魔法使い
砂浜は霧が晴れ、人々は魔法使いを探していた。
「どこにもいねえ」
「どこに逃げやがった!」
人々は見つからない魔法使いを諦めかけていた。
そこへ、軍隊を仕切る大佐が人々に声をかける。
「おい、平民!魔法使いはどこだ?」
「どっかいったよ…」
「仕方がない。兵よ!なんとしてでも探しだせ!」
大佐は兵に呼びかけ、兵たちは探し出す。
「平民よ、魔法使いを見つけ出したら、報酬を出そう」
大佐の言葉に探す意欲が湧き、人々はまた探し始めた。
ベオは晃から語るまで何も喋らなかった。
静かに緑茶をすすっていた。
「爺さんの言うとおりだ。俺はこの世界の住人じゃない。分け合って違う世界から来た者だ。だから、詳しくは語れないからそこは理解して貰いたい」
晃は強い眼差しでベオを直視する。
「…分かっておるよ。ではこの世について語っても良いだろう。娘よ?」
「…はい。これからの旅するに当たって重要ですから」
エマとベオは真剣な顔をしていた。
「この世…ナルタは、魔法というものがある。魔法が使える者は希少じゃ。割合は…約二十か十%くらいしかいないと言っていいだろう。しかし、魔法は我々人間のではない妖精と魔獣などのものだ」
「妖精と魔獣などのもの…?」
話の内容はびっくりするが、妖精と魔獣のものというのに、疑問がいく。
「妖精や魔獣などは、人は襲わん穏やかなものたちじゃ。しかし縄張りなど荒らされたり、生命に関わるとならば刃向かって来るがな!」
ベオは笑って脅すような言い回しだったが、本当のことなのか最後に“気をつけよ”と添えられた。
「妖精や魔獣などは常に、魔力を放っている。そのためか、嵐、津波、地震などを起こす原因じゃ。魔法とは、妖精や魔獣などから生まれる魔力を操って起こすものじゃ」
晃は驚愕した。
晃の世界の理と若干違う所はあるが似ていたからだ。
あと、原理的に似ていたため、魔法が使えたのかと晃は思った。
「しかし、常に放たれてる魔力を操るには、特異体質の人間だけになる。何時しか我々は魔法使いと呼ばれる所以じゃ」
ベオは一口緑茶をのむ。
「魔法とは力を意味する。それはどういうことか分かるだろう」
「…少しエマから聞いた話と先ほどの出来事と爺さんの話をふまえると…魔法は軍事力に欠かせない戦力対象だから、軍は魔法使いを欲していると」
「そうじゃ…この世界は何時しか、我が身の為に可笑しくなった。始めは鉄を研ぎ、火を使い、それでも力を欲し魔法まで手を付け出しだ。魔法使いは魔法を使えぬ者と平等に時には助け合いながら暮らしてきたというのに、我が身の為に欲の為に、魔法使いたちを無作為に強制的に戦争の道へ放り込んだ。老若男女、小さき子までもが人を殺め償えない罪を重ねた」
ベオは静かに固く目を閉じ、あの頃の光景を思い出しながら語った。
エマは肩を震わせ深刻な顔で、受け止めていた。
この様子から、魔法使いがどんな扱いを受けたのは想像以上なのだろうと晃は思った。
「うっ…ぐっ…!?」
目を開いた。
突然、また脳内にしかも強制的に映像が流れ出したからだ。
しかし今回は激しい頭痛が襲いかかり、呻き声を出してしまった。
二人にはバレたくなかったため、頭を抱えずに出来たのは幸いといえた。
二人に感ずかれないようにと平然したいが、激痛のあまりうつむくしかできなかった。
映像の始めは、人々は仲良く穏やかに暮らしていた。
微笑ましい光景だった。
しかし、次に映し出されたのは、戦場とかした大地だった。
鉄が重なる音、悲鳴、重火器を使った音や煙り、戦う者、倒れる者、傷を負った者、死ぬ者、血の混濁した光景だった。
吐き気がした晃は思わず口を抑える。
