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ユリアリス  作者: 茄蒔 藍
第二章 青の国
19/20

祭り

路地裏で“あるもの”は不気味な音をたてながら、自身の形態を変形した。

それを見ていた少女は持っていた荷物を落とした。

落とした音で少女に気づいた“もの”は少女を睨みつける。

今宵の獲物を見つけた“もの”は少女に襲いかかる。

少女はすくむ足を無理やり動かし、逃げた。

“もの”は逃げる獲物を追いかけた。


紘斗たちは、長の屋敷に向かい入って、長と合流した。

そのあと、ザヨは用があるということで、屋敷の奥へ引っ込んだ。

その用が終わったら、後で合流することにした。

「長さん、祭りはどこで行うの?やっぱ、竜木堂の前の広場?」

「その通り、そろそろ私たちも行くかね相沢氏?」

「うん…だけど、この格好は…」

紘斗は、自身の格好が恥ずかしかった。

何故ならば、この村の祭り衣装を着ていたからだ。

長の屋敷に入った瞬間、侍女たちに捕らえられ、無理やり着せられたのだ。

祭りの衣装だけあって、赤と緑がより目立ち、顔には化粧するのだがこれも目立つため、控え目にしてもらった。

もちろん、ディアロとフェルアも祭り使用だ。

フェルアは子猫のため、飾り付けだけで済んだ。

白をベースに黒の模様が至る所にある毛並みには、赤と緑は映えていた。

しかし、ディアロの姿は見えない。

まだ時間がかかるそうで、後で落ち合うことにした。

ディアロのほうから、侍女によって報告され、その案に紘斗とフェルあはのったのだ。

「この祭りは相沢氏たちが主役。そなたが恥ずかしかっていては、いけません。皆が待っておる。さあ、行きますぞ」

長はなかなか覚悟を固めない、紘斗の背中を無理やり押して、祭りへ出かけた。

村は祭りで浮き立っていた。

村人が祭り使用の衣装で、どこかの民族に入ったような感覚だった。

いわばカルチャーショックを感じずにはいられない紘斗だった。

紘斗たちは竜木堂の前にある広場に着く。

広場では中央にどでかい焚き火…キャンプファイヤーがあった。

そのまわりを飾った女が踊り、男が太鼓を鳴らしている。

美味しそうな料理の匂い。

紘斗たちはそんな賑やかな祭りを見ていると、ある女の子が声かけてきた。

『相沢様』

「えっ?ディアロちゃん?」

『ハイ、“フォーム変換”ヲシタノデスガ…』

ディアロは130cm程度の大きさに変化していた。

祭り衣装を着こなし、赤と緑の艶やかな化粧をしていた。

「にゃ~…(凄い…なんか見違えたな…)」

「綺麗だね。“フォーム変換”っていう機能があるんだ」

『ハイ…侍女ノ方々様ニ色々ト質問サレマシテ…ドウシテモト頼マレマシテ…仕方ナク…』

ディアロは侍女たちの勢いに負け、“フォーム変換”をするはめになった。

「ディアロ氏よ。すまない…我が屋敷の者が迷惑かけました」

長の謝罪にディアロは慌ててお礼の言葉を言う。

『イエ、此方コソ此ノヨウナ…衣装ヲ御貸しクダサリ、有リ難ウ御座イマス』

「ねぇ~、長さん。食べる物って屋台から貰って良いの?お腹減ったよ~」

「それなら、これを見せれば勝手に貰っても構いません」

「何これ?」

紘斗は長から平べったい板を貰う。

「それは今回、祝福される者の証。あなた方は、久しぶり旅人たち、我々は心よく感謝の気持ちを表す者の証。今回の祭りでは、何もかも無料でできる証です」

「やった~!!フェルア、ディアロちゃん行こう!!」

「にゃーー!!(ごはん、ごはん!!)」

ナルタの世界に来て、食べていなかった紘斗たちは空腹のあまり、長から承諾を貰うと屋台が並ぶ場所へ走る。

『ハイ…デスガ私ハ機械デスカラ…食ベレマセン』

いろいろと見ていた紘斗にディアロは重要なことを教える。

「そっか~。でも、せっかくの俺たちを歓迎会して貰うんだし、他のことで楽しもうよ!!」

用意してくれた料理を食べれず、気を落とすディアロに紘斗は笑顔で元気づける。

『ハイ』

