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降る星に読む物語  作者: 紫木
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革命者の走馬灯

やあやあ、如何だっただろうか

どうにもやりきれない顔をしているようだね。

もちろん私は君がそんな顔をするだろうと思っていたよ。

だが勘違いしないでほしいな。

この物語は君を悲しませる為の物でもなく、その逆でもあらず。

だから物語の主人公に捉われず、君は君であるという事を自覚しながら聞いてほしい。

間違えても自分と言う器を見失わないように。


今宵を彩る物語は古の時代より偉人と讃えれる事の多い『革命者』の話。

民衆を扇動し、代弁者として生きた彼が生の果てに獄中で何を思って何を考えたのか

篤、御覧あれ。

15歳の時に、パンが欲しくて初めて人を殺した。

生きる為に手段を選ばなかった。生きながらに死んでいた。

それから先は同じ事を繰り返す日々、生きる為に暴力を振るい続けた。

気に食わない奴は金を持った奴ばかりだった。

気に食わない奴は権力を持った奴ばかりだった。

そんな非道な俺が、同じような境遇の奴等に持ち上げれて、

いつのまにか正義の名の下に旗を挙げることになった。


拳が剣になり、殺すことがとても簡単になった。

1対1が3対3になり、100対100を超える。

喧嘩や殺しが戦争と呼ばれるようになり、

余りにも多くの血が流れ、余りにも多くの犠牲を生んだ。

多くの仲間が泣いて、多くの仲間が逝った。


でも忘れてはいない。

初期衝動は「パンが食いたかった」、、、「生きたかった」だけだという事を。

そしてその果てが、深い井戸の底に放り込まれ、鎖で繋がれて身動きもとれず、

3日3晩飲まず食わずで死を待つ状態だなんて、実に皮肉な話じゃないか。

でも、生きながらに死んでいた頃に比べれば、まだマシなのかもしれない。


そういえば、あの馬鹿も同じ様な事を言っていたな


「血で血を洗う様な戦場でも、血を洗う事も出来ない路地裏で腐るよりはマシだと思うよ」


まったく、どれだけ凄惨な生き方をすればそんな考えになってしまうのか。

あぁ全く、思い返せばキリが無いほど浮かんでくる。


「野良犬に手を出したんだ。噛み付かれる覚悟くらいしてたさ」

「じゃあ逃げんな、待ちやがれ」


これは初対面での会話。

いきなり挑発してきたかと思えば、一目散に背中を見せて逃げやがった。

もちろん、捕まえて殴ってやったのも記憶に残っている。


「革命を起こすつもりかい?」

「あぁ、どうやらこの街には憂さ晴らしが必要な奴が多くてな。いつの間にやら旗振りになっちまった。

 悪い事は言わない。オマエは下りろ」

「まぁそう言うな。躾のなってない野良犬をリードもなしに野に放てるかよ。飼い主である僕の沽券に関わるじゃないか」


これは初めて路地裏から表舞台に戦争を仕掛ける時の会話。

もちろんこの後、思いっきりぶん殴った事も覚えている。


「7千の大軍か」

「さすがにここが死に時か。俺達の数は300位しか残ってない」

「撤退するしかないね」

「俺が殿を務める。オマエは仲間達をつれて街に戻れ」

「野良犬が飼い主に対して随分な発言をするじゃないか」

「懐かしいな、そう呼ばれていた頃もあった。でも俺はもはや革命者だ、もう選択肢などないさ」

「・・・分かったよ。革命者の死に様はいつも無残だね」

「仲間と共に逃げろ。友よ」

「僕もすぐに逝くよ、淋しいだろうけど少しだけ待っていてくれ。友よ」


これが最後の戦いでの会話。

追い詰められた俺が最後に下した決断。


そうして俺は捕らえられ、処刑を待つばかりとなる。


しかしながら、これが走馬灯というものなのだろうか。

次々と記憶が蘇ってくる。

余りにも多くの血が流れたこと。余りにも多くの犠牲を生んだこと。

多くの仲間が笑って泣いたこと。多くの仲間が笑って逝ったこと。


・・・瞼が重たい


すまない仲間達よ。ここが俺の最期となりそうだ。

どれだけお前達が泣いても、どれだけお前達が叫んでも

お前達の志や夢を、もう掲げれそうに無いんだ。


・・・寒い


友よ、出会った日の事を覚えているだろうか

友よ、戦へ身を投じた日のことを覚えているだろうか

友よ、供に戦い抜いた日々を覚えているだろうか

友よ、最期に交わした言葉を覚えているだろうか


・・・何も感じない


革命者の最期にしては、あまりにも贅沢な感情の中、

俺は静かに目を閉じる。

パンはもう必要ないんだ。



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