エマに心配された。
しかし、“なんでもない”と言ってごまかしたが、また晃の脳内に映し出された。
更に頭痛が増し、頭を抱えてしまった。
次に映し出されたのは先ほどにはなかった魔法があった。
戦場は魔法の戦いが繰り広げれていた。
火、水、雷など魔法が飛び交い、人、動物、大地、植物などを無惨に傷つけ、殺した。
魔法によって、戦場を死の地とかした。
魔法使いは、自身の手で犯した罪に嘆き叫び涙を流した。
時には、自殺をする者もいた。
その映像に頭痛に晃は耐えきれなく、吐かなかったが、倒れ込んだ。
脳内に戦場にいたものたちの悲痛の叫びを何度も繰り返され、心にグサリと刺さり、精神的に保たなかった。
そして、涙を流した。
「苦しくて…痛くて…悲しくて…辛くて…憎い…悔しい…」
届かない悲痛の叫びを、晃は代わりに口にし想いを受け止めた。
そして、意識を手放した。
晃は頭痛に耐えきれず、脳がパンクしてしまった。
気絶に追い込まれるほどの映像と痛さだった。
◆◆◆◆◆◆◆
晃がいつの間にか、うつむいていた。
エマは不思議に思って、声をかけてみた。
「どうしたんですか?」
晃が突然口を抑えた。
「具合でも悪いんですか!?」
「なんでもない…気にするな…」
「気にするなって!?青白いじゃないですか!こんなにたくさん汗かいて、何がなんでもないですか!!」
晃は呻き声を発し手で大丈夫だと合図するが、頭を抱え込んだ姿は苦しそうにみえた。
そして、突然倒れ込んだ。
「あっ晃さん、晃さん!」
びっくりして声をかけるが反応がなく。
変わりに、涙と意味の解らないことを発し、気絶した。
「ふむ、娘よ。小僧は大丈夫じゃよ。この世界に来て、体がついていかなかったのだろう」
いつの間にか、ベオは晃たちに近寄っていた。
「それなら良いんですか…」
エマは心配そうに晃を見る。
「さて、娘よ…腹は減っておらぬか?」
「えっ…」
ぐぅ~とお腹がなった。
エマは頬を真っ赤にした。
「ほっほっほっ、待つがよい。今、作るからのう」
「あっ待って下さい!私も手伝います」
慌てて、ベオを止める。
「娘よ。小僧を見ておれ…まあ、ほっといても良いがな…」
そう言って、ベオは台所に向かった。
「えっと…」
エマは迷っていた。
ベオが助けてもらい食事まで出してもらうのは、エマにとってそこまで甘える訳にもいかなかった。
しかし、気を失っている晃をベオはほっといても大丈夫だというが、ほっとくことも出来ずにいた。
(どうしよう…)
エマは何かこの二つを、同時に出来ないか思考を巡らす。
(そうだ!)
エマはある案が浮かび、実行すべくベオの所へ駆け寄った。
案を話すと、ベオは包丁から手を止める。
「良いが…条件があるぞ…」
エマにある条件を言った。
「でっ出来ません!」
エマは真っ赤にして訴えた。
「出来ぬというなら、その話承諾せぬ」
ベオは野菜を切るため、包丁を動かす。
悩んでいるエマの様子に、ベオは内心面白がっていた。
「やっやります!」
ぶっちゃけやりたくないが、エマは意を決心して言った。
「なら、良い。小僧を待たすでない、娘よ」
「はい!」
エマはベオから布と桶を借り、桶に水を注ぎ晃へ向かった。
まず、汗をかいた身体を拭き、そして一応おでこに布を置く。
一段落するとエマはベオの条件を実行した。
とても恥ずかしくて最初はなかなか実行出来なかったが、意を決してした。
たまに、流れ出る汗を拭きながら、晃の顔を見る。
とても、苦しみ、悲しみという曖昧な面持ちだった。
たまに唸ったりするたびに、エマは心配した。
(晃さん大丈夫かな…なんで、言わなかったの?)