「にゃ~(主人、ごはん食べ損なう)」

フェルアが急かした。

急かすのも無理もない、紘斗たちがいる広場は村人でごった返し、久々の祭りのこともあって、浮かれているのだ。

せっかくの祭りだというのにろくに食べずに終わるのは惜しいし、ナルタの世界の初の食事といのに興味がある紘斗は、急かすフェルアの気持ちもわかる。

「そうだね。あっ、ディアロちゃん何かやりたいことあったら遠慮なくいってね」

『ハイ』

紘斗の親切さ感動し、ディアロは微笑む。

「にゃー!!(主人!!あれが食べたい!!)」

「えっ、どれ?」

いきなり大声を出したフェルアに、紘斗は少し驚きつつフェルアの求めているのを探す。

「にゃー(魚の看板のやつ)」

紘斗たちにわかるように、フェルアは自身の小さな手をおもいっきり伸ばして、お目当ての屋台を指す。

フェルアが指した屋台は魚料理があるところだった。

「にゃー!!(はやく!はやく!!)」

『フェルア様…焦ラナクトモ、料理ハ逃ゲマセン』

「そうだよ~フェルア、ディアロちゃんのいう通りだよ」

「にゃ~…(だって…お腹が限…界…)」

フェルアは二人に叱られ落ち込む。

「いらっしゃい!!」

「お姉さん、何かおすすめあります?」

紘斗は魚料理の屋台の売り子の女性に聞く。

「マニルの焼きはいかが?シンプルだけど、マニルの本来の味がいいから、おすすめよ!!」

「それ、二つください」

「はい、熱いから気をつけてね」

「ありがと。フェルア、ほらごはんだよ」

紘斗はマニルを受け取ると、よだれ垂らしているフェルアに渡そうするが、ディアロに止められた。

『待ッテ下サイ。其デハ、フェルア様、紘斗様モ食ベヅライデス。フェルア様ノ御食事ヲ手伝ワセテ下サイ』

「確かに食べづらいね。ディアロちゃんに任せちゃおっかな、はい」

紘斗はフェルアとマニルを渡す。

ディアロは器用にフェルアに食べさせる。

「にゃー!!!(うまい!!!)」

「おいしいよ!お姉さん」

「それは良かったわ。お金は…」

「あっ!いたいた!相沢!!」

二人の笑顔と感想に売り子の女性は、嬉しそうに言い代金に関していいかけたが、聞きなれた声が聞こえ止まった。

紘斗は名を呼ばれ呼ばれた方向に振り向く。

「あれ?ザヨ君だ。すごい格好だね」

「仕方がねぇだろ。久しぶりの祭りなんだから」

ザヨは自身の格好にため息を出す。

「何食ってんだ…マニルじゃねーか」

「うん。おいしいよ~」

「俺も食べようかな。おばさん一つくれ…ってねぇちゃん!?」

「あら、ザヨじゃない。後でその事について話しがあるから…逃げるんじゃないわよ」

暗い表情でザヨに向けて言うと、笑顔で顔を紘斗たちに向ける。

「あなた方が、久しぶりの旅人たちね。ザヨから聞いているわ。あなた方を案内することになったって。私はサナ。弟をよろしくね」

「はい。俺は相沢 紘斗です。この子猫がフェルアっていいます」

『私ハ、“ディアロ”ト申シマス』

「ねぇちゃん…あのマニル…」

「はい」

「ありがとう…」

ザヨは恐怖の色を顔に出しながら、マニルを受け取る。

マニルは紘斗たちと違い、赤いたれをつけたものだった。

サナは無言でニコニコと笑い、ザヨが食べるのを見ている。

赤いたれがたっぷりとつけられたマニルが、ものすごく辛そうに見えた。

紘斗たちはザヨが食べるのを息を飲む。

誰も止めないのはサナが早く食べろと無言の笑顔が皆怖かったからだ。

「食べないの?」

しびれを切らしたサナは促す。

ザヨは覚悟をして、かぶりと食べる。

「おい…しいっよ…ねぇちゃん」

「あら、良かったわ」

ザヨはあまりの辛さに水を求めたい気持ちを抑え、サナに無理やり笑顔を作って感想を言った。

その前に水など紘斗たちに求めたとしても、サナによって止められるのは、わかっていた。

紘斗たちは、ザヨの勇姿に手を叩きたくなるほど感激した。

マニルを食べ終えた紘斗たちは、サナと別れザヨを加えて屋台をめぐる。

料理だけでなく商品を売っていたり、一ヵ所では舞台がもうけられ、踊る者、歌う者など自身の 技や芸を見せ、観客者たちを驚かせ、笑わした。

