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降る星に読む物語  作者: 紫木
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彼女の殺人

ごきげんよう


君にはこの物語の意味が理解できたかな


光と影。ひどく抽象的であり幻想的な存在が、もしも意思を持っていたとしたら

きっと二人はこういう会話を繰り広げていただろうさ


では、光が幸せだと思うだろうか?影が不幸せと感じるだろうか?


それは読み手である君の見解に任せようじゃないか


まぁ強いて私の見解を述べるなら、生きる上で互いが互いを必要としている時点で

なんとも儚い存在だと感じるね。

二つで一つの存在というのは独りで生き抜く事のできない存在なんだよ

まったく滑稽な話だ。


少し取り乱してしまったようだ。

どうしても自分の意見を述べると熱くなってしまうね。

実に悪くない。


この感情が尽きぬ間に次の話にいくとしよう。


今宵を彩る物語は『殺人鬼』のお話。

恐怖の対象と畏怖される彼等の第一の殺人とは如何なものだったのだろうか。

様々な説はあるが、その中でも一風変わったものをお聴かせしよう。

篤、ご覧あれ

「殺してあげるわ」


ある日の放課後、彼女は屋上の柵に体重を預けながら実に横柄にそう言った。

僕は不謹慎にも彼女の黒く長い髪が夕日に照らされてるのを見て「綺麗だな」なんて事を考え、

それと同時にどうしてこうなったと思う事も無く、彼女の次の言葉を待つ。


「残念そうな顔すらしないのね。この結末は貴方の望んだものじゃないでしょう?」


確かに、僕もまさか彼女から殺人宣告を頂戴する事になるなんて思ってもいなかった。

今日も今日とて平凡な一日が過ぎ去ると思っていた間際の大事件だ。


「それとも冗談だとでも思っているのかしら。ならこれならどう?人一人くらいはこんな物でも十分に殺せてしまうのよ」


そう言って彼女はスカートのポケットから大振りのナイフを取り出して僕に見せつける。

女子制服の神秘とでも言うべきか、僕にはその空間にどうやってもそんな大振りのナイフが収まるようには思えないのだが。想定外の摩訶不思議に動揺が顔に出てしまったらしい。


「ふふっ、少しは恐怖してくれたようね。どうかしら、本物の死が近づいてきた感覚は?」


彼女は僕のリアクションを極地的に都合よく解釈したようで大変機嫌よく言葉を続ける。


「安心なさい、ひと思いに殺してあげるわ。苦痛や痛みなんか感じさせてあげない。大丈夫、心配しないで、これでも運動神経には自信があるの。狙いは外さないわ」


自信満々に目の前の彼女はそう言うものの、ナイフの握り方を見れば素人なのは一目瞭然だ。そんな握り方じゃ、対象を刺した瞬間に自分の指まで吹っ飛んでしまうよ。一度でもソレを犯した人間なら、その事はよく知っているはずだ。さて、この事実をどうやって彼女に気付かせる事が出来るだろう。無い頭を捻っても妙案が思い浮かぶ訳もなく、そして当然のように時間は止まってはくれない。


「最後にひとつ教えてあげるわ。あなたがきっと一番知りたがっている事、どうしてあなたが殺されるのか。自分が殺される理由くらいは知っておきたいでしょう」


ひとつ前の思考を一時中断して、いかにも僕が知りたかっただろうという体で彼女は語る。


「残念でした。理由なんて無いの。ランダムで選んだ下駄箱に実に学生らしい手紙を入れて、ノコノコと現れたのがあなただったというだけよ。最高でしょう、絶望したかしら、どう今の気分は?」


意気揚々と声を荒げる彼女を見ながら、僕は冷静に結論に到る事ができた。


『なんだ、やっぱり無理じゃないか』


下駄箱に入っていた手紙を読んだ時に、少し期待してしまった自分がこの上なく恥ずかしい。黒歴史誕生の週間だ。


「そろそろ始めましょうか。さようなら、名前も知らない被害者さん」


そう言って彼女は腰だめにナイフを構えて真っ直ぐ僕に突っ込んでくる。


『それじゃあダメだよ』


僕は僕と彼女の直線上から平行になるように半歩移動し、すれ違いざまに彼女の手を捻り上げる。

彼女の手からこぼれ落ちたナイフを掴むと流れるような動作で彼女の背中にナイフを突き立てる。

寸分違わず肝臓に突き刺さったナイフは大量の失血を伴い、人を死に至らしめる。


屋上に広がりつつある血だまりの中、初めて僕はこの場で口を開いた。


「・・・で?君誰だよ」


息絶え絶えの状態で彼女が口にしたのは


「あなたこそ、何なのよ」


何とも意味のない最期の言葉となった。

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