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ユリアリス  作者: 茄蒔 藍
第二章 青の国
16/20

謎の老人

老人は海を見ていた。

久しぶりに同類の者に会い歓喜していた。

この世の中、あれほどまで魔法を派手にぶっ放すとは、驚きと称えたくなった。

そして、よからぬことが砂浜に迫っている。

それは同類の者に命、人生に関わること。

老人は力を貸そうと決意した。

晃は男の老人を睨みつけ問いただした。

(どういうことだ?)

(ちっとお困りのように感じたからのう?それに、そなたの水の魔法見事じゃった。それに免じて力を貸そうと申しておるのじゃよ小僧?)

老人からとてつもない力や神聖といったことを晃は身を通して感じた。

それは老人には逆らってはいけない、そう感じた同時に老人に力を借りたほうがいいと思った。

(爺さん、頼む。俺の代わりに力を使って助けた救世主として、身代わりになってくれお願いします)

(ふむ、良かろう。水を操る者なり。我に従い、誠に仕えよ)

噴水のようにあげた水柱だが上はスライム状にした複雑に仕込まれた晃の水魔法を、老人はあっさりと我が物にした。

(…簡単に俺の魔法を…とんでもない奴だ!)

晃は驚き汗を流した。

上には上がいると、自分はまだまだ未熟だと思い知り、悔やみもっと強くなりたいと心に決めた。

老人は水魔法を操り、まず高々と立つ噴水の水柱を辺りの浅瀬の高さにした。

そして覆っていたスライム状を塩水に戻した。

スライムの上にいた二人は海底へと落下した。

「うわっ!?」

「…大丈夫か?」

「ははい」

予測していた晃は落下する体勢が出来ていたが、エマは唐突過ぎて体勢がとれなかった。

晃はすかさず倒れそうになるエマを支えた。

スライム状から塩水に戻った時、水しぶきが上がり、晃達を中心に円形の波となって辺りを押し寄せた。

まるで重い物が水面に落ちたようなのと似ていた。

砂浜の人々まで塩水は押し寄せ逃げ惑った。

二人は砂浜へと進み、砂浜に着いた二人は倒れ込んだ。

「晃さんとても疲れました」

「ああ、それは俺もだ」

水を吸った服は重りとなって動きづらく、砂浜まで押し寄せた塩水が海へと帰って来る水流に阻まれた。

先ほどの津波に襲われた時のと重なり二人は疲労困憊だった。

そこへ二人の元にあの老人が近寄って来た。

「ほほほっ大丈夫かねお二人さん?これは娘のものであろう」

「あっはい!ありがとうございます。それにしても私たちを助けたあれは…」

エマは老人の手からエマのローブと靴を受け取り服を着る。

「あんたじゃないのか、爺さん」

「えっ!?」

「どう考えてもおかしいだろう?辺りの人々は水にまみれ、そして何より誰も近寄って来ない…」

エマは砂浜を見渡し人々を見た。

そして人々の声を聞いた。

「助かって良かった…」

「だけどさ、あれあいつらのパフォーマンスじゃねーの?」

「確かにわざわざこんな季節に海に入る時点でおかしいだろ?」

「そうだ!?あいつら魔法使いじゃねーのか?俺達を巻き込んで見せつけたいいかれた野郎だろう」

「なにそれ!私たち心配したのに酷い!」

「ふざけんな!港は大混乱だぞ!仕事になんねえ!」

「なあ。あいつら魔法使いなら軍に売りつけようぜ。魔法使いは高値で売れる」

「よし!!罪悪人の道化師を捕まえに行くぞ!!」

「「「「「「オォォォォオオオオオオ!!!!」」」」」」

砂浜は罵倒の嵐だった。

エマは人々の言われようのない偽りと人々の冷たい視線に固まってしまった。

(どうして…こんなことに)

晃は人々に対し睨みつけた。

人々は少し怯んだが、晃達を捕まえる意欲は切れなかった。

「ところで、爺さん。どうなんだ俺達を助けたのはあんたなんだろう。水まみれでない、普通はあいつらと同じ反応のはずだ」

人々や砂浜を隅々まで濡らした海水を老人は頭から足先や服の裾まで濡れていなかった。

「うむ…小僧の言うとおりじゃ。わしは魔法使い。ただの海水のしぶきや波などへでもないわ。さて、ここから離れたほうが良さそうじゃ」

老人は辺りを見渡すと二人も見渡す。

「「!!!」」

港のほうから武装した兵の大軍がいた。

「あれは!!」

「まずいです!晃さんこれではっ!!」

「捕まるのう」

「!?」

二人は驚き焦り出した。

大軍に二人だけでは叶わない。

こちらが一人に対しては上で最初は優遇かもしれないが、大軍は武術に長けた者達の集まりいつかは力を使い切り、武器を持っても破られる。

しかも二人は先ほどで本来の力は使えなく老人だけである。

それに砂浜の人々は大軍に気がつき、三人に向かって来た。

(叶うのか…三人だけで体力的にも)

