スラリー登場だっぺ
おっす、すらいむのスラリー!
「おっす、おらスライムのスラリー。弱っぺの雑魚キャラスライムさ。何か今日は魔王様がおらに大事な話があるってさね、なんだろね?おら魔王様なんて会うの初めてなんだ。だからドッキドキのわくわくって感っぺ」
人間との争いが激しくなってから、スライムまでも魔王軍に徴用されている。
今まではせいぜい河川敷とか野原で見かける程度のモンスターだった。葉っぱや小虫を食べて生きているだけの雑魚モンスター。
魔王軍の敗色が濃くなりつつあった。
「魔王様、またもや人間の勇者共が城に侵攻してきました!」魔王軍元帥アスモデは魔王に報告する。
「やつら人間どもは勇者を立て、我らに戦いを挑む戦術に変えたのじゃ。いつでも大軍を出せる準備だけは用意しながらな」
魔王は悔しそうに拳を硬く握り、その爪は肉に刺さり血が滲んでいた。
「おのれ、人間どもめ、我らを愚弄する気か……」
「奴らには決定的に我らを殲滅させる意思はないのじゃ、このまま戦争を長引かせることこそが目的よ」
「では魔王様、いつもの様に……」
「今の所は仕方がない、我らには時間が必要。それから例の計画の為、勇者の一味一人は生け捕りにせよ」
「今のところ我らの罠作戦はうまくいっております、ご安心を魔王様」
魔王城に至るダンジョンは巧妙にできたトラップだらけだ。人間の侵攻を止めているのもひとえにこの恐ろしいシステムによるところが大きい。
勇者の一味は例によって今回も全て女性だった。
「ちっいまいましい、例によってまたもや女どもか。趣味の悪い奴らだ」
アスモデはひとりごち、部下に例の如く全員を生け捕りにするよう命令した。
作戦はまず何匹かのモンスターを餌に勇者一味をトラップまで誘導する。
「みて!ゴブリンよ。アレ弱いから楽勝よ追っかけよ~よ。キャハハハ!まてぇーー」
いうが早いか、僧侶サラは勇者エミを追い越してダンジョンの中ゴブリンを追いかけていった。
主にトラばさみが有効で、そのすぐさま麻痺と眠りの魔法で身動き取れなくさせて生け捕りにするのだ。
「待つのよサラ!ダンジョンは危険よ、何があるか分からないんだから」勇者エミは統制をとり仲間を守るためサラを追う。
「待ってー」追いかけるクララ
「わたしも置いてかないでよー」最後にリリーが追いかける。
遠くでゴブリンとサラが立ち止まり、そのあとにエミ、クララ、リリーが追いつき息を切らせている。今これから戦闘開始の時、僧侶サラはくるりと振り返りニコリと笑って右手の壁のスイッチを押した。
ガチャッ!バチーーーーーーーン!
「いや、なにこれ?」
「罠よ!いたぁぁぁぁぁぁぃぃぃぃ!」
「いひいひ、鉄の歯が肉に…血、血」
トラップが発動し、トラばさみが三人を捕らえた。
「いやん、みんな痺れて眠っちゃえ」
サラはそう言って麻痺と眠りの魔法を三人にかけた。
「さ、ゴブリン共。いつもの様にしばっちゃって。あっその一杯出血してる娘、私より可愛い顔してる。生贄けってーい、よかったねリリー!」
「何…で…あなた…が?」痺れと睡魔で辛うじて勇者エミはつぶやいた。
「教会の命令だからしかたないじゃ~ん、あでも、少し趣味はいってるかな?もうすぐわかるよ、どーゆうことだかね、えへ」
捕らえた三人のトラップの怪我は、僧侶サラが治療の魔法で治療するのだが一人クララの様子がおかしい事に気付いた。
「あれ、こいつ男の子じゃん!可愛い顔してなによコイツ。イヒッこりゃいいや、高く売れっぞ~~!私の株も上がるわねえ」
全員を捕縛、治療し終えたサラとゴブリン達は意気揚々と引き上げていった。
