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一話 友達から仲間へ ②

業務日誌一日目②

「おばちゃん。俺ハンバーグ定食!」


「あたし、ステーキランチ。」


「わたしは―。・・・うーん・・・ケーキセット!」


「吾輩は秋刀魚定食にゃ」


「自分 蕎麦 」


「じゃあ僕は日替わり定食で」


僕らはまだ未成年なので、お酒は飲めない。その代わりがっつり昼食と夕食兼用の食事を頼み、みんなで思い出話をしようとした。僕はこの食堂では飽きないようにいつも日替わり定食を頼むのだ!


ここの食堂は学校が近いせいかメニューが豊富で、今も卒業式終りの学生が同じように集まっていて店内がすごく賑わっていた。しばらくして頼んだ物が運ばれてくると店主のおばちゃんが話しかけてきた。


「アキラちゃん、いつもツナ缶ありがとね。常連さんからもおいしいって言われるわ」


「ありがとうにゃ。おばちゃんの秋刀魚定食も最高にゃ」


アキラのツナ缶が学校外で初めて使われたのがこの食堂だった。とても優しいおばちゃんで「ツナ缶を使ってください」と言った時も二つ返事で承諾してくれた。学校では寮もあるんだけど、そこにいる生徒は必ずと言っていいほどここに来る。だからおばちゃんは第二の母親ともいえる存在だった。


皆の料理がくると、僕らはいろいろ話をした。


出会った時の話。


みんなでこの店に集まって、恥ずかしい自己紹介大会をしたこと。


町の資源確保の為に鉱山をとるか、漁港をとるかで喧嘩した話、あれは結局漁港にしたのかな。まあ喧嘩したのはマホとアミィだけど・・・。


学年対抗戦で初めて軍を動かしたとき、出陣じゃーと調子よく行ったリュークがボロボロになって帰ってきて、「どうしたの?!」と聞いたら「俺だけボロボロ」と言って無傷の軍隊を見せてみんなで大笑いした話。どうやったらあんな風になったのか今でも不思議だ・・・。


学園祭でアキラのツナ缶を売り出して大儲けしたこと。その後それを学校の資金として生徒会に没収されたこと。マホ神様を鎮めるのは苦労したな・・・。


五年間の思い出がそのまま戻ってきたようだった。一通り話した後、リュークが唐突に僕に話しかけてきた。


「なあフィル。卒業したから聞くけど、その左目は実際の所何なんだ?」


突然のことに僕は動揺して定食の白身魚のフライを落としてしまった。


「え、え・・・」


言葉が出てこなかった。今まで「小さいころに怪我したんだ」で誤魔化してきて最近そのことについて聞かれなくなったので耐性が無くなっていた。


「いやな、前に怪我したってのは聞いてたけど、なんだか詳しく聞きたいなーと思って、俺ら長いこと一緒にやってきたじゃん。でもやっぱり秘密の一つや二つあるけどよ。それでもさ、良かったら教えてくれないかなって・・・いや、俺も教えるよ。だからさ、えっと・・・第一回ドキドキテイクアウト大会――!!」


アミィの「カミングアウトでしょ」というツッコミがあったが僕は気が気ではなかった。僕は左目に眼帯、右目にモノクル(目が悪い)という、一見中二病かなにかと思われる格好をしていた。それもこれも僕の左目が原因であり、絶対言いたくない秘密だった。話せばさらに中二病かと思われるか、この関係が崩れてしまうと確信していた。


「な、なんで急にそんな話になるの?」


僕が尋ねるとリュークはそんなのお構いなしと言わんばかりに自分からカミングアウトし始めた。


「お、俺ね、実はCCで他の国がいい鉱山を発見したって聞いて、今ならその資源を安く手に入れられるっていうから国の資金から少しばかり拝借して投資したんだ。そしたら実はそれが全部嘘で全部持ってかれちゃった事があります・・・。」


ギロリ。音がしたように瞳が動き、もっていたフォークはケーキの上のイチゴをグサリと刺していた。


「おーまーえーかー。あの時金庫から盗んだやつはーーーー!!」


綺麗な白い角は上に伸び、鬼と化したマホがイチゴを食らい、次はお前だと言わんばかりにフォークを向けた。リュークが怯えている・・・。


「マ、マホ落ち着いて!僕の担当だった買い付けを一つ白紙にしてその分のお金でいくらかは返したから!なんとか許してあげて。」


僕はマホとリュークの間に入り、目の前の鬼を落ちつけようとした。


「ゆーるーさーんー!!さぁー選べ、肝臓を売るか!腎臓を売るかー!」


お金に関しては超うるさいマホは1円でも誤差が出ると鬼のように恐ろしい。マホ神様を抑えるのはとても大変だ。実際この時は僕らは5時間正座でお説教をくらった。


「そ、それにあの後二人でケーキ食べに行ってご馳走したじゃない。それでチャラにならないかな?」


マホは頭の中で収支の勘定をしていた。頼むマホ神様!


計算が終わったのか、鬼が徐々に消えていった。どうやら±0になったようだ。ふーーー。


「しょうがないなー。フィル君に免じて許してやろー。」


とりあえずマホの怒りは鎮めたが、今度はアミィが険しい顔をしていた。


「フィル、もしかしてその白紙にした買い付けって、失敗したって言ってた新材料の買い付けの話?」


「ごめんアミィ、実は会場にも行ってないんだ。」


「そんなのわかってたわよ。買い付け一つやめたのにお金が浮かないから変だと思ってたけど・・・。それより私が気になったのはマホとケーキ食べに行ったってこと。2人で!!」


深紅の瞳が僕を見つめる。その意味が僕にはイマイチわからなかった。


「はいはーーい。私もカミングアウトしまーす。アミィはフィルが好きーー。」


マホの言葉にアミィの言った意味がわかった気がしたが、その場の時が一瞬止まった。マホのおかわりのケーキをもってきたおばちゃんが「ふふふ」と言ってそのまま帰っていった。


「バ、バッカじゃないの?そんな事あ、あるわわけがないじゃない。そ、そりゃあ仲間としては好きだけど、そそそれだけよ。」


顔を真っ赤にしたアミィが叫んだ。


マホがおかわりのケーキを一口を食べて


「え、仲間としてだよね。あっれー。なんで顔真っ赤なのー。だるまさんみたーい。」


今度はアミィのブチッという音が聞こえた。


「マホ!!この女――――――!!」


叫びながら近づくアミィをウォールがその名の通り壁になった。


「喧嘩 だめだ 」


「だって!あの女が!!」


「おいしかったよねーフィル君♪」


キーーとアミィが地団太を踏むと。


「リューク氏、もう本題に入った方がいいんじゃないですかにゃ。」


綺麗に秋刀魚定食を完食したアキラが言った。


本題?と僕が首をかしげると、リュークは真剣な眼差しで行ってきた。


「そうだな、すまん。フィル、俺たちをお前の所で雇ってくれないか?」


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