「どうすれば…」

二人は悲観的になっていた。

「ほほほっ大丈夫じゃよ」

「「はあ?」」

二人は何を言ってるか分からなかった。

老人に視線を向く。

老人は涼しげな顔で、大軍に目を見つめ細めた。

手を振ると一瞬で辺りを深い霧にした。

「ほら二人とも早う乗れ、捕まっても知らんぞ」

老人は忽然現れた巨大な亀に跨がった。

二人は急いで亀に乗り込むと亀は新幹線の速さのごとく海を走り、頃合いをみて海の中に入ると穏やかに泳ぎだした。

だが、穏やかといっても少しゆっくりになっただけであった。

二人は最初は悲鳴をあげたが、途中で言葉をあげることができなく亀に必死で捕まっていた。

凄まじい速さに体が追いつけず体中が痛く、そしていきなり海中に入り二人は息を我慢していた。

すると、二人の様子に老人は言った。

「あ~言い忘れたおった。わしの魔法で海で息継ぎができるぐおっ!なっなにすんじゃ小僧!?」

「それを早く言え!!はあっはあっ(俺が魔法を使いそうになっただろ!)」

最後尾に跨がっていた晃はそれを聞くと力を振り絞って、手を伸ばし老人の頭を叩いた。

エマは“ゼハーゼハー”とぐったりしていた。

それに晃が老人を殴ったせいか、亀の速さはエレベーター並の速さになっていた。

「全く礼儀知らずめ!最近の若者といったら年長者を敬うことが出来ぬのか!」

老人は杖で晃の頭を叩く。

「あっいっちょっまっ!?」

老人は器用にエマを避けながら晃の脳天だけでなく右脳や左脳、おでこ、わき腹、肩などランダムに素早くを叩いていく。

晃は顔の中心、鼻へ叩こうと向かってくる杖を掴んだ。

「おい、爺さん何度も叩くな!!たっ確かにあんたには助けてもらったのは感謝してる。でも予告無しに亀に乗って、猛スピードで駆けて泳ぐなんて想像出来るか!!」

「ふん!そちは先へと予想する力をもっとつけるべきじゃな!!」

「はいはーい口喧嘩は止めて下さい!!晃さんさすがに言い過ぎです。年長者には敬い更に助けてもらった者には礼儀をです」

エマは二人の喧嘩に割って入った。

また、二人に挟まれているため自分を巻き込まない所でやって欲しかった。

「それに、お爺さんも!」

「わしも!?」

「はい!私たちは亀の常識では考えられないことをやられても困ります!せめて忠告はして下さい!身が持ちません!!」

エマは年長者には敬いとは言いつつも、攻め立てていた。

老人の行いに本気に怒っていた。

「いいですか?この場でお互いに謝罪して下さい」

「すっすみませんでした。若輩ながら高貴たるお方に口をきいてしまい、心からお詫び致します」

晃は土下座して謝った。

老人は晃の行動に気まずくなった。

エマの方に目を向けるとギロリと睨まれた。

もはや年長者という上下関係は皆無だった。

「わしも‥警告しなかったからのう。わしにも負はあった。すまない」

老人はエマに狼狽えながらも頭を下げた。

(…余計こっちが気まずいじゃないですか)

エマは頭を下げ続ける二人にどうしたらよいか困った。

しかも自分から言い出したことだから尚更だった。

(とほほ…この娘は怖いの)

(爺さんに賛成です。人を起こすのに灰皿で殴りますから…)

二人は心を通して、エマの恐ろしさに共感していた。

(小僧も苦労しておるのう。にしても…この娘はわしと同じ者じゃな。そうであろう小僧?)

(っ…!?なんで!)

晃は顔に声に出すじゃないかってくらい驚いた。

慌ててエマにバレないように、取り繕う。

チラリとエマを見るが考え事してるのか、気づかない様子にほっとする。

(ほほほっ、同じ魔法を使う者となると分かるのだよ小僧)

(…あの、これに関してはご内密で…)

(分かっておる。しかし、後でわしが仕向けるかもしれんがな)

(えっ…それは、本人からバラして貰うって…)

(楽しみじゃのう)