スラリーは魔王の玉座の前で魔王と会っていた。本来なら身分が違い過ぎ、対面することはないはずだった。
「スラリンよ、いま人間達は我ら魔族を脅かし地上より駆逐せんとしておる。このままでは我ら魔族の敗北は決定的じゃ」
「悲しいですだ、魔王様」
「そこで我らは一計を案じ、魔王神様にいかに我らの劣勢を覆すべきかの神託を問うたのじゃ」
「まおうしんさまは何とおっしゃたっぺ?」
「スラリー、そなたを魔王軍救世主とするべしと魔王神様はおっしゃった。スラリーよ、今日ここで救世主を命ずる」
「ええ!おらスライムが、そんな大事なことでっきぺが?」
「神託には続きがあるぞ、スラリー。人間を糧とすることじゃ、スラリー」
「ええ!人間くうっぺか?魔王様。いや腹こわしそうだっぺ」
「ここに勇者の一味を捕らえている、スラリンに試しに食うてもらう算段じゃ」
「いやー、まいったぺ。おら魔王軍様の残飯以外くったことないっぺ。でも魔王様のご命令ならしかたないっぺなあ」
スライムが人間を襲うことはなく、スラリーは人間の子供にいたずらされたりしたことがあったの、で人間を怖がっていた。
「アレをここに連れてきてくれ、アスモデ」
「かしこまりました魔王様」
先ほど捕らえられ、全身を拘束されたリリーは身動きが取れない。
「いやぁぁぁ、私をどどどうする、つつもりなななの?殺すつつつもりなの?」
悪趣味なことにリリーの口は塞がれていない、最後の断末魔を魔王軍の供物とするつもりなのだ。
リリーは未だ子供子供した少女、今回の勇者の一行に自分から志願したのだ。
スライムのスラリーはかぼちゃ位の大きさで、重さもやっぱりかぼちゃ位だ。
スラリーが少女リリーに近づく。
「嫌、やめて、こっひこないでよ!怖いキモイ!怖い怖い怖い怖い!こんなのってないでしょっいやいやっいやいやぁぁぁぁ」
リリーはこれから何をされるのか分からなかった。縛られたままの体は転んでしまい、のたうち回りスライムから逃げようとする。
まるで芋虫の様だ、栗色のショートヘアを振り乱し、必死の形相の芋虫少女。
「これからお前はスライムに食われるんだよ。生きたままな」
そういってアスモデはリリーを足で踏みつけ逃げるのを止めた。
その宣告は少女リリーにとっては地獄に落とされたような衝撃を与えた。
全身を震えさせ、顔は引きつり、喉から声が出なくなった。
その時スラリーはぴょんとリリーの頭部に乗り上げ、頭部全体を覆った。
「ガボッグボッ!」
透明のスライムの中で上を見上げる格好になり、驚愕の表情になるリリー。肺の中の空気をもらしてい、瞬間的に溺れてしまう。
「おお!このスライムは人間を…初めて見る……」
アスモデは叫んだ。
スラリーの溶解は早かった、皮膚をまぶたを、髪の毛を瞬く間に溶解していく。きれいだった少女の顔は最早化け物の様だ。
リリーの体はくの字とエビぞりを繰り返し何とかスライムを剥がそうとするが、やがて痙攣を繰り返し、気絶した。
透明のスライムの体は血の様に染まり、骨を、脳を、脳幹を、歯を…全て溶かし、スラリーの自身の体に、変えた。
「魔王様、人間ってうまいっぺ!いくらでもくえそうだあ~」
そういってスライムは残りの全身を覆い乳房を、皮膚を、筋肉を、骨を、血液を、心臓をはらわたを、性器をすべて溶解し、自身の肉体に変えた。スライムは透明だから、その様子を魔王はつぶさに観測できる。
「すばらしい、魔王神さまのおっしゃられたことがわかった。このスライムは救世主なのじゃ……」
「うめえっぺ!魔王様、さいこうだべさ。もっとおらに人間くわせてくんろ。いいっぺな」
先の体より遥かに膨らんだスラリンは全身を食欲に震わせ、歓喜にむせた。