ベオから聞いた、この世界に来て体がついていかなかったという。
それは、自分が悪いのだ。
勝手に、この世界に来させて…しかし、この考えを止めた。
また、そんなことを晃に言ったら、怒られるだろうと思った。
そんなこと言って、怒られたばっかりだ。
しかし、疑問が浮かぶ。
何故、体が悪いと言ってくれなかったのかと、エマはちょっと淋しく感じた同時に怒りを感じた。
晃が目覚めたら、怒ってやろうと決心した。
エマはベオからの半分出任せを信じていることに、ベオは笑っていた。
◆◆◆◆◆◆◆
晃は真っ白い空間をさまよっていた。
自分が何故こんな場所に居るのは、わからない。
目の前はただ真っ白いだけだったのに、情景が変わった。
とある神社に居た。
どこか懐かしさを感じる。
夕暮れの日差しに紛れ、ある青年と少年が向かい合って佇んでいた。
青年は青の長髪、服は青と白を基調にした変わった服。
まるで神々が好んで着ていそうな服だ。
しかし、顔がぼやけていてわからない。
少年は同じ青の肩に掛かるか掛からないくらいの髪、男性用の神社の服装を着ている。
こちらも、顔がぼやけてわからない。
「少年…何故居る?」
「おっお前こそなんで居るんだ!ここは我が家が奉る神社だ!勝手に入るな!」
「ふはははっ!そうか…お前が次の代を引く者か…」
「はっ?」
最後の言葉は少年には聞こえないほどの小ささだった。
しかし、晃にはちゃんと最後まで聞こえた。
「まあ、良い。さて、神官は居ないようだな」
「…父上に用があるのか。それなら父上は用があって、来月まで帰って来ないぞ」
「一声かけてみようと思ったが、居ないのなら仕方がないな…」
「なら、早く帰れ!」
少年はどこからもってきたのか、木の棒を振り回す。
青年は木の棒を容易く掴む。
「まてまて。帰るつもりはないぞ。神官に会うまではな」
「はっ?」
「神官に会うまでお世話になるぞ、少年」
「はあああああ!?」
神社全体を震わす大きな声だった。
「ふはははっ!良いではないか。ただ、神社で寝泊まりするだけさ」
「ここは神聖な場所なんだ!名も知らない詳細不明のお前が、泊まって言い訳ないだろう!」
づかづかと神社の中に入ろうとする青年を、少年は服を掴んで止めようする。
しかし、青年の力には勝てなく、ずるずると引っ張られていた。
青年は動きを止め思案する。
「おーい」
少年は不思議になって、ゆさゆさと揺さぶってみる。
「うーん?なら、名を言えば良いのだな少年」
「あっ…」
少年はしまったと顔をする。
「それにお世話になる身だ。名をなろう。私の名はギヴァだ。少年は?」
少年は少し迷って言った。
「…佐々木 晃」
その言葉に晃は、驚愕した。
その瞬間、目が覚めた。
◆◆◆◆◆◆◆
晃は目が覚め、まだぼんやりする視界をまばたきしたり目をこすったりした。
「大丈夫ですか?」
目の前に、エマがいた。
そして頭の下には、柔らかいものがある。
「うん?」
それは何を示しているのを理解するのに、数秒かかった。
ゴン
鈍い音が広がった。
エマと晃がぶつかった音だ。
「いった~!何するんですか晃さん!」
額をさすりながら言った。
「まさか、ひっ膝…膝枕されるなんて、思ってなくて…ごめん」
痛い額を抑え動転している思考を落ち着かせて頭を下げた。
晃はことの理解すると、思わず顔を上げエマと衝突してしまった。
二人とも顔が真っ赤だった。
どちらも初めてだったため、相当恥ずかしかった。
「その…これには訳がありまして」
「うん?まさか…あの爺さんか?」
晃は爺さんを探す。
「はい…。あの斯く斯く然々ありまして」
エマは膝枕になったいきさつを話してくれた。
まず、エマはベオの手伝いと晃を見るかで迷い、両立するためにベオに案を持ちかける。
それはエマは晃を見る間、魔法でベオの手伝いをするということ。
念力魔法と映し魔法を使って手伝った。
映し魔法で台所を映し出し、それを見ながら念力魔法で野菜を切ったり、物を出したりなど手伝いをした。
その証拠に空中に映像画面があって、台所を映し出していた。
その案を承諾する代わりにベオは、晃に膝枕をする条件を出した。
エマは他にいい案がなく、仕方なく条件を呑んだ。
(あのくそジジィィイイ!!ぜってー嫌がらせだ!!)