「それにしても…ディアロだっけ、大きくなってないか?」

『私ノ特殊能力ト判断シテ貰エレバ後結構デス』

「へぇ~、機械から造った魂だけでも、普通じゃないのにな。何でもありか」

ザヨは自己完結し納得する。

「あれ、驚かないの~?」

「なんか、お前たちのことは何でもありだなって、思えて驚かねぇよ」

「ふう~ん」

「あっ、そろそろ始まるな…」

ザヨは舞台のほうを向く。

「何が…」

ウォーーーン!!!

どこからともかく、低い音が鳴り響く。

「にょっ!?」

「なになに!?」

『相沢様、フェルア様…舞台ヲ見テクダサイ。何カガ始マル見タイデス』

驚く紘斗とフェルアをよそに、冷静にディアロは音の原因を見つけ、二人に見るよう促す。

「今からな、長の演説が始まる」

長が舞台に立ち、なにやら今回の祭に関することや、これからの村に対することなど述べる。

最後の一言になった。

「今宵の祭を存分に楽しもうぞ!!」

その言葉に村人は歓喜した。

「うわ~、すごい盛り上がり」

「ああ…それより、祭が始まったばっかりだ。楽しもうぜ」

「そうだね」

紘斗たちは始まったばかりの祭りにワクワクさせながら、今宵の歓迎会を楽しんだ。



◆◆◆◆◆◆◆



「はぁ…はぁ…」

少女は走った。

追ってから逃げるために、全力で走った。

足が悲鳴をあげても走り続けた。

「はぁ…はぁ…あっ!!」

足が地面の隙間に引っかかり転んだ。

上半身を起き上がるが、既に悲鳴をあげていた両足は動かなかった。

“あるもの”から逃げようと、動かない足に変わって手で前に進もうとする。

大きな影が少女に覆った。

少女は影にビクつき、恐る恐る自分を覆い隠す影の正体を見る。

振り返った瞬間少女の目には、“おぞましいもの”が目の前にいた。

ガクガクと体を震わした。

「いやあ…こ、来ないでぇ…来ないでええ!!」

叫びを上げながら動かない足を引きずって、“おぞましいもの”から離れようとした。

少しずつ、少しずつ“もの”は少女に近づく。

「助けてよぉ…誰かあぁぁ…!!」

恐怖と絶望と死という全身に感じながら、誰も来ないと知りながら死にたくない一心で願った。

いつもは誰かいるはず道には、久しぶりの祭りだけあって誰も通らない。

どんちゃん騒ぎで誰も少女の声は届かない。

土に汚れた両手は壁にぶつかった。

少女は何もない右へと動こうとしたが止まった。

少女の体力と気力が切れたのだ。

どさっと前に倒れ込んだ少女は改めて、“もの”を見た。

自分を殺すであろう“もの”を目に焼き付けるために、どんなやつかを知るために見た。

口が歪んでいた。

殺戮の目をしていた。

“もの”は汚く垂らしたよだれを道に落としながら、獲ものである少女へと歩む。

やがて少女の目の前までやってきた。

“もの”によって引き裂かれた少女の服の上に、よだれがぼたぼたと落ちる。

引き裂かれた部分からよだれが入り込み、ネバネバして少女は不愉快に顔を歪ます。

「……っ!!」

少女はあるものを見て驚いた。

「なん…で…なの?信じ…てた…のに!?」

一番大切な人に、裏切られた。

少女は泣いた。

恐怖で泣いていた涙が、もっとたくさん出た。

“もの”は鋭利な爪で少女を切り裂いた。

少女は静かに見ていた。

自身から流れ出る血液と“もの”を悲鳴も上げずに、ただ、ただ見ていた。

もう用が済んだのか“もの”帰っていった。

“もの”がいなくなったのを確認すると、少女は力を振り絞って何かを残した。

少女は息を引き取った。



ディアロの“フォーム変換”で侍女たちに、弄ばれて可愛い格好をさせられてます

ディアロはたぶん恥ずかしがって、言われるままになったと思われます


そんなわけで始まった祭りですが、どう展開していくかはお楽しみに


ありがとうございました


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