老人の年も感じさせないウキウキさが心を通して晃はわかった。

「あの所でお爺さん。私たちはどこに向かっているんですか?まさか変な所は止めて下さいね」

エマはふと思ったことを尋ねた。

「あっ確かに。爺さんどうなんだ?」

晃もエマの質問に同意見だった。

「ふむ。まっそろそろ着くはずじゃ。海面に出るぞ」

晃一行は海面に浮上すると、辺りは夕焼けだった。

陽の光に当てられた海水はキラキラと輝きオレンジ色と黒色をしていた。

沈む太陽の逆の空はオレンジと夜の色のグラデーションと三つぐらいの星が瞬いていた。

あちこちに島があり、亀はその一つの近い島に進み浜辺に止まった。

島には小さな小屋があった。

晃一行は亀から降り浜辺に立つ。

「爺さん。この亀何て言うんだ?」

「わしはバナイオと呼んでおる」

「バナイオ。今日は世話になったありがとうな」

「バナイオ。素敵な名前の亀さん、この度はありがとう。また会ったらよろしくね」

二人は巨大な亀ことバナイオの目を見ながらお礼の言葉を口にする。

亀は頭やひれを動かして合図しながら、海の世界に帰っていった。

「爺さん、ここは何処なんだ?」

「ふむ、わしの家じゃ。いいじゃろう、老人一人隠れるのにうってつけなとこじゃ。お茶でも出そう。冷え切った体では風邪をひいてしまう」

老人は島を眺めて言い、家へ向かった。

二人は改めて自分たちの服をみた。

海水で濡れていた服、髪、皮膚は乾いている。

しかし身体は奥底まで冷え切っていた。

服など乾いているのは老人の魔法で乾いたのだろうと二人は思った。

「何をしておる?早うあがりなさい」

老人は玄関の引き戸を開け中へ入った。

「「はい!」」

二人は急いで家へ向かった。

中に入ると、暖かい空間が待っていた。

それは冷たい身体には最適だった。

「お邪魔します。うわあ、あったかい!」

「お邪魔します。本当だ…あっ囲炉裏?」

晃は引き戸を閉め、老人が床の真ん中で火を炊いていた。

「ああ、そうじゃよ。さ、早く其処でも座って温まるがよい」

「失礼します。うわー!!私囲炉裏を見たの初めてです!」

「お言葉に甘えます。やっぱこういう風情っていいなあ」

二人は靴を脱ぎ囲炉裏に集まって、囲炉裏の温かさで身を温めた。

「そろそろかのう」

自在鉤にかけてあった鉄瓶からには白い湯気がでており、老人は取っ手に布をつけて取り、鉄瓶を釜敷きに置いた。

「二人とも…特に娘よ、緑茶は大丈夫かね?」

「俺は大丈夫だけど…」

「私は…一度も頂いたことがないのですが…」

「無理せんでも良いぞ」

「いえ!口にせず嫌いになるのは失礼に当たります。このような機会に合った時に備えるために頂きます」

エマは緑茶を飲む決意を口にした。

「その意気込み忘れるでないぞ」

老人は人数分の湯のみに鉄瓶から湯を入れる。

箱から茶葉を急須に入れ、湯のみから湯を急須に注ぎ蓋をする。

茶を蒸す。

少したつと急須から湯のみに均等に注ぐ。

湯のみは老人だけは違う形で、二人の湯のみは客用のであった。

注いだ湯のみを魔法で浮かせ、老人の反対側に座る二人の前に置いた。

エマは難しそうな顔で飲んだ。

「頂きます…熱っ!?」

熱さに驚きふぅーふぅーと冷ましてまた飲む。

「うわあ…苦味はありますが…とても美味しいです。体が温まります」

にっこりと笑みを出しまた飲む。

それを見ていた晃は息を吹きかけて冷ましズズッと一口飲む。

「ほほほっそれは何より。さて…君達のことを話して貰おうかのう」

老人は微笑んだが最後は鋭い目で二人を見る。

「はい。俺は佐々木 晃と申します」

「私はエマ・リンクと申します」

二人は湯のみを皿に置くと話した。

「わしはガールスク・ベオと呼ばれておる。先ほども言うたが…わしは魔法使いじゃ。娘よお主はわしと同じ者。そちの身分を包み隠さず話して貰いたいのう」

ベオは改めて名を口にしエマを見る。

「えっ…?(まさかのここでバラす!?)」

晃はびっくりして老人を見た。

老人は楽しそうに微笑んでおり、“芝居をせい”と晃に目で言っていた。

晃は仕方なくエマをまじまじと見た。

「…晃さんに申し上げないといけませんね。私はダルキス国の王族に直属する名家の娘であり、魔女です」

エマは威厳を持って自身の身分を明かした。

「えっ…えー!エマって魔女だったんだ…(くそっ!俺は芝居なんて無理だ!)」

晃は告白に内心焦った。

自身の芝居の下手さに嘆いた。

「はい…。あるお方と内密にしていたのですが…この機に申し上げたほうがこれからの旅に知っておくべきと思いまして」

エマは威厳を保ったまま、真っ直ぐと見ていた。

「あっあー次は俺か~…(どうする…俺はどう説明するかな…)」

晃はこの世界の住人ではないためどう説明するか迷っていた。

というか、ベオが異世界から来たと信じてもらえるか心配だった。

(晃さん…大丈夫かな?)

エマは表は威厳の面もちだが、裏では晃のことが心配だった。

「ふっ迷うでない…小僧よ。お主はこの世とは違う世から来た…外れ者じゃろう…」

「「っ…!?」」

二人はベオの言葉に詰まらせ、そして驚愕した。

一言も伝えていないはずなのに、ベオは始めから知っていた物言いをしていたからだ。


老人魔法使い、ベオと巨大亀、バナイオの登場です


この先、亀と老人がどう晃たちと関わっていくのかはお楽しみに


お読みになりありがとうございます



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