晃は闘志を燃やした。
「具合は大丈夫ですか?」
「平気。ごめん…心配かけて。あっそうだ。爺さんの手伝いでもするか」
手伝うのはもちろんのことだが、ベオを怒りに立ち上がろうとした時、エマに腕を掴まれた。
「…エマ?」
「…仰らなかったのですか?」
「はあ?」
エマが言っていることが聞こえにくかった。
「ですから、何故お体が悪いと仰らなかったのですか!?」
腕をしっかりと握りしめ、ガチ心配した顔で見上げる。
「えっと…」
「お爺さんから仰っていたことですが…この世界に来て、お体がついていかなかったと…。何故仰らなかったのですか!?」
晃はエマの前に座り直す。
「たっ確かにナルタ来て、体に違和感があったけど…」
確かにナルタ世界に来て、晃は体が少しだるかったり、魔法を使った時体に負担が大きく、体力の消費がすごかったのは事実。
しかし、そんなことは気にする時間がなかったのも事実だった。
それにあの映像のせいで、悪化したというかほぼ映像と頭痛のせいで倒れ込んだとは言いにくい。
「晃さん!倒れ込むまで、我慢しないでください!これからご一緒に旅をし、戦う仲間なのです!…少しは頼ってください」
本気で叱っていたエマだが、最後はうつむいてしまった。
「ごめん…これからはちゃんというよ」
「…本当ですか?」
「本当。だからそんな顔するな。美人が台無しだろ」
晃の言葉にエマの顔は真っ赤にする。
「っ!?なっ何を言っているですか!」
「小僧、具合は大丈夫かね?」
そこへベオが鍋を持って台所から出てくると、鍋を囲炉裏に置く。
「もう平気。迷惑かけた」
「ならばよい。娘よ、そんなに心配する必要などない」
「でも!」
「小僧はこうみえても、そこら辺に置いてきても、這いつくばってでもしつこく生きてそうじゃからのう」
「おい、それは言い過ぎだ。まあ、大丈夫だからエマ」
笑って冗談を言ったベオの言葉に少しむかついたが、エマに心配かけないため、体を使って大丈夫だと表す。
「はい…後本当にお体が悪くなったり、辛くなったりしたら、ちゃんと言ってくださいね!」
「言う。約束する」
「約束ですよ!」
二人は向き合って真剣に言う。
「ああ、約束だ。たとえ、皆に言えなくてもエマにはちゃんと言う」
「…わかりました」
エマは少し重圧に感じたが、エマには言ってくれるのなら、それでもいいと思った。
「あ~後、エマも言えよ」
「…晃さんじゃないので言えます」
「それもそうだな」
晃は笑って返した。
エマはちょっとびっくりしたが、晃につれて笑ってしまった。
ベオはそんな二人を見て微笑んだ。
ナルタ世界で魔法のことについてと、暗い魔法使いの歴史についてのお話です
中身にあった、晃の夢ですが、さらっと受け流してください
ありがとうございました




