伏せに倒れこんだ。

 「スラリー!死んじゃいやー!」

 「大丈夫だっぺ、オラ無傷だ!」

 ボス格だった男は仲間ごとスラリーを殺すつもりだったのだが、スラリーに弓が利かないのは想像していなかったのだ。

 「チッもう一匹いやがったのか!」

 スラリーは男から離れボス格のターバンを抑えるべく頂上から跳ね、男めがけて攻撃を仕掛ける。

 ターバンは巨大な鉄製の弓から、鉄の筒に持ち替え素早く着火、口火を切ると同時にスラリーに向け撃った。

 スラリーの体は半分以上が持っていかれ、摩擦熱で霧散してしまう。しかし残る半分は男の顔に張り付き眼を溶解し、ターバンの光を奪った。

 「眼が焼ける!なんだこれは!見えん、何も見えん!たっ助けて……」

 男に全てを言わせる前にスラリーは口を覆い溶解捕食してしまった。

 何とか元の体重に戻ったスラリーだが、身体の半分を失ったダメージは大きく、動きは鈍い。

 一方のエミは眼を潰されまだ生きている異国の男にとどめを刺した。

 脚を引きずり、出血の酷い肩を抑えエミはスラリーの元に向かう。

 「スラリー、大丈夫?」

 エミはスラリーに声をかけたが返事がない、スラリーの様子がおかしい、意識をなくしているのか、潰れた様になって動かない。いつものまんじゅうの様な張りがない。

 エミは治療魔法を掛け、回復を試みた。するとぶるぶる体を震わせ形がまんじゅうの様には戻るのだが、意識を失ったままである。

 仕方なく異国の男の衣服をはぎとり、スラリーに巻き付け温めることにした。

 この異国の男たちの持つ武器は一体何だろう?巨大な鉄の弓に発射装置の様なものが付いている、見たことがない武器だ。

 人力では引くことが出来ないらしく滑車装置の様なものが付いている。

 またもう一つの鉄の筒状の武器は?これも見たこともなかった。それにあの威力、魔法の威力をしのぎ、弓よりも遠くから撃てるらしい。

 この武器があれば戦には魔法など必要とされなくなるだろう。革命的だ!

 いかに重い荷物となろうとこの二つは魔王城に持ち帰らなくてはいけない。

 それにしても恐るべき刺客たちだった。一体どこの国の人間なのか、褐色の肌には見覚えがなく、長い耳も特徴的、言語も理解できなかった。

 しかしこれで教会がエミを消そうとしていることは確実、エミは自ら魔王城にいくことを決心したのだった。

 今日エミは随分出血してしまった、肩に治療魔法を掛けたがやはり跡が残る。肉が盛り上がってくるのも時間がかかるのだ。

 脚に刺さった鉄の矢を力ずくで抜き取ると

激しく痛み、血が噴き出てしまう。震える指で印を組みどうにか魔法で治療を行うが、大きな傷跡は残ってしまう。

 治療魔法は便利であるが完璧ではない、失った血を取り戻せる事はないし、病気の治療には効果が薄い。

 血を失った後は喉が渇く、幸いにして男たちは水筒を持ち、食料も携帯している。スラリーも動けない今は休むしか無いだろう。

 

 そのころクララは辺境の村々を周り、十字軍の志願兵集めに奔走していた。

 彼は村の少年少女を集め、一段高い壇上に立ち、少年達の視線を彼一点に集中させた。

 「最愛にして親愛なる我が兄弟たちよ!僕は今日、神の言葉を伝えるため、神聖な勧告をするためにここに来ました。南方の魔王たちがサン・アラミノス大聖堂を地獄の炎で焼き尽くそうと、人々を殺そうと、婦人を凌辱

しようと狙っています。神様から嫌われ呪われた者達が神の国を滅ぼそうとしている……」

 ここでクララは一度間を開け、壇上から少年少女らを見下ろした。

 クララは稀に見る美少年でその声は未だ声変わりしておらず美しい声色だ。その声のみで聞く者を魅了した。

 クララは芝居がかかった仕草で羊皮紙を掲げ天をみあげ演説を再開する。

 「見よ兄弟たち!今ここに神様よりの手紙がある、これは天啓だ!今こそ僕たちの力をあわせよう!」

 クララはここぞとばかりに大きく叫んだ。

 「十字架を持って立ち上がろう、魔族布教のために神と共に手を携えよう。彼の地を神の愛で満たすのだ、神の御心は僕たちとともにある!」

 クララは会場全員をアジった。

 少年少女達は熱狂する、全くの興奮状態。クララの後ろに光を見た少女すら現れたほどだ。

 更にクララは「神の御心のままに」と呼ばれる、誰も可もが歌える聖歌を口ずさみだし、会場の皆が一緒に歌い始める。熱狂的な興奮はしばらく続いた。


 この様子を人さらい専用馬車の中から眺める者がいた。このアジ演説を考え、クララに実行させることを提案した少女だ。

 この時代の農民の識字率はほぼゼロでありこのペテンを見抜ける者など居ないことをサラは利用したのだ。

 演説の前にはサラはごく微量のマクをクララに喫煙させていた。軽い興奮状態はクララの演説に実に良く真実味を与えてくれた。

 「ヨッカ枢機卿の愛人狩りは予想以上に多くの志願者が集まりそうだわ……」

 サラはふと、自分の修道院時代を思い出し邪悪な笑みを浮かべるのだった。


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